第6話:あの銅像の声が気になる
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【Tips005】リヌリラの歴史への興味について
リヌリラは歴史に全く興味がなく、小さい頃の座学部屋でもサボることが多かった。
部屋に籠もって過去の過ちを調べるより、今日一日をどのように満足させるかという直感的欲求を心情としており、大人たちから積極的にイノシシやマンモスなどの狩猟方法を学んでいた。
女性で狩りをする人は滅多にいなく、集落人口数百人の内、数人いる女性狩人の一人として獲物を探し続けている。
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さて、先程ジジイサマたちに一つ嘘をついたことに罪悪感を覚えている。
私は『何か声は聞こえたか』という質問に対して、『いや』という否定の言葉を出したということだ。
とっさに嘘をついてしまったが、実は聞こえていた。
短いながらも、確かに女性の声が。
「あれ、絶対に銅像の声だよね。叫んでいるようにも聞こえたし」
空耳でないことは確実である。
説明はしにくいが、超循環の力でしか聞くことのできない特別な声であると感じ取ったからだ。
「ヤバイことをしてしまったかな?」
状況を冷静に見た後に、私は少し罪悪感に見舞われたことに気づく。
あのジジイサマたちは、過去の遺物を探すことだけに人生を注いでいるとも言って良い情熱の持ち主たちだ。
常に異物とふれあいながら、真実の追求へと目を向けることが人生にとってのジャスティスであるという。
しかしながら、今回は少し気が変わった。
私も過去の遺物の声とやらに興味を抱いた。
先ほどハナと話したときに口走った言葉。
『生まれた意味が無くなっちゃう』
時代がそうであると言われてしまえば、受け入れざるを得ないのが無力な人の定め。
神にでもならない限りは、どうしようもない。
だから、欲を持った。
これが異物だと言ってしまえば、後はジジイサマたちがどこかの小屋へと運んでしまって、関係者以外が目にすることは二度となくなってしまう。
もちろん、研究に興味のないと宣言している私は部外者の一人である。
狭い空間で真実を求めるより、歩ける限り欲望のままに生きたことを実感したい主義。
だが、この銅像が異物であると知っているのは私だけ。
私だけが今、この銅像から真実を聞くことができる。
「伝導線をすぐに用意しないと。銅像が処分されてしまうかも……」
別段、害があるわけでもなく特別な処遇でスグスグ処分されることもないだろうが、洞窟の墓地に長らく放置するという判断もしないだろう。
私はテーブルの上に置いていたランタンを走りながら手に取り、急いで伝導線集めに躍起することにした。
何をきっかけに気が変わったのだろうか。
疑問に思いつつも、少し期待を持っている自分に驚いている。
……
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その夜、皆々が床についている最中の午前二時。
一人ソファに座りながら、ランタンの光をぼんやりと眺めている。
「……そろそろハナは寝たかな? あいつ早起きのくせに遅寝なんだよね」
あまり年齢差は無いつつも、ハナは人生のゴールデン期である十代後半だ。
徹夜を数日繰り返し、動きまくり遊びまくり働きまくりを繰り返したところで充分に無茶が効く年頃。
私がなかなか寝ないことに疑問を抱き、無用な質問攻めに遭ったのは想定外。
おかげで妙なところで体力を使ってとても眠い。
しかし、私の反応が終始味気なかったこともあり、ハナは諦め、そのままベットにダイブして就寝。
小さな寝息を立てて寝ていることは確認済みだ。
ちなみにハナには、私が見た銅像は模造品であると答えておいた。
洞窟から戻ったジジイサマたちも、あれは模造品であると言って周ったこともあり、私の嘘はすんなりと押し通せたのは幸いだった。
どこか煮え切らない表情をしつつも、ハナは『わかったよ』と一言言い、納得してくれた。
「伝導線は、倉庫の奥に余っていたものがあってよかった。もしも誰かから調達しようとしたら疑われるからね」
伝導線は、本来コイル電池等に使用される代物で、私のような理系とかけ離れた人間が従来の使い方で使う場面は奇跡といえよう。
ちなみに倉庫にあったものは、メルボルンで拾った戦利品で、誰かに売りつけようとして、全く売れなかった在庫品だ。
「……行くか」
荷物を手に取り家を出る。
あたりにボケたじいさんがいないことを確認しつつ、足を尾を立てぬよう暗闇の中を駆けていく。
今夜は三日月が特に小さい周期。
これなら姿を見られることもあるまい。
怖いほどにというわけでもないが、難なくと言えるほどにことは順調に運んでいく。
「…………」
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