第5話 体育祭で共闘!

六月の中旬に差しかかろうとしているこの日のロングホームルーム。我がクラスは何というか、不思議な雰囲気に包まれていた。例えるならば悪の組織の偉い人が集まった会議のような、そんな緊張感。そんな雰囲気で何をしているのかと言うと、ただ体育祭の出場種目を決めようとしているだけだ。


「では諸君、戦略会議を始めよう」


クラスの体育祭実行委員の小野さんが教卓に立ち、厨二ちゅうにくさいことを言う。このクラスって地味に俺に影響されてませんか?


「まず、八十メートル走に出たい人」


そう問うとぱらぱらと手が挙がる。その中に六月一日もいた。


「丁度男女二人づつ決まったわね。記録」


「はい。記録開始……完了」


「じゃあ次……」


謎の緊張感は続き、出場種目が決まっていく。ちなみに俺の出場種目は『借りもの競争』と『組対抗リレー』になった。

その後、部室にて似たような雰囲気で五人は座っている。


「みんな、用意はいい?」


六月一日が真剣な表情で俺らを一瞥いちべつする。この高校の体育祭は五色対抗戦。くじ引きによってどのクラスが何色になるかが決まるのだ。同じクラスの陸と六月一日はともかく、千里先輩と華凛は何色になったか知らない。なのでいっせーのーでで言うことになっている。


「行くよ、せーのっ」


「赤」の刻印を授かった」


「うん、四人は一緒だね」


「ごめんなさい赤ですだから仲間外れにしないで下さい!」


俺は慌てて厨二くさいの無しに言う。すると、六月一日と陸がはぁとため息をつき、千里先輩は苦笑いを浮かべた。


「なんでお前は要らん事まで言うんだ。天川は普通に言ったぞ?」


「それな。俺びっくりしたんだよねぇ」


「なんかすいません?」


「いや、別に謝る必要はないよ」


笑いながらそう言って、頭を撫でる。しかし、華凛の頭を撫でるの癖になっているのではないかと思う。そのくらい、何かある毎に頭を撫でている気がする。控えた方がいいんだろうけど、嬉しそうに笑うから余計撫でたくなるんだよなあ。

無限ループハマってるなこれ。


「おいそこ、イチャコラしない」


「してないわい」


「それはどうでもいいや、千里ちゃんと華凛ちゃんは何の種目に出るの?」


どうでもいいと言われヘコむ俺を尻目しりめに千里先輩と華凛に問う。


「私は綱引きと二人三脚よ」


「私は玉入れと組対抗リレーです」


「お、俺も組対抗リレーだぞ。何走目?」


「最後から二番目です」


「んじゃ華凛からバトンを受け取ることになるな。何故かアンカーだから」


笑いながらそう言うと、華凛はそっかと言いながら、そっぽを向く。その反応に少々疑問を覚えたが、気にしないことにした。その間にも、六月一日たちが話を続けているし。


「陸君と未由ちゃんは?」


「俺は騎馬戦と障害物競争です」


「私は八十メートル走と綱引きだよー」


六月一日は最低二種目に出なければならないということで、パッと終わる八十メートル走を選んだ。運動神経がいいことも相まって反対意見が発生する訳もなく、決まったのだ。

俺はなかば強制的に組対抗リレーに出るってのに。まあお陰で華凛と共闘できるのは嬉しいけどさ。って、初共闘じゃん。

おお!俄然がぜん楽しみになってきた!

てな感じでやる気をみなぎらせ、とうとう待ちに待った体育祭となった。快晴の空の下、開会式が行われる。凄く暑い。暑過ぎて溶けそうだ。


「ねえ、九重……」


後ろにいる六月一日が俺を呼ぶ。暑過ぎて、あまり反応する気にならないのだが。


「何だ……?」


「暑い」


「わかりきったことを。つーか、みんなそうだから」


「テントの下にいる教師共は違うじゃん」


「そーだけども」


「てか、校長ふざけんな……かれこれ十分も話しやがって……しかも終わりが見えないしさぁ……」


確かに、そろそろ話を終えて欲しい。中身の無いことをグダグダと言っているだけなのだから。

俺はチラと後ろを振り返って見ると、六月一日は犬のように舌を出していた。そしてその後ろの陸はネット巡回。ブレないな我が親友よ。

華凛が近くにいてくれればなぁとふと思う。俺華凛の事好き過ぎない?

普通はヒロインを落とさなきゃだってのに、俺が先に落ちてどうすんだって話だ。

とにかくいろんな事を考えながら、開会式を乗り切った。

最初の種目は八十メートル走。六月一日は並びを見る限りでは三走目だろう。八十メートル走は回転ペースが早いのであっという間に六月一日の走る三走目。放送委員が選手紹介をした後すぐにスタートの合図が鳴る。

陸上部が数人いる中、六月一日は引けをとる事なく二位。流石に陸上部全員に勝つことはできなかったが、大して差が無くいい勝負だったろう。

戻ってきた六月一日は特に何も思うことが無いようで、二位だったわーと言いながらテントの下のブルーシートの上に寝転がった。

次に空想生物研究部のメンバーが出るのは二人三脚。出番の回ってきた千里先輩は入場門の近くに行ってしまった。

そして入場するや否や、華凛と六月一日が叫ぶ。


「千里ちゃんファイトー!」


「が、がんばれー!」


それが聞こえたのか、叫んでいる様子を見ただけかは定かでないが、こちらに向けて手をひらひらと振る。

俺と陸はというとハラハラしている。千里先輩は運動をかなり苦手としている。こけたりしないか、心配だ。

だからって止められる訳でもなく、スタートの合図が鳴った。俺と陸は目を離せなくなる。九十近いバストが揺れる。スポーツブラを着けているからか大きく揺れてはいないが。


「二人とも、見過ぎだから」


六月一日がジト目で俺たちを見る。


「……えっち」


華凛は小さな声で俺に向けて言ってくる。思わず俺は膝を折り、崩れ落ちる。


「可愛すぎる」


「ほんと馬鹿だなお前」


そう言って陸は千里先輩の方に視線を戻し、突然表情が驚愕きょうがくの色に染まる。

何事かと思って見てみると、陸と同じリアクションをしてしまった。スタート時、四位だったはずの千里先輩は一位でゴールしていた。後方を見れば、こけたのか砂が付いていたり、紐を結び直していたりしていた。運が良過ぎるのではないかと思う。

呆然としていると、クイッと体操服が引かれる。


「見てて下さいね、唯葉先輩」


華凛はそれだけ言って、次の種目である玉入れに向かっていった。俺はあまりの可愛さに胸を押さえる。


「くっ、流石吸血鬼狩り、的確に掴んできやがるぜ」


「それ全く関係ないだろ」


「うるさいな、あるんだよ」


それはともかくだ。見ててと言われたのだから見なきゃな!


「ん、華凛の番か、タイミングばっちしだな」


小原先生が突然現れてブルーシートの上に座り、缶ビールをあおる。

……………ん?


「って、なんで飲んでんの!?昼にすらなってないんだが!?」


「だーからこうやって肉壁に隠れて飲んでんだろ」


「言い方考えましょうよ」


てか、生徒にチクられたら終わりだろおい。まあいい、今は華凛を見なければならないのだから!

グラウンドに直立する五本の色の違う玉入れ用の籠付き棒。その中の赤色の籠付き棒の付近に華凛はいた。スタートの合図が鳴り、ほとんどの者が正確に投げるよりも数を投げることを優先させている。そんな中華凛だけは違う。一個づつ正確に投げ、一つとして再び地に落ちることがない。結果は六十四個で赤組の圧勝。そのうち三十個程は華凛が入れた。

華凛は戻ってくるや否や、物凄いドヤ顔を向けてくる。褒めて欲しいのだろうか。


「すげーかっこよかったぞ、華凛。流石俺の好敵手だ」


そう言って頭を丁寧に撫でる。すると華凛はくすぐったそうに身をよじる。

陸がそんな俺らを横目に立ち上がり、入場門へと向かう。それに気づいた千里先輩が、ちょんちょんと、陸の肩を突いた。


「陸君、頑張って」


「はい」


陸は微笑んで、再度入場門の方へ歩き出す。次は騎馬戦だ。陸のポジションは馬ではなく、戦う方だ。ルールは各組三騎のバトルロワイヤル方式。体育祭前に結託するようなことも偶にあることで有名だ。順位付けは頭につけた帽子を多くとった順となる。

スタート位置は十五箇所あり、一騎づつ抽選で決まる。ルールはまあこんなもんだ。陸のスタート位置は白組に挟まれている。さてここで皆はどう思うだろうか。陸が運が悪いと思うのが普通であろう。

白組には悪いが、運が悪いのは白組の方である。それが皆に知れ渡るのは、スタートの合図が鳴ってすぐのことであった。同時に陸に襲いかかる二騎。その二方向からの攻撃を見事に流し空を切らせて流れるように二つの帽子を盗った。刹那赤組のテントから歓声が(主に俺のクラスの男子共から)上がる。五月蝿うるさいことこの上ない。


「しっかしまあ、我が親友は大胆だなあ。花乱れ散るような超接近戦闘、実に優雅ゆうがである」


厨二くさいことを言うと華凛がピクリと反応を示す。


「あれが、伝説の……」


厨二あるあるだな。伝説の……とか意味深に言いながら結局伝説の何なのかを言わないやつだ。


「ああ、そうだぞ。しかしまだ、奴には奥義がある」


「なん……だと……」


「むッ!来るぞッ!」


陸の前にいる敵が正面から攻撃を仕掛けたタイミングで、俺はズビシッ!と指差す。

刹那、陸は体を後ろに引き、馬がそれについて行くように下がった。


「あれが陸の奥義、体のくねらせて馬すら後ろに下げる後方回避技、【バックイヂット・ヴ ・アブホゥドゥ】!!!」


「【バックイヂット・ヴ ・アブホゥドゥ】……」


特に意味がわかっていないだろうが、響きが気に入ったのか繰り返し呟いていた。ちなみにこれは適当につけた訳ではなく、アメリカ語とロシア語を合わせた造語を言い易いようにしたものだ。クォーターだけど喋れないから発音わかんないんだよ。間違ってても悪いのはインターネット先輩なのでご理解してほしい。

その後無双し戻ってきた陸は、華凛から例の奥義の話を聞き、しばらく俺と追いかけっこをした。

そんなこんなでとうとう、俺の最初の出番が来た。借りもの競争である。


「唯葉先輩、頑張って!」


「おうよ」


かっこつけるのは組対抗リレーとの時でいい。ぱぱっと片付けますか。

程なくして、入場。俺の出番は三レース目なのでしばらく待つことになる。その間、観察でもしておこう。やや苦戦する人が多いな、そんなに難しくはなっていないだろうに、何故だ?

まあ百聞は一見にしかず。実際にやればわかる。いよいよ三レース目。俺がスタート位置に立つと黄色い歓声が上がった。まあ俺、見てくれだけはいいですからね。そう、見てくれだけは。

俺は適当に色んな方向に向かって手を振り、華凛がいる方にはとりあえずかっこつけて手を振ってみたが、華凛の周りが五月蝿くなるだけだった。仕方なく、俺は正面を向いてスタートの合図を待ち、そしてパンと乾いた音が響いた。俺はあまり本気を出さずに走り、カードを一枚拾う。カードの選び直しはできないので何を取るか迷うだけ無駄だと思っていた俺も、流石にうわと思う。

カードには、『好きな人』と書かれていた。借りもの競争の『もの』を平仮名にしたのは『物』という意味と『者』という意味を持たせるためなのかもしれない。

全く、いない人が拾ったらどうするつもりなのか。そんなことを思いながら、すぐに走り出した。


「華凛!」


「ん?どうしました?唯葉先輩」


「俺に、お前を貸してくれないか?」


片膝をついて、手を伸ばす。すると華凛はすぐに俺の手を握り、にこりと笑った。


「はい、貸します」


「よっしゃ、んじゃ行こう」


「はい!」


ぴょんとロープを飛び越えて競技エリアに来る華凛。俺は彼女の手を引いて、ゴールに向かう。


「何て書いてあったんですか?」


「あー、えっとだな……」


どう言おうか、一瞬迷ったが今正直に言うのは違うって言うか、もっとちゃんと言いたいし、はぐらかすことにした。


「可愛い後輩」


「……そっか」


華凛は気づいてるのか気づいてないのかわからない微笑み方を俺に向ける。俺はそれに気付きながらも、そちらを向かないように走った。

ゴールで体育祭実行委員会の人にカードを見せる。帽子のせいで見えなかったが、こいつは同じクラスの小野さんだった。

カードを見た小野さんは華凛を見てニヤニヤし出す。ちょっとイラッとしちゃったぞ☆


「君、お名前は?」


「一年の天川華凛です」


「ふんふんふんふんふん、おっけーおっけー、ゴールでーす!一着おめとー九重」


「……ああ」


これからしばらくこのネタでいじられるのだろうと思うと少し憂鬱ゆううつになる。


「よかったですね唯葉先輩、一位です」


「ああ、そうだな」


確かに、華凛とこうやって手を繋げたのは良かった。このことに関しては感謝してやろうじゃないか。

テントに戻ると、六月一日と千里先輩から質問攻めを食らい、俺は一生懸命耳を塞いだ。

質問攻めが終わったのは、借りもの競争の次の種目が終わった頃。時間は既に十二時を回っている。つまり飯だ。

中庭に移動し、五人で昼食をとることとなった。


「陸、コンビニはなるべく控えた方がいいぞ」


俺はただ一人コンビニ弁当の陸に注意をする。コンビニ弁当は最近栄養に気を遣っているとはいえ、まだ偏りがちになってしまう。面倒でも手作りした方がいいのだ。


「九重は自分で作ったの?」


「もちろんだ」


「凄いなぁ、私は千里ちゃんに作ってきてもらっちゃったよ」


「私も小原上官に作ってもらいました」


「千里先輩はともかく小原先生料理できるのか?」


俺は疑いながら、華凛の弁当箱の中身を見る。すげー美味そうだった。

千里先輩も小原先生も単に美味そうな訳でなく、色味にも気にしている。俺も気にしてはいるのだが、レベルが違う。

ここで華凛が俺の弁当の中身を凝視していることに気づく。返事がなかったのはだからか。


「唯葉先輩、唐揚げ一個下さい」


そう言って、口を開けて待機する。別に弁当箱を差し出せば良いものの。満更でもないのであーんしますけどね?

俺は箸のなるべく先端の方で一口唐揚げを摘み華凛の口元に寄せる。すると華凛は遠慮なくパクリと食べた。


「ん、ピリ辛で美味しいです!」


「そりゃ良かった。他に何かいるか?」


「肉団子で」


「はいよ」


なんだか餌付けをしているようで楽しくなってきた。だが、肉団子を貰って満足したのかそれ以上求めて来ない。その代わりに自分の弁当箱の中の春巻きを俺の口元に寄せてきた。


「上官の春巻き、凄く美味しいですよ」


俺は少し躊躇ってしまう。が、俺は意を決してかぶりついた。うん、どきどきしてよくわからないけど美味い。


「どうですか?」


「小原先生やるな、暇な時教えてもらうか」


「いいと思います」


そう言って、華凛は自分の弁当を食べ始めた。間接キスは全く気にしていないようだ。なら俺も気にするのは変なのだろうか。

俺は六月一日からのさげすむ視線を無視しながら飯を食う。しかし流石に耐えきれなくなって、何か話題を探った。


「……なあ、今順位どうなってたっけ。俺中間発表見忘れてたわ」


「一位は青、二位が赤で三位が黄色だったよ。点差的には今の点差を維持できれば最後で逆転可能ってところかな」


「なんだその腕が鳴るシュチュエーション。俺が華麗に一着優勝の未来しか見えん」


「曇ってんじゃない九重の目」


「んなことは無い……はず」


「そこははっきり無いって言おうよ」


いやその、世の中絶対なんて無いですし?保険というか何というか?内心そんなことを思いながらふいっと顔を背けた。

飯を食い終え、午後の部が始まる。最初は綱引き。各学年の男女五名づつの三十人対三十人総当たり戦。勝ち数の十倍がそのまま点数になる仕様だ。六月一日と千里先輩は既に競技エリアで待機している。

そして数瞬しんとした刹那、スタートの合図である旗が下された。

結果は三勝一敗、良い戦績である。そして次は陸の得意種目、障害物競走だ。


「式部任せたぞー」


「陸君ファイト!」


「行ってこい親友よ」


「頑張ってください」


「……ああ」


短くそう言って入場門へ向かう。

障害物競走の障害物はハードル潜り、平均台&超ふかふかマット、網潜りの三つ。この中で一番難しいのは超ふかふかマットだ。なんせふかふか過ぎてまともに歩けないのだ。

しかし我が親友はそれを攻略済み。一位確定とも言える。スタートの合図が鳴ると、陸上部で鍛えたスタートダッシュで内側を取る。そして最初の障害物のハードル。陸はスライディングで潜り、一瞬でクリア。

二つ目の障害物、平均台&超ふかふかマットは平均台で助走をつけ、踏み切ってジャンプ。マットの奥の方で前転し、丁度足がマットの外に出るようにし、前転の勢いを利用して超ふかふかマットをクリア。

最後の障害物は頭をギリギリまで低くし、蜘蛛のように駆け抜け、そのままゴール。ぶっちぎりの一位だ。

赤組の歓声が響く中、陸が帰ってくる。


「ナイスだ、陸。あとは組対抗リレーまで駄弁るだけだな!」


「いや応援しろよ」


「そうだぞ九重!立ち上がれ!」


「んな熱血風に言われてもなあ」


そんなこと言いながら、みんな駄弁るのに付き合ってくれるのはツンデレなんですかね。でもまあお陰であっという間に組対抗リレーの時間となってしまった。


「よっしゃ、行くぞ華凛!」


「はい!」


順位は変わっていない。点差も開くどころか縮まっている。

声援を受けながら、俺と華凛の本格的な共闘が幕を開けた。

組対抗リレーは各学年男女一人づつ選び、六人リレーを行う。第一走者から第五走者まではトラック一周。アンカーは二周だ。

勝負を決する合図が鳴り響き、第一走者が走り出すと同時に会場のボルテージも上がる。

赤組の順位は悪い。三位と四位を行き来している状況だ。そして、華凛の番。


「任せて、先輩」


そう言って、駆け出した。華凛は途轍もない程に速かった。あっという間に三位に上がり、二位のすぐ後ろまで差を詰める。

ありがとう華凛。これなら大丈夫だ。


「はいっ!」


掛け声と同時に手にバトンの感触が伝わってくる。俺はバトンをしっかりと掴み、すぐに加速させた。

三位をすぐに抜き去り、何とかして一位の奴に肉薄する。この時点で一周半。ラストスパートをかける。最後の直線、並んでいる。そして、ほぼ同時にゴールテープを切る。

どっちだ!?

審判を見る。審判はしばらく悩んだ末に、赤色の旗を挙げた。五色の旗の中から、赤の旗を。

ドッと歓声が沸き起こる。見事、優勝したのだ。


「得点二百八十五点で赤組の勝利です」


閉会式で校長が結果発表を行い、開会式同様の長い話を始める。俺はその全てを聞き流した。


***


着替えを終えた俺は、校門で華凛を待っている。六月一日と千里先輩は用事があるらしく、速攻で着替えて帰ってしまった。陸も今日は予定があるからいない。


「お待たせしました、先輩」


「おう、んじゃ、帰りますかね」


二人並んで帰路を辿った。今日の事を色々話しながら、ゆっくりと。

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