第43話 三十九、若日下部王の神話
三十九、若日下部王の神話
●初め、皇后が日下に住んでおられた時に、天皇は大和から日下まで真直ぐに超えて行く道を通り、河内に行かれた。その途中で山の上に登り国中を見渡された所、鰹木(かつおぎ)を屋根の棟に上げた立派な家があった。
天皇はその家について尋ねさせて、「あの鰹木を高々焚か陀多と上げて載せて造っている家は誰の家か」と言われた。側の者が答えて「志紀大県主(しきおおあがたぬし)の家でございます」と申した。
天皇は「そやつめ。己の家を天皇の御殿に似せて造っている」と言われその人間に人を遣わし、その家を焼かせてしまおうとされた時に、その志紀大県主は恐れおののき、頭を地面に押し付け「賤しみでございますで、それ故お許しを賜りたく、贈り物を献上致します」と申し、布を白い犬に賭けて、鈴を着けて、自分の親族で名を腰佩(こしはき)という人物に、犬の縄を引かせて献上をした。そこで天皇は家に火を付けることを止めさせた。
天皇は目的の若日下部王の所に行かれて、家の外から使いを遣って、その犬を下賜なさり「この物は、今日の道の途中で手に入れた珍しい物だ、そこでこれを求婚の礼物としょう」と仰せ伝えた。そこで若日下部王も邸外の天皇の許に人を遣って「日に背を向けておいてくださいましたことは、誠に恐縮でございます。
私が直に陛下の許に参上してお仕え申します」と申し上げた。天皇は宮廷に帰り上がられる時に、日下の山の坂の上を行き、立ち寄られ、歌って言われた。
日下部の こちらの山と
平群(へぐり)の山の
あちら側の矢田丘陵とこちら側の日下の 山の谷あいに
枝葉をいっぱいに広げ立つ 大きな樫の木
根もと辺りには 竹の根が絡み生い
梢の辺りには 竹の枝葉が繁り合っている
抱擁してとも寝せず
確かにとも寝はしないけど
後になったら抱き合い共寝しよう その我が思う妻よ ああ
天皇はこの歌を使いに持たせて、若日下部王の許に引き返されてお送りになられた。
●
☆若日下部王の説話・皇后クサカベノ王が日下部に来られた時に、日下部に抜ける道を通って真直ぐに日下に来られた。
そして山の上から眼下を見下ろされた時に、屋根の上に堅魚木を乗せて造った立派な家が有った。
「その堅魚木を屋根にのせた家は誰のの家だ」と尋ねられた。
皇后が日下におられた時に大和から生駒越えの河内通い、この途中に大きな屋根に鰹木が載せられた家を発見、そこで天皇は誰の家か聞かれ、この大きな邸宅は天皇の宮廷に真似てると怒られて使いを出して焼かれようとしたが、家の者は大県主でお畏れ慎んで詫びて許しを請い貴重品を犬の背に縄を取らせて献上した。
その献上された貴重品の、品の数々を結納の品にされた。帰途につかれる途中で、歌を数々詠まれて、平群や矢田の風景を詠われた。皇后と自然の木々の竹の絡みを自分と皇后の共寝を創造しながら、愛欲を詠われている。ただ大県主からの献上品で結納の品にするは大君のすべき行為ではないと言う違和感はある。
★日下は河内の生駒山の西側の地にある。大和の天皇は生駒山を越え河内の日下に通われた。古代は通い夫の制度でか、天皇も足しげく通っていたようだ。
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