第1話:ハル視点

 さあ、今日はサヤカの誕生日パーティーだ。

 いつも通りの服を探そうとしたところで。


「あっ」


 違う服を着て行くと言ってしまったことを思い出した。


「私が言い始めたことだしね……」


 仕方なく、ベッドの隣に置かれた、その服を手に取った。似合わないとは思っても、着ていかなければいけないだろう。


「ほかにいつもと同じ服も無いしね……」


 誕生日パーティーに向かうと、サヤカちゃんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい、ハルちゃん。もう他のみんなは来てるよ。お茶持ってくるから向こうの部屋で待ってて!」


 服について一切触れられなかったことに少し驚きつつも「ありがとう」と言葉を返して、それから。


「あっ、私が持ってこようか? この前来たときに一緒に入れたからわかるし、今日はサヤカちゃんが主役なんだから!」

「ほんと? じゃあ一緒に入れよっか! 一人じゃ一度に運べないから、手伝ってくれる?」

「もちろん!」


 それから、お茶を持って部屋へ行く。


「おまたせー!」

「ありがとー! あっ、ハルちゃん来たんだね!」

「うん。少し遅れちゃってゴメンね」

「問題ないよ!」

「そうそう、気にしないで!」


「それじゃあ、せーの!」

「「「「サヤカちゃん! お誕生日おめでとー!」

「ありがとー!!」


 そうして誕生日パーティーは始まった。


 その途中、話題は今日着てきた服の話になった。

 そこで、つい私が自分の服を指して。


「似合ってないでしょ?」


 と聞くと。


「うん。正直、ハルちゃんに服が追いついてないね」

「うん。素材を活かしきれてない感じがする」

「通販だっけ? やっぱりカタログだけだと難しいよねー」


 みんな口々にそう言った。

 しかし、それは思っていたような言葉ではなかった。


「ハルちゃん可愛いからね。いつも着ているみたいな穏やかな服の方が似合うんだよ」

「私って、可愛い?」

「何を今更……」

「ハルちゃん、男子にしょっちゅう言い寄られるでしょ?」

「そんな、しょっちゅうなんて……」

「それにさ、さっきからの服のことすごく気にしてるみたいだけど、そんなに変じゃないよ?」

「……そうかなぁ」

「そうだよ! あと、私たち友達でしょ? 似合ってるかどうかなんてあんまり関係ない!」

「そうそう、趣旨は『いつもと違う服』だから!」

「いつも似合った服を着てるハルちゃんが気にすることじゃないよ!」


 みんなそうして言ってくれた。


「……ありがとっ! みんな大好き!」


 そうして誕生日パーティーは、進んでいく。みんなの優しさを確認できて、みんなとの絆が深められてる。そんなパーティー。


「サヤカちゃん! 誕生日パーティーに呼んでくれてありがとね!」

「何言ってるのさ。私が祝って欲しい人を集めたんだから、お礼を言うのはこっちだよ! ハルちゃん来てくれてありがとっ!」


 そうしてみんなで笑いあった。

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