第58話:夢想戦02
「うわ、なんて都合の良い夢。願ったら本当に具現化しちゃった」
「……………………」
「……………………」
本物の二人は、声がでかく章もない会話をひたすら繰り返す性格ではあったが、私が具現化したものは、何故だか無言で立ち尽くしているだけでいる。
まあ、うるさくない分には、私にとっては都合の良い状況ではあるが。
それはそれで、本物そっくりのロボットみたいで気味が悪くも感じる。
「……………………!」
「……………………!!!」
ともあれ、向こうは随分と乗り気になってくれている模様。
戦いさえしてくれれば、ひとまずはそれで良い。
夢の中なら、彼らを殺す気でかかったとしても、それは特に問題は無い。
「ほら、かかってくる? そちらが強いのは知っているけど、私だって少しは動きが良いって評判なんだ」
二人からバックステップで距離を取り、視線を向けて構える。
シュン…… すると、私たちの周りは、崖と川、岩場が生成され、いわゆる渓流と該当する場所へと変化した。
「素材も、この時代に今まで使ってきたものがある程度生えそろっている。今までの復復習も兼ねて、戦えるなんて、なんて親切なシステム」
まるでボードゲームのように都合の良いルールができあがってて気味が悪くも感じるが、私の夢の中で何を起こそうと、それは私の想像力が豊かで柔軟性があるに過ぎない。
だけど、彼らには八百長をしてもらうわけにはいかない。
早さと強さ、私は常に上を目指し続けなければ、ハナを倒すことが出来ないから。
私は循環ポケットの中に拾った熱烈草を放り込み、力を生成していく。
「さぁ、かかってきなさい。相手が二人だろうと容赦はしな……ん?」
私の目の前にいたはずのレボアロボア兄弟(仮想)の姿がない。
具現化したものが消えてしまったのだろうか、そう思った矢先。
ドスッ……!!「ぐぇっ……!!!!」
突然、背中の方から強烈な蹴りを入れられ、前方へと大きく吹き飛ばされる。
何が起きたのかぼんやりと把握するのが精一杯な状況の中で、すかさずもう一人の金髪(速すぎてどちらなのか判別がつかない)が、私の目の前へとやってきて、私のみぞおち目がけてハイキックをかましてくる。
「うぐぁぁぁぁぁぁ……」
プチッと内蔵が破裂する音がした。
男のマジもんの蹴りを入れられれば、無傷というわけにもいくまい。
視界が一瞬、真っ暗闇に包まれてしまった。 次のシーンは走馬灯だろうかと誤認してしまうほどに、強烈で苦しい一撃だ。
「……げほっ……ヤバい……今のはさすがに死ぬかと思った。速くて、重くて、痛いとか、強さのバランスが……普通に、おかしい……」
速さや回避でステータスをいうなら、私だってある程度の身体能力はある。
だけと、あれは化け物。 全てを卓越したかの如く、強さが仕上がっている人外の力。
「……せめて攻撃から逃げるだけでもしなくちゃ……これ以上、痛い思いをするのは嫌だ」
右手に宿った熱烈草の力を親指に込め、身体を縦横無尽に回転しながらフィンガーブレードを振り回し、二人が近づくのを拒否していく。
雑な防衛方法だが、相手を狙って攻撃したいというわけでなければ、これもこれで一つの手法となる。
「……………………」
「……………………」
二人が空気を読んでくれたのかは知らないけど、私に近づいてこようとした行為を中断し、大きくバク宙をしながら距離を取って着地する。
スタッ……!
「はぁ、はぁ、はぁ……」
二人の着地に合わせるように、私も何とか距離を取って着地する。
背中と腹を思い切り蹴られて死にそうな痛さの中で、この着地を成功するのは金メダル級ではなかろうか。
金色の包み紙にチョコレートを包んだもので良いから、誰か私にお恵みして欲しいところだ。
夢の中だからこそ、想像力を働かせるために糖分は必要になるからね。
「…………」
「…………」
しかし、私の高難度演技に興味なんて無いかの如く、バーチャルレボアロボアは無言のままでいる。
「あいつらとはコミュニケーションを深く図っていないから、夢で機転が利かないのも当然か。もっと仲良くならなきゃな」
今度、運営している施設にでも手伝いに行ってみようか。
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