第11話:ようこそ、19世紀のメルボルン
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【Tips007】ルーミル
過去の時代のメルボルンで超循環士をしている女性。
年齢は二十四歳、AB型、身長は百五十センチ
冷静な分析力と小回りの効く躍動力で悪魔との戦いでは常に優勢に戦うことが出来る切れ者。
未来の時代で死にかかっていたリヌリラを救った張本人。
冗談を冗談で返されると弱い。
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過去の時代:メルボルン
ルーミルの家はメルボルンの首都にある。
歴史上では、家々が立ち並び、他は砂漠と荒野が広がっている場所だと聞いていたが、予想よりも自然が多く、農作物を育てる田んぼが多く作られていることに驚いた。
「悪魔との戦争が長いですからね。首都の進化と同時に生きるために必要なことを考慮した結果、自然を多く残そうという結果に至ったのです」
だから、私の時代の荒廃したメルボルンは草木が多く残されていたのか。
長い年月が経過してという要因が全てだと思っていたが。
しかし、一つ非常に気になることがある。
「都市を発展させたとしても、戦争でまた全てが破壊されてしまうんじゃないの?」
生と生が殺し合っているのだから、すべての場所が焼け野原になってしまう可能性は大いにある。
あえて都市を発展させるというのも、いささか虚無と化してしまうだろうに。
発展はすべてが終わったその後にというのが正しい流れじゃないか?
「意見としては仰る通り。普通、すべてが終わってから発展という流れでしょうが……私達は少々事情が異なるのです」
「はぁ、事情……」
「この世界、私達は大戦争時代と呼ばれる時代、人と悪魔が対立する真っ只中で、とある力を超循環士たちは手に入れることに成功しました」
「とある力……?」
「悪魔を完全に遮断するバリア『イデンシゲート』。このメルボルンは、イデンシゲートで全てを覆い尽くしていて、どのような力を行使しようとも、悪魔は絶対にこの中へと入ることはできません。もちろん、ハナは何百回と突入を試みたようですが、まったくもってダメだったと怒り狂っていました」
「どのような理屈で展開を?」
「一種の細胞認証のようなものでしょうか。空気中に存在する一つ一つの細胞を照合し、悪魔の細胞が照合されたら、連結した細胞全てを焼き尽くすというものです」
言葉で聞いてしまうと恐ろしい効果のようだ。
「私たちはイデンシゲートを数年掛けて作り上げ、人の完全なる安全エリアを確保することに成功しました」
「だから、そのゲートの中では安心して都市の発展に挑めると」
「そういうことです」
「昔の人は、本当に生き残るために超循環を駆使していたんだね」
「生きるためには今できることを最大限にしないといけません。あらゆる検証を繰り返し、悪魔たちとの戦いに準備してきました」
「私たちの時代には、その力についての文献が一切残されていないのはどうして?」
「悪魔に見つかってしまえば、力の源となる素材を刈り尽くされてしまうでしょう。超循環士は素材がなければ何もできません。口頭伝達で、必要最低限の人にだけ情報を共有していました」
どうりで狩りとか料理とか以外の文献が見つからないわけだ。
そんなの見つけたところで、悪魔にとっては無意味な情報になるだろうし。
「限られつつも、安全な世界があるというのは、心に大きな余裕を残すことができます。戦いに挑む超循環士だって、帰る場所がなくては背を向けられぬ絶望しかありません」
「な、なるほど……」
見渡す限り、広大な都市と自然がある。
青空が大きく広がっており、深呼吸をすれば自然の緑の香りがする。
寝転がって日向ぼっこすれば、いつの間にか寝てしまえそうな穏やかな環境。
戦争時代とは思えないような静かで広大なメルボルンだ。
私が生きていた、広大な自然の平和と変わらない。
「ひとまず、この近辺を案内しましょう。場所を知っておけば、色々と都合が良いでしょう」
「えっと、ああ……うん」
確かに、私の時代で見たメルボルンとは少し違いがあるようだ。
何より、人がいるという地域を徘徊するともなれば、土地勘をあらかじめ会得できるのはありがたい。
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