第6話 紅茶を淹れる湯温について

 さて、専門書などでよく書かれておりますが、「紅茶を淹れる際には、100℃に沸騰した熱湯を使う」とあります。本当にそれが正しいのでしょうか。そこの所を語って行きたいと思います。







 専門書では、「お湯は硬貨大の大きさの泡が出るまで沸き立たせると、ちょうど100℃になるので、その熱湯を使うように」と、書かれています。


 理由としては、紅茶の成分であるカテキン類系統が、分子量が大きくなかなか抽出されにくいため、紅茶特有の渋みやコクを出すために熱湯が必要になる訳です。高温の方が分子の動きが大きくなり、抽出されやすくなるからだそうです。


 つまり裏を返せば、渋みを抑えて紅茶を淹れたいのなら、少し温度を下げたお湯で淹れると、渋みが抑えめになる訳です。この手法は、渋みの強いダージリンのファーストフラッシュ(春摘み)でよく行われる方法で、沸かして少しだけ置いた『ひと冷ましした85℃程度のお湯』を使う方が良いとされています。


 また、渋みを抑えて旨みだけを抽出して淹れる方法として、『水出し』もあります。茶葉を水に浸し、冷蔵庫で一晩の時間をかけてゆっくり抽出する事で、渋み少なく味わい豊かな紅茶が淹れられる訳です。水出しの紅茶でも、後でレンジでチンして温めてからホットで召し上がるというのも、ありですし。



 逆に、アッサムなどの渋みを強く出したい時や、香りや風味をしっかり出したい時は、熱湯の方が良いと思われます。ミルクを後から入れる『tea with milk』を淹れる場合、ミルクの脂肪分に負けない渋みとコクが必要となりますので、高温の熱湯で淹れて濃い目にする訳です。


 香りを立たせたい状況であれば、氷に直接紅茶を注いでアイスティーにする『on the rock』にする場合、熱湯で蒸らし時間1分と短く抽出した方が、香り良いアイスティーにする事が出来ますね。






 つまりは、飲み方と状況に応じて、湯温を使い分ける必要が出てくる訳なのです。そのために、基本の淹れ方である『熱湯150cc・茶葉3g・蒸らし時間3分』で淹れてみてテイスティングをして、その紅茶の特徴を知らなければならない訳なのです。


 正直なお話、そこまで紅茶の特徴を知って湯温を使い分けられれば、プロとしてお店が開けるのではと思っております。


 しかし通常は100℃の熱湯で淹れるのが基本ですから、そこを忘れないようにして下さい。ご家庭のティーバッグでも同じですので。

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