第24話二十、当芸志美々命の変の神話

二十、当芸志美々命の変の神話

「当芸志美々命の変の神話」

● 神武天皇の後継争い。先妻の御子当芸志美美(たぎしみみ)が、後妻タギシミ皇后として、異母兄弟を殺そうと企てた。

これを知って後妻のイスキヨリヒメは三人の御子に知らせんがために歌で知らせた。

“狭井河から 雲が立ち渡って来て

こちら畝傍山 木の葉がざわめいている 風が吹くぞ

畝傍山は 昼は雲が揺れうごいている 

これは夕がたには 風が吹く前兆として

木の葉がざわついている“

この歌を三人の御子たちは聞き、歌の意味する所を察知し驚いた。

そこで三人は相談され、三男のカンヌナカミミ命が次男のカンヤイミミ命に武器を取って先妻の企てたタギシミ命を踏み込み殺すことを進めた。

そこで次男の御子が、いざ踏み込んでみると怖気づき殺すことが出来ない。

そこで弟の御子カンヌナカミミ命が、その武器を取って代わって殺された。

この勇気を称えて建沼河耳命に名を変えられて、皇位を譲られた。

「私は敵を討つことが出来なかった。例え兄でもあっても天皇に成れません。私はあなたを助け、守護人となりましょう」と申した。

こうして神武天皇の系統は日向の頃の后の御子が反乱をして、大和での后の御子が天孫の後継となった。これは天津神の神武天皇と国津神の伊湏気余理比売の間に生まれた御子が天孫となることで融和がなされた。

(先住のヒメと征服者の天孫との融和を示唆(しさ)をしている)●


☆古事記ではタギシミミの変の説話。神武天皇が崩御されて異変が起きた。

三人の御子たちの腹違いの兄芸志美々命が父の皇后であった、伊湏気余理比売と結婚した。

義理母との結婚は中国の説話でよくある話である。

その内に、邪魔な後妻の子三人の御子を殺そうと企てているので、それを知った伊湏気余理比売は苦しんで、歌で三人の御子たちに知らせようと歌った。

母皇后のこの歌を御子たちは聞き、その意味する危機を知って驚き、当芸志美美命を殺そうと時に、神沼河耳命が、その兄の神八井耳命に「兄さん、武器を取って、踏み込んで、当芸志美美命殺しなさいよ」と申した。それを受けて、兄の命は武器を取り踏みこもうとしたが、その場で手が震えて殺すことができない。それを見ていた弟の神沼河耳命は、兄の持っている武器を受け取り、踏み入って、当芸志美美命を殺されてしまった。それ故、その名をたたえて建神沼河耳命と言う。


☆義母を妻にする神話。中国にも、エジプトの古代説話にも出てくるが、そんな影響があってかは定かではない。

神武天皇の皇后を妻にする話、当芸志美々命の変については、神武天皇の亡き後、三人の御子の腹違いの兄が、父の皇后を后として、邪魔になった御子たちを一掃しょうとする説話で、その危機を母の皇后が知らせるために、歌を詠んだ話である。

その歌の訳を知った三人の御子の内、兄は当芸美々命を撃たんと企てるがその勇気がない。弟の神沼河耳命がその武器を持って、当芸美々命を撃った。

兄弟の御子はその勇気をたたえて、次の天皇に推挙、綏靖天皇となる。

※父の后を妻にする話は中国やエジプトでも良く語られている物語である。そんな影響で『古事記』の神武天皇の後継の皇子の説に登場した。しかも後妻の三人の御子の中から皇位を誰を継ぐかについても弟が継いだり、譲り合って皇位を弟に譲る説話も多い。

神武天皇=伊湏気余理比売~日子八井命~神八井耳命~神沼河耳命(綏靖天皇)

神武天皇=阿比良比売~当芸志美美命~岐須美美命


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