1ヶ月 小さい怪獣

 みくと暮らし始めて一ヶ月が経ちました。


 小児科での一ヶ月健診も終え、身長は生まれたときより5センチほど伸び、体重は1キロほど増えて、成長曲線ど真ん中の順調な成長を見せています。

 みくは肌の色が少し黄色く、黄疸ではないかと心配しましたが、新生児にはよくあることのようで、おそらく大丈夫とお医者さんに言われ、少し安心しました。


 一ヶ月健診は、久々に緊張しました。

 産院を出てからあまりみくを連れて外出する機会もなく、病院で大泣きしたらどうしようとか、順調に育っていなかったらどうしようとか、悪いことばかり考えてしまいましたが、みくは大泣きすることもなく、とてもお利口にしていました。

 俺は心配ばかりです。

 身長と体重を測るときにオムツをとるのですが、オムツをとっている間にうんちをしたらどうしようとか、いちいちハラハラしてしまします。

 そんなとき、俺はみくの手のひらを指でつんつんと突きます。

 そうすると、みくは俺の指をきゅっと握ってくれるのです。

 なんだか、パパ心配しないでいいよ、とみくに励まされているような気がしました。


 待合室では大泣きしている赤ちゃんがおり、傍らにいる母親が、申し訳ありません、と声をかけてきました。

 俺には、その母親の不安な気持ちがよく理解できましたので、大丈夫ですよ、と声を掛けました。きっと、皆不安なのです。俺は待合室の親たちに、共に闘う仲間のような、不思議な親近感を覚えました。


 小児科ではお利口なみくでしたが、その夜は泣いて泣いて泣き止みませんでした。

 ミルクも飲まず、あやしても泣き止まず、本当に力尽きるまで泣いているようでした。

 俺は何だか心配になり、ネットで調べてみました。

 調べたところ、赤ちゃんは、夜に頭の整理をするそうです。

 ただ、昼間の出来事が刺激的すぎると、頭の整理が追い付かず、混乱して泣き出してしまうことがあるそうです。

 みくは、病院に行ったことを思い出しているのかもしれません。


 俺はみくの傍らにただ寄り添うしか出来ません。

 泣きじゃくるみくは、まるで小さい怪獣のようでした。

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