第11話七、大蛇退治の説話

七、大蛇退治の説話

●天上を追われたスサノヲ神は新天地をめざし地上に舞い降りたのが出雲地方、肥河と言う所で周りを見渡しても何もなく、ただ草木が覆い茂り人の気配さえない寂しい所でたたずみ様子を窺って見た。

川の流れに目をやると何かが流れてくるのを発見、スサノヲ神は箸が流れ来るのを見て人が住んでいることに気付いた。

スサノヲ神は河上に向かって探し求めて歩んだ。

やがて娘のすすり泣く声が聞こえ、ふと目をやると老夫と老女が童女を中に鳴き悲しんでいた。

「汝らは誰ぞ」と問うた。

「我ら国つ神、大山津見神(おおやまつみかみ)の子アナヅチと妻タナヅチ」と名乗り娘を櫛名田比売と告げた。

「汝らの泣く訳はなにぞ」とスサノヲ神は問うた。

その訳を聞けば、古来よりこの地には恐ろしい大蛇が棲み着き、毎年娘をいけにえ差出させ村人に恐れられていた。

丁度今年の娘を差出順番が、老夫婦の娘の櫛名田比売の番に廻って来たのだ。

大蛇の約束事を破ることも出来ず、泣き途方暮れている所だった。

話しによると大蛇は目が赤くほうずきの形をし、体一つに八つ頭、八つの尾に身には杉が生えその長さは八つの谷を渡り、八つの尾根を越えて、腹には血がしたたり恐ろしい姿と毎年一人の娘の生贄(いけにえ)を食らうと言う怪物である。

老夫と老女はスサノヲ神に助けを求めた「そのあかつきには娘をくれないか」と答えると、老夫婦は「おうせの通り差し上げます」と答えた。

スサノヲは大蛇退治に一計を案じた。

老夫婦に良く醸(かも)した酒を用意させ、酒台を八面に置き、それぞれに桶に酒を入れて置くように指示をした。やがて大蛇がやって来て酒を見つけると、八つの桶に八つの首を入れて旨そうに飲みだし、とうとう酔って眠ってしまった。

スサノヲは寝込んだことを確かめて腰に挿していた十握の剣を抜き大蛇の尾を切った。

中から一振りの剣が出てきた。これが後の「草薙剣」(くさんぎのつるぎ)である。

このスサノヲ神の退治の場面は、勇敢に立ち向かい丁々発止の太刀を振り上げ魔物に向かう打ちの召す光景が描かれている。

また八岐大蛇の恐ろしい形相は古代妖怪の物語の場目を描いている。

こうしてスサノヲ神の活躍は目覚ましいもので、葦原中津国の人に役立って民の貢献した。

荒々しいスサノオ神だったころからの大変身で輝かしい活劇を『古事記』は伝える。

大蛇退治後は約束通り稲田姫と新居に八重垣を作られて、夫婦の契りを結ばれて子の大巳貴神が生まれた。

天上を追われたスサノヲ神は地上での活躍に善き伴侶に出会え、子孫を残すことも出来て達成感と爽快感に満足をした。

こうしてスサノヲが地上に降り出雲の国に根を下ろすことから、天上界の天津神と地上界の国津神の分離が始まる。出雲の説話の始まりである。

スサノヲが初めて根をおろし新天地開拓、国造り拠点としたのは出雲地方であった。

諸説はあるが古代には倭の前に立ちはだかる巨大な王国が存在し対立をしていたと言う。

出雲説のもとに『古事記』の出雲地方の描き方が有ったようである。

須賀の宮を造り「根の国」に鎮坐された。●


☆八俣の大蛇退治の説話

天上界を追われたスサノヲ命は、出雲国の

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