第二話 いつもと違う理由
「お嬢様! お嬢様!」
悲鳴に似た声で、名をを呼ばれる。
「……?」
ゆっくりと目を開ける。
のぞき込んで私の顔を伺っている侍女と目が合う。
「……エル……?」
彼女の名前は、エルフィ・フロッケ。愛称は、『エル』で、
「お、お目覚めですか!? お嬢様!」
「ええ、エル。それにしても、大げさじゃなくて?」
ゆっくりと起き上がる。
「失礼しました。……って、お嬢様。今は、安静にしていてください」
案の定、頭に軽い痛みを感じる。
(痛っ……)
思わず頭を押さえる。
けがした部分には、どうやら包帯が巻かれているようだ。
「まだ、痛みますか?」
「ええ。少し……」
「そうですか……。他になにか変わったところはございまさせんか?」
「特に……あっ」
小さく声を上げる。
(そうだった。私、確か、階段から落っこちた衝撃で、前世の記憶、思い出したんだよね)
いつも通りに接していたが、前世の記憶を思い出した、ということを思い出した今では、いつものようにお嬢様のような接し方をするのには無理がある。
何せ、前世の私は、ごくごく普通の一般庶民なのだから。
「どうかされましたか!?」
私が小さく声を上げたことで、エルは、ものすごく心配そうな顔で私に詰め寄る。
「いや……何でもないです」
「……?」
エルは、しばらく呆然とした後、首を傾げる。そして、何が起こっているんだ? とでもいうように目を真ん丸に見開く。
「……」
私は、事情が読めずに無言で、エルを見守る。
「……お嬢様。どうかされましたか?」
驚きすぎて、逆に冷静になったか、落ち着いた声音で尋ねられる。
「特にはありません。頭は、まだ少し痛みますが」
エルと同じように、冷静に答えると、エルの顔がどんどん青くなっていくのがわかる。
なぜだろうか。
私は首をかしげる。
「エルこそ、どうかしましたか?」
「……い、いえ……なんでも、ございません。ご気分を悪くされましたのなら、大変申し訳ございません。……お医者様を呼んできますね」
片言な口調に疑問を感じるもとりあえず礼を言う。
「? ……ありがとうございます」
私に一礼してから、まるで逃げるように部屋を出ていくエルに私は首を傾げる。
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