第2話

朝起きると全く知らない昨日の夜あった男が寝ていた。びっくりして声あげそうだったのを手のひらで押さえた。

夢でないってこと?

朝の光に照らされてようやく顔がはっきりみえた。意外にイケめんだなって、そしてこの状況。襦袢きちんときてるし、多分大丈夫。

そっと抜けだして昨日のことが本当か確かめようとした瞬間、

「おまえどこいく?」

「確かめてみたくて襖あけていい?」

うなづいた。

開けると見慣れた街はまったくなくお寺にいた。周りは田んぼだらけ。

家に帰れない。

また涙が溢れた。

この人の言う通りだった。ショックだった。

何も言えなくなって思考停止してると、

「名はなんという。どこから来た?』

『李子(りこ)です。りはすももの李と書いて子でりこ。信じないかもしれないけど未来からです。」

「おまえどっかの姫かなんか?上等な着物着てたし。みらい?」

「あの、教えてほしいです。今は本当に戦乱期いつくらいですか?」

「あなたの名前は?」

「織田信長だ」

(えーあの織田信長?)とびっくりしてると。

「俺のことしっているのか?」

「ちなみに今いくつですか?」

「46だか?」

(たしかこないだテレビの特集で織田信長って49歳でなくなったって言ってたよね。たぶん1580年くらい。

あなたのこと知らない人なんかいないわとは絶対に言えない。)

「着物は後から届けさせる。今は戦さ場だか側にいるように」

それだけいってでていった。

その後、そのお寺の檀家の娘から受け取った着物を着ていたら真っ黒な小柄の男が迎えにきた。連れて行かれたとこはお寺の茶室?

ガチャン!

恐る恐る入ると信長が怒って茶碗がとんでいってる。お坊さんは何くわぬ顔だ。

思わず、茶碗に駆け寄り拾って欠けたりヒビが入ってないか確認する。大丈夫みたい。

「粗茶ではありますが、私が一服差し上げます。」

「ほう。」

と言ってお坊様は信長のとなりにお座りになった。

信長も言いたいことがありそうだったけど、とりあえず座ってくれた。

小さな頃からやってきた通りひとつひとつの所作を丁寧にこころをこめて行い、お茶をたてる。

思い出すのは祖父の姿。

お客人はこの空間をも楽しみにしている。お部屋、お菓子、お茶。自分ができる精一杯のおもてなししたら美味しいっていうてもらえるんやよ。

まず、お坊様の前にお茶碗を置くと

「お先に」

と信長に向かって言われて、上品にゆっくり飲まれた。緊張する。改めてみると格が高そうなお坊様みたい。所作が美しく無駄がない。

ゆっくり、何回かに分けてゆっくり飲まれた。懐紙で飲み口をお拭きになりお茶碗を下に戻された。

「誠によいお点前でした。」

「ありがとうございます。」

お茶碗を持って下がり、今度は信長の分。

お茶碗を信長の前におくと、片手でもちぐいっと一気にあおった。びっくりしているのもおかまいなく、

「にが」

そして腕を掴まれグイグイひっぱってお茶室を連れ出されさっきの部屋に。


「お前本当に何もんだ。

お茶の淹れ方、所作。京の出か?公家の間者か?」

今までの表情とは違い、短刀を手に凄む。

「昨日も言ったとおりみらいからきました。

みらいでは誰でもお茶を習いに行けます。」

「みらいとは南蛮のことか?」

(南蛮?オランダだっけ?)

「ではないですが。」

「キリシタンか?」

(キリシタン?キリスト教の信者?)

「私は違います。」

ここでやっと短刀をしまってくれた。

「ふぅ〜」

「あい、わかった。リコは異国の者なのだな。じゃ後でその国の話を教えてくれ。

お茶の淹れ方、見事に綺麗だった。住職も褒めていた。

じゃおまえはお茶を私に教えてくれ。京の公家の奴らに田舎呼ばわりされたくない。今日は住職に教えてもらおうときたんだか、お前に教えて貰えばいい。

それがおまえの仕事だ。だが尚更興味がわいたから今日から側室だ。お前のことは帰蝶にお願いした。なんでも相談しなさい。」

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