第59話:夢想戦03

「……ともあれ今度は私が攻撃する番……!! 入念に人の弱点を攻めてきたあんた達を、メラメラのドカドカにギュインしてやるんだから!!!」


 語彙力のないバカの言葉遣いで威嚇行為をする。

 別に、私に語彙力が無いわけではなくて、あいつらに小綺麗な文章なんて必要ないと思ったからだ。


「私がこの時代で使ってきた素材の中で、特に便利だったセレクションで一気に攻める! まずは一体、右側の金髪を駆逐する!!!」


 足下に生えているあらゆる素材を拾い上げ、ストック用の鞄へとしまう。

 以降の戦闘で順次消費していく予定だ。


 唯一残した素材は、この前倒した悪魔『ヤキュ』を足止めする際に使った氷結氷(アイスロックアイス)。

 空気中や植物、生命のの水分を固体化させてしまうというもの。


 この素材は、動きの速いレボアロボアみたいな奴らに有効的な足止めをするのに特化している。

 あいつらの足元を凍らせて、ゆっくりと殴る蹴るの暴行でも楽しみますか。


 右手に生成された氷結氷の力を小指に込め、右手をグーにし地面を叩きつける。


 ピシピシピシピシ……!!!!

 ピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシッッッッッッッ………!!!


「……っ! う、動けない……! 足が……氷に……」

「ほら、身体を動かすと熱いでしょう? 私がキンキンに冷やしてあげたのよ」


 私の周りから拡散しながら草花が凍りづけになっていく。

 辺りが冷気に包まれて、春らしい気候が一気に真冬へと変化した。


「……………………」

「……………………」


 レボアとロボア、二人は凍る地面に足が埋め込まれ、完全に動けぬ状況へと一転不利になる。

 私の理想通りになりすぎて、相当すがすがしい。


 ゆっくりと滑り寄る私から逃げられずにいる姿を見るだけで、ご飯にふりかけをかけた気分になれる。


「これで完全に私が優勢。まずはさっきのお返しをしなきゃね」


 内臓が悲鳴を上げたときの痛みを一人で楽しむのはとても惜しい。

 ぜひとも彼らに同じ喜びを味合わせたいものだ。


 私の場合、悲鳴を上げられないくらいの強烈な一撃を喰らわせてしまう可能性はあるけど。

 まあ彼らは若いし、大丈夫だろう。


「次の素材はハガネカマキリ。最初の悪魔、デモディアを倒すときに使った昆虫だ」


 デモディアの時には、ストームマッシュと合わせて弾丸にした記憶があるが、今回は違う。


「親指に力を宿すフィンガーブレード。斬撃となる素材を有効活用するには、やはり親指が強いんだよ

……ねっ!!!」


 足元が凍って動けない片方のレボアへと一気に近づき、右手を振り上げて居合い切りを決める。


 ズバァァァァァ……!!!!!!!!


「………………っ!!!」

「……よし、入った!! 重たいやつ!!」


 殺すつもりで斬りつけた。

 一刀両断、真っ二つに出来たかと確認するが。


「……あぶない、殺されるところだった。ギリギリカバー成功」

「……えっ!!」


 真っ二つにしたはずのレボアがなぜか生きている。

 両手を前に差し出し、腕の表面には傷が付いているのは分かるが、それはまるで粘土に刃物を入れたかの如く、吸収されたように傷は浅い。


「俺も同じくハガネカマキリを使った。薬指のフィンガーシールドでな」

「……なに!?」


 レボアの両手の前には、青白く光る無数の斬撃が展開されている。


「いわゆる、相殺というやつ? 同じ素材ならどっこいどっこいにできるっての」

「いや、同じ素材でも優劣はあるさ。人差し指から弾丸を発射するフィンガーガンは威力は弱めだから概ね防衛は出来るが、威力と範囲のバランスを備えた親指のフィンガーブレードを出されてしまえば、こちらが負ける。咄嗟のことで、思わずシールドを出したのが敗因だった」

「……そう」


 夢の中にしては、随分と私の知らないことを新規公開してくるな。

 実はどこかで聞いたことあるけど、忘れちゃっていただけとか?


 攻撃の中にもすくみがあることは知らなかった。

 なにせ、人と戦うことなど滅多に無い話だし。

 だけど、覚えておくに超したことはなさそうだ。


「ても、結果的に私の攻撃が速すぎて、負けちゃったっていうこと? ふふ、だっさwww」

「そんな無様な顔で笑ってて良いのか? あと数秒後に後悔するぞ?」

「えっ、なにg……」


 どがぁぁぁ…………!!!!


「ぶへぁっっ……!!!!」


 ずがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん……!!

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