第2話:サヤカ視点
「ハルちゃん遅いね……」
「うん……何かあったのかな?」
「少し心配だよね。ハルちゃん、いつも待ち合わせの5分前には来る子だし……」
今日は私の誕生日で、私の家でパーティーをすることになっている。
もちろん、ハルちゃんも招待している……のだけど。
時間を10分過ぎてもハルちゃんは来ない。
「来ないね……先に始めちゃおっか」
「……うん。そうだね」
「急な用事が入っちゃったのかもしれないしね」
「とか言って、待ち合わせ時間を間違えて覚えてただけだったりしてね」
「あー、それはあるかもね。ハルちゃん意外とおっちょこちょいなところあるし」
「そこがまた可愛いんだけどね」
「わかる!」
そんなことを言い合って、「じゃあ私はお茶持ってくるね」と言って立ち上がった。
「主役なのに、ゴメンね?」
「いいよ! だって今日は私のために来てくれたんだし、そもそもここ私の家なんだから、私が入れるよ」
そう言って笑った。
そして私の部屋を出ようとした時。
『ぴんぽーん』と誰かの訪問を知らせるチャイムが鳴った。
あっ、ハルちゃんが来たかな。そう思って急いで玄関へ向かう。
「いらっしゃい、ハルちゃん。」
そう言いながら、私は扉を開いて、それから。
「あっ……」
思わず、声が漏れた。「なんであなたがここにいるの?」そう聞きたかったが、声は思うように続かない。
「サヤカちゃん! お誕生日おめでとう!」
「あり……がと……。なんであなたが……」
そう聞こうとしたとき、既に彼女は開けた隙間から家に入ってて。
「お邪魔しまーす」
そう言って呆然と立ち尽くす私を横目に玄関の扉を閉めて、それから。
「酷いと思わない? 私も、『誕生日パーティー来てくれる?』って誘われたとき、『もちろん!』って返事したんだけどな」
「それは、ごめん。チカちゃん……」
たしかに私は招待しなかった。あの場にいた他の3人。ハルちゃんとリカちゃんとクウカちゃんは招待したのに。
「謝らなくていいよ。慣れてるし」
そう言って彼女は、私の横を通り過ぎ、部屋の方へ歩いて行く。
「あっ、待っ……」
『待って』と言いながら彼女を振り返ったところで、急に彼女はくるりと方向転換。こちらへ走り出してきて。
「……ふふっ」
耳元で、そんな笑い声が聞こえたところで、私は廊下に倒れた。
床に広がるのは赤い色。目の前は白く歪んでいる。
そして頭の中は『痛い』の言葉で埋め尽くされた。
そしてその苦痛から逃れるように、意識は遠のいていく。
意識が飛ぶ直前、遠くの方で『ぴんぽーん』と。
誰かの訪問を知らせる音が、鳴り響いた気がした。
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