マンシュピこぼれ話

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所感と引用と裏話と感謝のことば

『マンドレイクシュピーゲル』感想文 | 安藤 飛雄吾 #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10190213


同人作家にして表題の作品のキャラクター原案でもある安藤氏(https://twitter.com/hugo_ando)から三年越しで書き終えた小説について感想文を貰って滅茶苦茶嬉しいのですが、嬉しすぎて逆になんて言えばよいか分からないので代わりに筆者視点から語る本作の所感をつづらせて頂きます。

※本文はpixivに投稿しようかとも思ったのですが、pixivの方のマンドレイクはタグとか直すのが大変という理由でまだ完結状態にないため、とりあえずカクヨムさんで投稿させて頂きました。


■はじまり


>確か『卉小隊』が誕生したのが2015年の初夏のことです。


感想文からの引用の通りだったと思います。当時はオリジナル特甲児童プロファイルという試みが生まれたばかりの頃でしたね。で、安藤さんの上げたキャラいいわー好きだわーって感情からプロットを考え始めちゃって、まあ思いついちゃったんだから書いてみるか。ダメだったら死蔵すればいいしという感じで気軽に書き始めました。思えばこれが三年にも及ぶ長旅の幕開けだとは露ほども思わずに……

最初は恐る恐るといった感じで書いたものを酒(ウォッカだった気がする)の勢いに任せて安藤氏へDMでぶん投げたんですが、なんやかんやあってイイヨーヤッチャッテーって感じになって続きを書かせてもらってるうちにどんどんと設定が増えるわ知らない過去が明らかになるわ……

いわゆる「キャラが勝手に動き出す」という状況に陥っていました。森での戦いが終わる頃まではずっとそんな感じでお話を考えるというよりお話を受信するノリだったのですが、森での事件が収束し始めたあたりから問題が発生しました。「これどうやって事件を収めるんだろう?」

散らかすのは簡単ですが、片付けるのは大変だといういい例ですね。しかし、彼女たちがどんな戦いを通じてどのような過去を掘り起こすのか。そしてその結末はどのような結果へと向かうのか。どうしようもない状況でどうにかしようとあがく姿をどうにか描けないだろうかという苦しみは常に付きまといましたが、同時にとても楽しくありました。


ともあれ、卉小隊に関する設定は元々安藤氏のものであり、私の描いたこの小説群とは細部においてもけっこう重要な部分においても異なる箇所が多いです。それは二次創作・三次創作という作品群の特性上どうしても切り離せない事柄となりますので、以下で語る各キャラクターのTIPSについては『〇〇の設定』というより《マンドレイクシュピーゲル・赤いウィーンに出てくる〇〇の設定》という風に受け止めて下さればと思います。パラレル。


■卉小隊について

本作において彼女らは何らかの罪を過去に犯したものとされています。

MPB-BのBはベヴァッフングのBということで、警備のほかに看守という意味があります。つまりMPB-Bに身柄を預ける彼女らは警察官というより囚人といった意味合いが強く込められています。彼女らにとっての仕事とは社会への奉仕であり、すなわち罪に対する罰でもあるのです。

(書いた当初は普通にBVT旗下のMPBの新設部隊という設定でしたが、これを連載してる間に発売されたテスタメントシュピーゲルでMPBはBVTの管理下から離れたので、じゃあ2022年のこっちでもそういうことにしとこうかという感じでMPBという原作の素晴らしい組織の所属ではなく、MPB-Bという名のMPBに間違えられることを推奨するBVT旗下の怪しい新設組織という変な設定に変わりました。たぶん政治的思惑の下での暗闘とかするんじゃないかと思います)



■疾風・クラーラ・アイヒェルについて

この作品の主人公にして、語り手にして、強敵にして、そしてこの作品の根底にあるテーマそのものを体現するキャラクターです。すなわち、罪と罰についてのことです。

『過去に何があったか』について作中において明示されたキャラクターは恐らくこの子しかいません。そしてその内容は、とてもとても大きな罪として彼女の人生に根を張っています。

彼女は許されないことをしました。しかしその責任の全てが彼女にあるわけではありません。しかし同時に、彼女は明確に自分の意思によってその行為を行いました。しかしそれらは家族や教導者(ゼペットですね)によって半強制的に植え付けられたものです。つまるところ、彼女は加害者でありながら被害者でもあります。この構図を我々はたぶんニュースや映画や小説で目にしたことがあると思います。少年兵です。少年兵について語り始めると話がそれるので割愛しますが、彼女は恐らくなにひとつ間違ったことをしようとはしませんでした。所属する集団の掲げる「正しさ」に沿えるようただ愚直なまでに粉骨砕身し、そしてその集団から弾き出された後になって「お前は間違っている」と言われた存在のです。なぜなら、この地球上に「正しさ」という物体は存在しないからです。それは人の頭の中にしか存在しない不可視で不定形の概念であり、それは規範とか意見とか、あるいは「思想」と呼ばれます。

彼女は思想に振り回された結果罪を犯しました。正確には、彼女は罪を犯したと社会に定義され、それ故に罰を受けることを求められました。そして罰とは本来、その洗礼をもって罪を洗い流すために存在する概念です。しかし、人の考え=思想は人によって様々です。罪には罰を以ってそれで終いとすべきという思想もあれば、罰を受けた程度で許されるべきではない罪もこの世に存在するだろうという思想もあります。その結果、彼女はMPB-Bに身柄を預けられ、そして特甲児童となりました。虐殺という名の、けして贖うことが叶わないだろう罪の清算を望まれたがゆえに。


しかしそんな境遇にあってなお、疾風は腐ることもなく仕事に邁進します。それに関してはいくつか理由があるのですが、作中で描写しきれなかったのであえてまあそのまま謎として残しておこうと思います。

ただ、彼女は子供工場で今までの人生をすべて否定されるような扱いを受けながらも、最終的には自分がこれからも生き続けるための何らかの希望を見出しました。それらの希望が似たように罪を負ってMPB-Bへと『収監』された芙蓉と嵐の命を救い、そしてあの森の事件へと繋がったのです。そしてこの作品のテーマである罪と罰とは、『罪という重荷を過去へ背負わされた子供が、その罰をこれからの人生へどのように落とし込んで行くのか』という思考実験でもあるのです。まあその実験結果までぜんぶ書いてたらどんなことになるか分からないので、今のところ挑戦は難しそうですが。


まあ重い話はさておき、キャラクターとしては……なんというか、からかい甲斐のありそうな女の子ですよね、真面目で。まあ作中では真面目が過ぎてロリになったり大変だったんですが、それはそれとしてこんな一直線すぎる子だからこそゼペット氏もついつい構って構ってあんなことになっちゃったんだと思います。

リーダーの適正ってのは色んな形がありますが、彼女は仲間のことを想うあまり自分が前に出すぎて重すぎる荷物を抱えきれずにグシャってなっちゃうタイプなので、じゃあ仕方ねえゥチがわたしが支えてやらにゃあかんなあまったく手がかかる小隊長だぜ、みたいなリーダーなんだと思います。自慰の時は声出さずに黙々とやるタイプで、そのことについてみたぞみたぞとからかうと最初はむっつりしてるけどそのうち顔がどんどんくしゃくしゃになってきて最終的にぽろぽろ泣いちゃう感じの重荷を抱えすぎるタイプだと思われます。何言ってんだ俺は。かわいいですよね。

苦労人に見せかけた苦労させる側の人間ですが、同時に頑張り屋でもあるので応援してあげたくなっちゃうキャラだと思われます。書いてるうちにいちばん感情移入しちゃって好きになったコです。がんばれ。


■芙蓉"エヴァ"ベルクマンについて

最初に惚れ込んだ子であり、そしてメンタリティの各所に少しずつ筆者の性的嗜好を押し付けられた苦労人です。つまりイケイケのbimbo風ギャルだけど実は包容力あってママ適正が高いからめっちゃ人情味あるし優しいし土下座して頼めばおっぱい見せてくれそうな女の子、という属性をエンチャントされました。ごめん。ちなみに「小隊長? 疾風だよ」って安藤さんに教えてもらえなかったら卉小隊のラフイラストの中で一番目立ってた彼女を隊長とした短編がマンドレイクの代わりに生まれてた可能性すらあります。

正直私もなんでこの子をこんな依怙贔屓してるのかよくわかんないんですよね。なのでよくわかんない衝動っていうのはだいたい性的嗜好に端を発すことが多い気がするので、つまり彼女の見た目や設定がわたしの女性の好みに近いんだと思います。


彼女の過去は簡単に考えていますが、考えただけなので特に設定とかはないです。

でも彼女も罪を背負った子供の一人であり、卉小隊の大事な仲間であります。だってこの子が間に立たないとクソ真面目の疾風とクソ不真面目の嵐が対立したままどっか離れかねないからね。緩衝役って大事。ママかよ。

あと自慰は風呂に入りながらいい匂いの香水と共に済ませます。なんかこの辺の話をむかし原案者とした覚えがあるのでここに書いてるんですけど、記憶違いだったらごめん安藤さん。


彼女の武装はガスのほかにMP5Kを使うという設定もあるので、一般人に扮装した芙蓉が演技でテロリストの耳目を引き付けつつ特殊部隊用のアタッシュケース偽装モデル(MP5Kコッファー)をラスト付近の地下鉄戦で使う案もありましたが尺の都合でボツりました。惜しい。


■嵐・ヨハンナ・ヤンセンについて

なんだこいつ。

最初は機械いじり好きで変な語尾のキモオタとかいう「工作兵という立ち位置は便利そうだけど、うーん……?」という感じの影が薄いコだったのですが、気が付いたらマンドレイク後半の主人公とでもいうべき大活躍と歯に衣着せぬ内心の吐露でなんだこいつ滅茶苦茶面白いのでは? と書いてるうちに好きになっていったキャラクターです。なんだこいつ頭おかしいんじゃねーの? でもやってることはホント暴走した疾風の尻拭いそのものなので、いやあマジで物語ってのは予測がつかねえなあと思いました。天邪鬼すぎるだろ。


「思考形態は一番ヤベーやつ」「けどやってることは暴走した特甲児童の鎮圧」という一見矛盾した行動から生まれた設定がありますが、まあこれも書ききれなかったのであまり深くは言及しないでおきます。ときたま彼女が口に出す脳内チップだの新しい人格改変プログラムだのがその名残ですね。彼女たちの罪に対する組織が下した罰はなんだったのかという話にもつながる部分です。


メンバーの中では確定で非処女です。メヒコ。

彼女はエグいオナニーする感じだったと思うので、たぶん個室とかのプライベートな空間が割り当てられたとしたらえぐいアダルトグッズとVR筐体を自分で勝手に導入して繋げて改造して退魔忍みたいなオナニー体験に挑戦して疾風あたりと喧嘩するんじゃないかと思う。


■その他の特甲児童について

本作は卉小隊の二次創作でありながら卉小隊以外の特甲児童が出演します。そちらは基本的に私の考えたキャラクターにあたりますが、彼女らについても軽く触れておきましょう。


■秋月・コリンナ・フィンケ

私自身がオリジナル特甲児童プロファイルへ投稿すべく考えた&実際に投稿した最初のキャラクターです。

彼女は特甲猟兵でアフリカ派兵組で男だったという設定がありますが、まあ長くなるので割愛します。本来なら閑話にあたるエアザッツシュピーゲルの主人公となってシェパード小隊の次期隊長に収まるはずでしたが、書いてるうちになんか……なんか勝手に動き出してどっか行きました。またかよ! ちょっと気を抜くと登場人物が勝手に動きやがる。おそろしいぜ、物語。

彼女にも街へ戻った目的があるのですが、それは結局語り損ねたままでしたね。アンタレス事件で家族を失った上に死にかけて、しかしある特甲児童に助けられたことが関係しているとだけ言っておきます。アフリカであった色々なことはサラッと箇条書きで本編で語られているとおりです。


また、同人作家であるいだいなほ氏(https://twitter.com/174yda010)制作の二次創作同人TRPGルールブックである『リヴァイアサンシュピーゲル』において、彼女は私のプレイヤーキャラクターでもありました。まあマスタリング業務と並行で動かしてたのでNPCみたいなものですし、性格もこの小説のソレとぜんぜん違うのですが、まあそれはそれとして。


そんなこんなで、ある意味思い入れの強いキャラでもあります。


■伏龍と桜花

オリジナル特甲児童プロファイルに投稿した二人目と三人目です。KIAです。

後述するリヒャルトのシーンで再登場する予定がありましたが諸々の事情によりボツになりました。


ちなみに彼らの性格モチーフは三大欲求だったりします。伏龍が食欲で桜花が性欲、秋月が睡眠欲ですね。彼らに発生したであろうフロー状態にもそれらが関わってきますが、本編中では特に描写する場所がありませんでした。

もし仮にユング三兄弟みたいなフローの共有とか発生する展開になったら秋月さん大変なことになりそうですね。がんばれ。


■シェパード小隊(狼火・飯綱・風狸)

エアザッツシュピーゲル執筆にあたって取り急ぎ作ったキャラクターで、最終的にリーダーが負傷してその代わりに秋月が指揮を執って~……みたいな予定だったのですが、西日本豪雨の後に書いた短編である非難民(文字数を削減したうえで冲方塾へ投稿済み)の主人公として採用した結果、なんか自我を得て勝手に動き出しました。またか。


彼女らもMPB-B所属なので何らかの罪を背負っているキャラなのですが、描写どころか考える暇すらほぼ無い執筆スケジュールだったので狼火おねーちゃんの罪の草稿だけが手元にある感じです。


余談ですが、同人作家であるはむよん氏(https://twitter.com/hamyon33)が私の誕生日のお祝い(涼月と同じ九月三日なんですよ)になにかしてくださると仰ってくれたもので……おそるおそるこの三姉妹のイラストをお願いしたところ、快く快諾&素晴らしい設定画を送ってくださった……ということがありました。いやホント……みんなめっちゃ可愛くて……狼火おねーちゃんとかホント甘えたくなるかんばせをしてらっしゃって……いやあもう、締切まで残り〇日とか〇時間みたいな修羅場でエアザッツのような閑話を執筆する原動力となったものは、間違いなくこの素晴らしい誕生日プレゼントのおかげでした。本当にありがとうございましたー!


……もしかしたら、狼火おねーちゃんが負傷も死亡もなくあの中で一番いい感じのラストを迎えているのは、(尺の都合というのもありますが、)このイラストのおかげかもしれません。運命に勝った女だ。


ちなみに狼火さんの特甲イメージはサムライ。飯綱さんはニンジャ。風狸さんは足軽みたいな感じです。分かりやすい日本のイメージ。

風狸さんはお姫様か舞妓さんでもイイかなーと頂いたイラスト眺めていると思いましたもので、たぶん足軽めいた重装甲をキャストオフすると中から十二単めいた特甲が現れる可能性もありますが未確定です。あと飯綱の武装のモデルは完全にタイタンフォールですね。影響されすぎか。


ちなみに書きたいけど書けなかった彼女たちの戦闘シーンが通信妨害後ぐらいのタイミングでもう一つあるのですが、この戦闘で飯綱と風狸が持ち前の武装を活用してくれる代わりに狼火さんが負傷して秋月と入れ替わるイベントが起きてしまうことになるので、まあボツです。


■リヒャルト

まあこの一連の事件の黒幕にあたるキャラクターで、最後に彼まわりのことを描写して物語を占めるつもりだったのですが……この話を書き始めた時点で締め切りまで残り十分無いとかそんな状況だったので無理でした。ソ連の亡霊みたいなやつですが、目的は月に行くことです。それ以外のことは秘密。

一緒にいた少女は非合法の特甲児童(あるいは機械化児童)みたいなキャラクターですが、この子はむかしボツにした『クラカヂール』というタイトルのオイレンシュピーゲル二次創作短編(っていうか夕霧のエロSS)の出来事をモデルにして生まれたキャラクターです。別にスプライト2巻のロシアンマフィアおっさんの美少女化とかではないのであしからず。

ちなみにこの短編は合成麻薬である『クロコダイル』に纏わるお話でもありました。この麻薬の副作用を知っている方であれば、彼女が自分のことを“わに”と称する理由について察しが付くかもしれませんね。


■最後に

おおむね語りたいことは語り終えた気がしますので、この辺で所感は終了とさせていただきます。

このマンドレイクシュピーゲルの原案を世に産み出してくれた安藤さんへ、改めまして心よりの感謝を。

シェパード小隊のイラストを送ってくださったハムよん氏へ、二度改めまして心よりの感謝を。

そしてTwitter上などで作品の感想を送ってくださった全ての方々に、三度改めまして心よりの感謝を。

すべてが本作の執筆のための力となり、そしてこの日を迎えることが出来ました。ありがとう。本当に、ありがとう。


彼女たち特甲児童と共に過ごしたこの三年間に、感謝を込めて。

2018年10月1日 ハラショー

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