第7話 紅茶と水の『硬度』の関係性

 また難しい所を突いているとは思いますが、紅茶を淹れる上で欠かせない問題、『水の硬度』について、メスを入れたいと思います。


 なるべく噛み砕いて解説を入れる予定ですが、何しろ化学系統の分野ですので、ご不明な所も出てくるかと。そこはご質問を受け付けております。ご遠慮せずどうぞ。





 まずは水の硬度とは? という所からですね。

 水は大雑把おおざっぱに別けて、軟水・中硬水・硬水の三種類に別けられます。それを決めるのは、水に含まれているミネラル、特にカルシウムとマグネシウムの量になります。

 詳しい計算式は省きますが、そのミネラルが少ないと軟水、多いと硬水、真ん中くらいが中硬水になる訳です。よく日本の水は軟水、ヨーロッパの水は硬水、などと言われておりますね。

 計算をして、100以下が軟水・101以上300以下が中硬水、301以上が硬水という分類になります。






 水の硬度が違うと、紅茶にも影響が出てきます。水色すいしょく・香り・味わい、全般に渡ってです。


 まず水色すいしょくですが、軟水で淹れると通常の琥珀色になりますが、硬水で淹れると黒っぽくなります。

 香りは、ミネラルと香りの成分が結び付くため、硬水で淹れた方が香りは抑え目になります。

 味わいでは、渋みの成分であるカテキン類がミネラルと結び付くので、軟水の方が味がちゃんと出て渋みもあります。硬水だと渋みは抑え目になります。


 こういった違いが出てくるため、ヨーロッパで売られている紅茶と日本で売られている紅茶では、ブレンドの仕方や香りの付け方に違いが出てきます。

 ヨーロッパで買ってきた美味しい紅茶を日本の水で淹れると、なんだか濃く出てしまって美味しくない。日本の紅茶メーカーの紅茶を硬水で淹れると、香りがボヤける。そういった違いや差が出てくるのです。そういう経験って、ありませんか?


 以前に実験で、ミネラルウォーターの『コントレックス』(硬度1468)でアッサムを淹れてみた事がありますが、水色すいしょくは黒っぽく濁ってしまい、香りは弱く渋みはあまり感じられず、あまり美味しくはなかったですね。


 で、その差を逆手に取って淹れ方をアレンジする、という方法もあります。

 中硬水で淹れると黒っぽくなる水色すいしょくは、ミルクを注ぐと美味しそうなクリームブラウンの色になりますし、コクが出て美味しくなります。

 香りの強い紅茶を硬水で淹れる事で、わざと香りを控え目にさせて飲みやすくする、そういう手もあります。





 そういう訳ですので、日本で販売されている紅茶は、日本の水質に合わせてブレンド・着香されていますので、日本の水・特に水道水で淹れると美味しく淹れられる訳なのです。


 専門書でも「紅茶を淹れる際には水道水で淹れる方が良い」と書かれているのは、そのためです。特別にミネラルウォーターを買ってきて淹れる必要も無い訳なので、新鮮な水道水で美味しく淹れて召し上がって下さい。


 ちなみに消毒用のカルキの匂いが気になる場合は、沸騰させてから1分ほど沸かしっぱなしにすると、カルキ臭が抑えられます。浄水器を使っても良いかと。


 美味しく淹れて、美味しく召し上がって下さい。

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