第4話
赤く染った空も暗くなり、学校では今まで聞こえていた部活動の声も聞こえなくなったころ、僕と沙耶は、僕の家に集まっていた。そこに謎の居住者を加えて3人が。もちろん、僕の家族は東京に残っており、僕は一人暮らしをしている。その謎の居住者は僕や沙耶の険悪な雰囲気を察したのか細い声で恐る恐る聞いた。
「何かあったの?」
「……」
「……」
謎の居住者の質問に答えられるはずもなかった。なぜならそのセリフをそのままその謎の居住者こと春音に言いたかったから。
「春音に聞きたいことがいっぱいあるが。何からきけばいいんだ?」
「あ、この格好のこと?これはね…」
彼女の格好というのはここ1週間はラフな格好だったが、今日は少しまともな格好になっていた。確かに見た瞬間は驚いたが、その驚きよりも当たり前のように僕の家に居座っていることに対して驚いた。そのため今は彼女の格好について聞きたかったわけではなかった。
「わかった?」
「春音、僕が聞きたいことはそうゆうことじゃなくって。」
「……」
「……」
「なんかこの雰囲気嫌いなんだよね。」
僕と春音の会話に完全に乗り遅れた金髪美少女はここだというタイミングで口を開いた。
「あのね、春音。草汰はあなたが桜ノ上高校に通ってたことを知ってるよ。もう話した方がいいんじゃないかなー。」
「沙耶ちゃん。私ね、まだ草汰には話さない方がお互いのためだと思うの。」
はやり、この状態はいいことではないようだ。でもこの状況に僕は入っていってはいけそうにない。
「なんでよ。あなたがこうして草汰の家に居座っている時点で草汰には知ってもらう必要があるはずよ。」
「沙耶ちゃん…」
沙耶の説得は春音の心に刺さり、春音はこの1ヶ月で怒ったことを話した。
「草汰、私ねいじめられたのよ、去年の生徒会長が私のお姉ちゃんだったから今まではやられなかったのだけれど、お姉ちゃんが学校を卒業してすぐ、私はクラス全員から省かれた。頼りになったのは沙耶ちゃんだけだった。後で沙耶ちゃんが聞いた話だと私をいじめられる理由は学校では影同然のそんだった私が漫画家デビューが決まったのに対して私が嬉しそうじゃないってさ。私ってそんなに学校で笑顔を見せることなかったから、しょうがないと思うんだよね。理不尽だと思わない?でも言い返せることも出来なかった。そんな私が悔しくて、でもこの状況が辛くて。苦しくて。耐えれなかった。」
いつもは多く喋らない春音もこの話は耐えられなかったようだ。その証拠に春音の目には熱いものも見えていた。
「なんで、それを僕に教えたくなかったんだよ。」
「だって、だって、草汰に話したら草汰無理してでもなんかしようとする人だと思ったから。」
「……」
確かに僕はこのことを知っていたら無理をしてた。春音を助けたい一心で。
「でもお互いのためって。」
「あなたもクラス全員に省かれたい?」
「今日のクラスの様子を見てると多分俺はもう省かれる存在だと思ったよ。」
「え…草汰はそれでいいの?」
「いいも何も半年も居なきゃ省かれるのも当たり前だと思ってるしな。」
「私、草汰が羨ましい。」
その言葉にどれだけの思いが積もっているか。この「羨ましい」の言葉が春音にとって新たな1歩を踏み出すための一言になってくれるのだろうか。
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