★第8話:20世紀に蘇る悪魔「○○」(1話〜7話閲覧後に見てください)

【※注意】

第7話〜8話はプロローグの中で特に強烈なオチが待ち受けています。

1話〜6話を予めお楽しみいただくことで、物語の展開の強烈さを体験することが出来ます。


8話は本当に強烈なネタバレです。

先に単体で読まないよう注意してください。

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 プツン……

 銅像の言葉はここで切れた。


 電動線の力が切れたのだろうか。

 いや、違う。


 ポタッ……ポタッ……


「ぐ、ぐぅぅ……」

「ふふ、そういうことなんだよ。リヌリラ」

「ど、どうして……ハナ……」


 あまりにも急すぎて、展開についていけない自分がいる。

 なぜ自分は電動線で銅像の言葉を耳にしていたというのに、背中から心臓を刺されているのだろうか。

 どうして傷口から流血し、力が抜けてうつ伏せに倒れているのだろうか。


「理由は言うまでもないだろう、リヌリラ。俺はそこにいる銅像の女と一悶着していたんだけどね、奴が俺のことを倒せないと悟ったのか、一緒に銅像になることで事態を収束させようとしていたのさ」

「……まさ、か……その悪魔……って……」

「ふふふ、銅像の中ってね。暗くて寂しいんだ。寂しいんだよ。だからね、脳みそまでカチンコチンになったとしてもね、なんとしても元の姿に戻りたいって思ったんだ。そうしたらね、百十九年経って願いがかなったんだ! ははは……凄いだろうリヌリラ! 俺の願いはこの女超循環士の束縛力を超えたんだ!」


 かすれゆく意識の中で、私はハナの狂ったひとり語りを耳にする。

 その姿は人間なのに、まるで悪魔のような形相で。


「なんで……私を……刺したり……の?」

「……ん? ああ、そうか。リヌリラは戦争のことについて何も知らなかったもんね。俺に刺される価値があるというのに、自分自身の存在価値の重要性を知らなかったんだもんね」

「自分の……価値……?」


 肉を食べて静かに暮らしたいだけの私だというのに、何をそこまで殺意に変えたのだろうか。

 私には全くわからない。


「本当は丁寧に説明してあげたいところなんだけど、リヌリラ、もう死んじゃいそうだからね。聞いている途中で死なれたら、俺の説明が全部パーになっちゃうから。ははは……だから教えてあげない。それに……」

「それ……に……?」

「これから俺は、戦争の続きをしなくてはいけないんだ……」

「な、なに……それ……?」


 ひとり語りが度を超えすぎて、なにを野心としているのか私にはもうわからない。

 流血で体が冷たくなっているのがわかる。

 流れた血がほのかに温かく、少し心地よい気分になっている。


「戦争は終りを迎える。 俺が半分に割れた世界の人を絶滅させることでね」

「あ……あっ……」


 人が死ぬ。

 その言葉を聞いて、冷たくなりつつある体が少しだけ熱くなる。

 だが、力を入れようにも、血が流れすぎて指の関節を曲げることすら不可能でいる。


「さようなら、リヌリラ。君が死ぬおかげで、俺は今、確実に求めている末路を辿ることができそうだ」

「…………」

「ああ、もう死んじゃった? ふふ、寂し。せっかく家でイノシシのお肉を燻製にしていたってのに……」


 もう言葉を聞くにも力がない。

 その身が朽ちていく様が体を持って実感できる。


 さようなら、私。

 せめて、この事情を知る機会さえあれば、無念はなかったのかもしれない。

 ハナの高笑いする声が、少しずつ遠くなっているのがわかる。

 いかないで、お願い……お願いだから……

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