第5話
「羨ましい…」
僕の頭の中に先日の春音の声がリピートしている。言葉だけだと簡単に聞こえるけれど多分彼女は簡単に言っているわけではないと思う。それを裏付けらづけるかのように春音はあの後も学校へは来なかった。北海道に来て初の金曜日、学生が1番勉強のやる気を出す日。しかし僕は全然勉強に力が入ってなかった。いつになっても変わらない春音のことだ。僕と沙耶はこの休日を期に気分転換してもらおうということを決めた。
「春音、僕たち3人で遊びに行こうよ。」
「そうね、最近あんまり外に出てなかったし。」
僕はただ春音の気分転換になってもらうために提案したのだが。まあ、俺の家に行く時に外出てるだろっていうツッコミは置いといて。
「春音はどこに行きたい?」
「私?そうだなー。」
「海とかがベタなんじゃないかな。」
「沙耶、それは君が行きたいところだろ?」
「べ、別にそんなわけないじゃない。」
ここにきて沙耶が陽キャ金髪美少女から、どこかで聞いたことのあるツンデレ金髪美少女へとグレードアップした。
「で、でも、最終的には春音の行きたいところがいいと思うわよ。」
「私、みんなでお買い物したい。」
「あ、お買い物…いいわね。」
「じゃあ、近くのショッピングモールに行くことしよう。」
「近くのショッピングモールは嫌。」
春音は近くのショッピングモールには必ず自分のいじめの主犯格の人達がいると思い、その人たちと会うことをどうしても回避したいらしく、隣町まで行くことを提案した。この状態だと、今回の問題は長い間放棄するわけにはいかないと確信した。しかし、早く解決したい問題に限って簡単に解決できないことも多いからな。
「決まりだね。明日9時頃、僕の家集合で大丈夫?」
「うん。」
「……」
「沙耶?」
「ん?あー、大丈夫だよ。」
さっき、いいわね。って言ってたのに。よほど海に行きたかったんだろうな。もしかして沙耶って意外とめんどくさいタイプなのだろうか。
春音のためって言ってたため、自分の気持ちを押し殺したのだろう。沙耶の表情は笑顔ではだったが、明らかに悩んだ痕跡が残った複雑な表情をしていた。でも、まぁ本人が大丈夫って言ってるし少しは信用してあげないとな。
翌日
ピンポーン
「草汰。今日のこと楽しみすぎて少し早く来ちゃった。入るわね。」
俺の家に早く来たのは春音だった。あれ、鍵かけてたはずなのに。
「あの、春音さん?ずっと気になってたんだけど。どうやって僕の家に入った?」
「あー、まだ言ってなかったっけ。」
「全く。」
「私が学校行けなくなった時期に…」
「隠れるためにここの鍵を持ってたのよ。」
話に入って来たのは沙耶だった。まだ、8時のことだった。昨日、9時集合って言ったよね僕。
「あー、なるほどそれで。」
「春音は引っ越したってことになってるから、今は隠れる必要もなくなったんだけどね。」
「ほうほう。っていうか皆さん来るの早すぎませんか?」
「だから、楽しみにしすぎたって言ったじゃない。」
春音はみんなで買い物をすることが出来るのがとても嬉しいのだろう。ここで沙耶は昨日の新たなポジションで定番のセリフを言った。
「べ、別に私は暇だったから来ただけよ。」
待ってました。ツンデレ定番セリフ。てか僕はどんどん重度のオタクキャラになってない?
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