第5話三、死後の世界・黄泉の国の説話
三、死後の世界・黄泉の国の説話
●古事記に出てくる死の世界は「黄泉の国」(よみのくに)とされている。死の世界と生のの世界が行き来ができるは、黄泉の世界からは生の世界に甦るが得ることは出来ない。不思議な話で万物創造の神にも死の世界(黄泉の世界)にはままにならない。しかも説話はイザナギは愛妻イザナミを取り返そうと黄泉の国の境界線の比良坂に行って話を付ける。イザナミは黄泉の国の神に交渉に入っている間に、覗いてはならないと約束を破り、中を覗いて驚いた。イザナミの醜い姿に驚いた。イザナミは夫イザナギに自分の醜い姿に見られ、恥をかき、約束を破ったことで黄泉の国から生き返ることが出来なくなった。●
イザナミ神は亡り死後の国、黄泉の国に行かれてしまった。
イザナキ神は黄泉の国まで行かれ話し合われ、イザナミ神に「この国を造り終えておらず、還るべし」と言われた。
イザナミノ神言われるに「わが愛する夫よ、こちらの世界に来られるには遅すぎました。
私は黄泉の国の食物を食べてしまいました。どうか私の姿を見ないでください」と言って中に入ってしまった。
なかなか出てこないイザナミ神をイザナギ神は待ち切れず、頭に刺していた爪櫛の大きな歯一本を折り、これに火を付けて御殿の中に覗き込むと、イザナミ神の体に蛆(うじ)が群がりうごめき、頭には 大雷が居て、胸には火雷、腹には黒雷、陰部には折雷が居て、左手には若雷、右手に土雷、左足に鳴雷、右手に伏雷がおり合わせて八種の雷神から成り立っていた。
雷たちの凄まじい雷鳴はとどろき渡り、大地を揺るがし、稲妻の雷光は闇を裂き、辺りの形相を浮だたせた。
この物凄い醜態に驚き仰天をしたイザナギ神は、愛する妻への恋も未練も冷め切り声も出ず、その場を逃げようとした時イザナミ神は「よくも約束を破り恥をかかせた」と言って、イザナミ神は愛しかった夫に恨みと憎悪の念が沸き起こり、直ちに黄泉の国の醜女の追手の者を遣わした。
逃げるイザナキ神はとっさに左髪に付けていた鬘を取って投げつけた。所が鬘がたちまち葡萄に実になって、これを醜女らが食っている間に全速で逃げたが、直ぐに追い着いて来たので、右髪に付けていた爪櫛の歯を折って投げつけると筍が生えてきた。その筍を醜女ら抜いて食べている間に振り切ることが出来た。
黄泉の国の境界線の比良坂に辿り着いた時に、その坂の麓に生えていた桃の実三個を尚追手を迎え討ち、桃の実を魔除けで防いだ。黄泉の追手軍は引き上げて行った。
遥か向こうから追ってきたイザナミ神に千人力でないと動かない石を比良坂に塞いだ。石を挟んで離婚の呪文を言い渡した。
イザナミ神は「愛しい夫よこの様な仕打ちするのであるならば、あなたの国の人間を一日千人殺しましょう」と告げた。
これに対して「愛しい妻よ、お前がそうするなら私は千五百の産屋を建ててみようぞ」こうしてイザナギ神とイザナミ神夫婦は別れを告げた。これによってイザナミ神は黄泉大神と名付けられた。
★イザナキ神のイザナミ神への情愛は激しいものである。憎愛は人間の世界も同じ、愛するが故に裏切れば憎悪が倍増する。
そんな情愛にを表わすな場面が、黄泉の世界まで亡き愛する妻を取り戻しに行ったイザナキ神の心境であった。
死の原因となった火之迦具土(かぐつち)への激しい怒りは治まらず、切り捨ててしまっても尚イザナミへ神の深い思いに遺体にすがって泣きわめいたが。その涙で出現した神が香久山の畝傍尾の木の元に鎮座する泣沢女神である。
亡くなったイザナキ神はあの世に行った。
あの世は黄泉の国である、イザナミ神の遺体は出雲国と伯耆国は比婆の山に葬られた。
亡くなって会えなくなったイザナミにつのる思いに、イザナキはあの世の黄泉の国に追って行った。
黄泉の国にの入り口で「愛しい我妻よ、お前と造っている国は造り終えていない。帰ってきておくれ」と懇願するように言われた。
答えてイザナミは「残念ですが、もう少し早く来てくださればよかったのに、私は既に黄泉の国の食べ物を食しました。愛しい夫よ、この国までお出で下さり恐縮します。私も帰りとうございます。少し待ってください。黄泉の国と交渉をして見ますので、その間決して覗かないでください」と言ってイザナミ神は戸口の中に入られた。
長く待たされたイザナキ神は耐えかねて、髪を束ねている櫛の太い歯を一本抜いてたいまつの代用にして火を灯し殿内に入り覗いた途端、その様子を見て仰天、イザナミ神の体中に蛆虫がうごめき、ごろごろと音が鳴っている有様で、頭には大雷、胸辺りには火雷、腹には黒雷、陰部に柝雷(ひょうしぎ)右手に土雷、左手に若雷、左足に鳴雷、右足に伏雷の八種の雷神が湧きだしていた。
これを見て恐ろしくなって、逃げ出そうとした時に、イザナミ神は自分の醜態を見られて「私に恥をかかせましたね」と言うと黄泉の国の醜女を追いかけさせた。
そこでイザナミ神は頭に付けていた髪飾りを追手に投げつけた。
今度は頭の櫛を投げつけると、たちまち竹の子が芽をだし生えてきた、これをまた追手が抜き取り食べている間に逃げ切れた。
所がイザナミは今度は八種の雷神と多数の軍勢を一緒に追わせた。イザナキ神は腰に付けていた十拳を抜き振り払いながら黄泉の国とこの世の境界線までやって来た。
黄泉比良坂の坂の口に生えていた桃の実三個を取って迎え撃つと、桃の呪術が効いたのか黄泉の追手が引き返していった。
イザナキは桃の実の威力を知って「桃の実に向かって葦津中原の生きとし生ける者に救いの手を差し伸べてやってくれ」と告げられて、その霊力にオオカムゾミ神の名を授けた。
そして追手が帰った後からイザナミ神は千人力でしか引けない大岩で黄泉比良坂(よみのひらさか)を塞いで立ちはだかった。
イザナキ神は別れの呪言を言い渡した。
イザナミ神はすがる様に懇願し、「愛しい我が夫よ何故にこの様な事をなさいます。それならば貴方の国の人々を一日千人首を絞めて殺しましょう」と言われた。
答えてイザナキ神は「愛しい妻よお前がそうするなら、私は千五百人の産屋を立てましょうぞ」
結果この世では千人死んで、必ず千五百人生まれることになった。
以後、イザナミ神を名付けて黄泉大神と言う。また夫に近づいたので道敷大神とも言う。また黄泉の比良坂に塞がれた岩を道返之大神と名付けられた。その場所は今の出雲のイフヤ坂だと言われている。
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