第28話二十四、物言えぬ本牟智和気御子の神話
二十四、物言えぬ本牟智和気御子の神話
●こうして本牟智和気御子(ほんむちわけみこ)は養育係に育てられるようになった。その様子を言えば、尾張国は相津産の二股杉から二俣の小舟をくりぬき、都まで持ってあがり、大和の市師池や軽池に浮かべて、その御子を連れて遊んだ。しかしその御子が、髭が長く伸びて鳩尾に届く年になっても、ものを云うことがなかった。
しかし空飛ぶ白鳥の声を聞いて、初めて片言でものを言うことが出来た。天皇は山辺大鷹(人の名前)派遣をし、その鳥を捕えるようにさせた。その人は、白鳥を求めて、紀伊国から播磨国へ、さらに因幡国を越えて、丹後国・但馬国に行き、東の方に追って行った。
そこから美濃国、信濃国、ついに越国まで追って行き、和那美の港で罠を仕掛けて、捕獲し都に持ち帰った。天皇は御子がその鳥を見れば何か語ると期待したが、御子はものを言うことはなかった。
この事で、天皇は大変憂いになって、やすまれている折に、夢に神のお告げがあった。
「私の宮を、天皇の宮殿のように整備をしてくれるならば、御子を必ずものを言うことでしょう」と言った。
神がこのようなお告げがあったので、天皇は、太占で占いをされ神の心によるものか、求めた所、その祟りは出雲大神の御心であった。そこで出雲大神の宮に参拝させるために用意させ、誰を供にすべきか占った所、曙立王(あけりつみこ)が吉いと占いが出た。
曙立王(あけぼのたつみこ)に命じて誓約を申させ「この大神拝むことで、誠に吉、効果が得られるようであれば、鷺巣の池の樹に住む鷺よ、誓約通りに落ちよ」とこのように仰せになった時に、誓約の対象になった、その鷺は池に落ちて死んだ。
次に「誓約通り生きよ」と仰せになった。すると復活したのである。
また甘樫丘の岬の葉の大きい白檮(かし)の木を誓約させた所、たちまち枯れ、誓約を通り蘇生させた。
それにより名をその曙立王に賜って“倭は師木の登美の豊朝倉の曙立王”という。この曙立王と菟上王の二人の王を、その御子とお供にして派遣された時の占いに、奈良山口から行くと歩行の不自由な人・目の見えない人に出会うだろう。
大坂口から出て行く口、縁起の吉い出口に出た占いの卦によってこの道から出て行った時に、御着きになる土地ごとに、御子の名持った品遅部を、天皇その後を定めた。
こうして出雲に着き、大神を参拝をし、都に帰る時に、斐伊河の中に、黒い皮つきの丸太橋を作り、
仮宮を造られた、御子に来てもらい、出雲の国の国造り祖先である岐比佐都美(きひさつみ)が、青葉の飾り物を作り、斐伊河の下流に立てて、御食事を御子が差し上げようとした時に「この河下にも青葉の山のような物があるが、山ではない。
もしかしたら出雲の石くまの曽宮に鎮座なさるかも知れない。葦原色許男大神(オオモノヌシ)を祭り申し上げる神職の祭場なのか」と問いになった。
御子のお供として派遣されていた、曙立王・菟上王(うなかみみこ)は御子の発せられた言葉を聞き喜び驚いた。
御子をアジマキの長穂宮においていただいて、この知らせを早馬で使者を天皇のもとに差し上げた。
その間に御子は、一夜のうちに、肥長比売(ひながひめ)と結婚をした。
所が密かに乙女を御子が覗いてみると、正体は蛇であった。
御子はそれを見るや恐れをなして逃げた。
その事で肥長比売は傷をついたとして、海原を照らして船で追ってきた。御子はますます恐れをなして逃げた。山のくぼんで低くなったところから船を引っ張り越えて都へ上がって行った。
都の戻った曙立王は天皇に報告して「出雲大神を拝んだことによって、御子はものをおっしゃいました。それで戻ってまいりました」と申し上げた。
天皇は大層喜ばれ、菟上王を出雲に引き返させて、出雲大神の宮を造らせになった。その後天皇は御子の為に、鳥取部・大湯坐・若湯坐をお与えになった。●
☆本牟智和気御子の神話はこの本牟遅和気王の神話は長編で、その経緯が複雑なために、一言で理解することは難しい。
また垂仁天皇と后サホビメと間に生まれた御子であったが、サホビメは兄のサホビコ王と禁断の愛ゆえ、天皇とサホビコ王の戦いの最中サホビメは落城の稲城に残り御子を残して兄のサホビコ王と死を共にして御子は養育の者に育てられた曰く月の運命を持った御子であった。
祟りの呪いか御子に禍を持って生まれた。その障害は物が言えなかった。
父天皇は不便に思われたのか特に寵愛されたようであった。
ものが言えない
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