田舎暮らしの主人公が、受験の失敗や両親との軋轢、また閉鎖的な村意識に苛まされながら、短歌を通じて未来に希望を抱いていく良作です。
短歌がわずか31字で世界を表すものであるなら、作者はこの短い文章の中で不安定な時期に直面している女の子の心情の揺れ幅を過不足なく表現しています。
いや、文章としてはおそらく不足しているのでしょう。
大輝への想いやこれからの自分に対して、描ききらない部分にこそ短歌の美しさがあると言いたげに、主人公の人生のわずかな期間を切り取って作品に落とし込んでいます。
ネットに短歌を投稿するだけで人生が変わるとは誰も思わないだろうし、実際に変わることはないと思います。
それでも、「私が思う私を残していきたい」と強く願う主人公は、輝いて見えます。
皆さま、どうぞご一読を。