O・HA・NA・SHI
おはようございます。今日は良裕さんの誕生日です。
予定としては、今日明日はゆっくりしようということになってるけど、良裕さん次第かなぁ……いきなり出かけるとか言い出しそうだし。出かけるならそれでいいんだけど、せめて私の体力は残しておいてほしいと思うのだよ、良裕さん。
だからこそ朝からはやめてって何度も言ってるのに、普段以上に今朝は私の話を聞きやしない。いつもの激しさはなかったのに、私は良裕さんのテクに呆気なく達してしまったのだった。
***
「ごめんってば」
「知 り ま せ ん」
現在、良裕さんとO・HA・NA・SHI・中です。久しぶりなのはお互い様だから、良裕さんの気持ちもわかる。
けど、夜ならまだしも朝から抱かれるのはさすがに嫌だ。だから、ちょっとしたお説教タイムです。
「私、何度も『朝からはやめて』って言ってますよね? なのに、良裕さんは聞いてくれないじゃないですか。人の話を聞かないくせに自分の主張だけを通すのは、クソ女と同じじゃないんですか?」
「うっ……」
「だからこそ、私も自分の主張を通すことにしたんですが、それについて何かご不満でも?」
「だから、悪かったって言ってるだろうが」
「まーーったく反省してないみたいですね、良裕さん。私たち、何回、同じことを繰り返してます? そのたびに『悪かった。もうしない』って言ったのは、だ れ で し た っ け ?」
「……俺です」
一応、二人ともシャワーを浴びてから服を着た状態。その段階で良裕さんを床に正座させ、私は目の前で仁王立ちしてますが、何か。
実はこのやり取りを何回かしていたりするし、結局は流されて許してしまう私にも問題はあるんだろう。でも、『嫌だ』と言ったことに対して強引にするのは違うと思うんだよね。
特に良裕さんはセックスになると鬼畜ドSになる傾向にあるから、一度きっちり釘を刺しておかないと、どこまでも暴走しそうなのが怖いのだ。
「わかってるならいいです。なので、私の要求はふたつ。ひとつ、今後一切、朝からのセックスにまつわる行為は禁止です。……まあ、キスくらいはいいですが」
「……もし破ったら?」
「その日の夜と翌日の諸々の行為を禁止、尚且つしばらく別々に寝ることにします」
「……」
「ふたつ、今日一日、手を繋ぐこと以外の接触を禁止です。キスもダメ」
「そっ、それは……!」
「それが嫌なら、『一ヶ月間』全ての接触を禁止したうえで、私はその間実家に帰りますが、それでもいいんですか? 私はどっちでも構いませんけど?」
「……っ」
ようやく私が本気なのがわかったんだろう。息を詰まらせてちょっと顔を青ざめさせながら、若干涙目になってるのが珍しい。でも、今日は流されないよ? 私だって怒る時は怒る。
「先に言っときますけど、良裕さんが嫌いになったからこんなことを言ってるんじゃないですから。それはわかりますよね?」
「……ああ」
「それに、私は嫌なことは嫌だとはっきり言うのも知ってますよね?」
「ああ」
落ち着いて来たのか、顔色が戻って来てる。こういうところは、ほんっとに有能なのがムカつく。
「この際だからはっきり言っちゃいますけど、朝から抱かれてしまうとそのあと何もしたくなくなるくらい、体が怠くて辛いんだよね」
「え……」
「……それも言ってるはずなんだけど、聞いてなかったみたいね」
「う……」
「まあ、今はいいです。で、そんな状態で仕事に行ったりすると読み間違えをしたり、商品を一行飛ばして読んだり……必ずポカミスするんだよ。良裕さんも知ってるでしょ? 私のポカミス」
「ああ」
本当なら、そんなポカミスはやっちゃいけないことだ。けど、たまに疲れてぼんやりしてしまうことがあり、気合いを入れてもどうしてもミスしてしまうのだ。
自分のミスだから、今までは一度も良裕さんに伝えたことはなかった。
「良裕さんや一緒に組んでる人が気づいて指摘してくれたり、分配の時に抜き忘れが発覚してるからかろうじて問題になってないだけだよね。でも、ポカミスが連続で何回も続いたら? 二重チェックをすり抜けてしまったら? 取引先から『商品が足りない』って連絡が来たら? 私が怒られたりクビになったりするなら、自業自得だからまだいいよ。でも、私のせいで良裕さんや皆、会社の評価が落ちるのは違うし、それがすっごく怖い」
「雀……」
「正直、私の我儘でもあるけど、良裕さんが
良裕さんを見下ろしながら腕を組む。
気分は「どうすんだよ、ああん!?」な感じなんだけど、良裕さんの目がなぜか爛々とし始めてるから、絶対に別のことを考えてるよね? 特に胸に熱視線を感じてるからね!
やっぱり、調べまくった単語を実行しないとダメかなぁ……なんて思っていたら。
「わかった。今度こそ、ちゃんと守るから。だから……」
「だから?」
「俺の誕生日なんだし手を繋ぐだけじゃなく、久しぶりなんだから夜は雀とたっぷりセックスさせてくれ!」
「って、言うに事欠いてそこなのかよっ!」
土下座でもするのかと思えば、偉そうに腕を組んで私を見上げ、そう宣った。
おおぃ、良裕さん……朝からそんな事を言うんじゃありませんっ! ご近所様が聞いたらどう思われるかわかってるんですか⁉
結局、滅多に見れない良裕さんの必死な顔と懇願により、昼間は手を繋ぐことだけを条件に、良裕さんの主張を飲んだ。ただし、手を繋ぐこと以上のことをしたら、それすらも禁止と言い渡して。
私からするのは問題ないので、良裕さんが気づくまで知らん顔をする。
で、スマホでなにやら調べものをし始めた良裕さんを放置して冷蔵庫の中身を調べ始めたら、「今日は外で飯食おうぜ」と声をかけられた。
「え、でも……」
「普段、雀は三食作ってくれてるだろ? だから、俺の誕生日とか雀の誕生日とかのイベントの時くらい、ゆっくりしてほしいんだよ。週一か週二は外食でもいいくらいなんだよな……それくらい余裕で稼いでるし」
そうなのだ。一緒に住むようになってから、良裕さんにお弁当を持たせてる。お弁当といっても運転中に食べられるよう、基本的におにぎりばかりだ。
中に入れる具材を工夫したり、時にはロールパンサンドにしたりしてる。
そして給料は、役職付の良裕さんとバイトの私じゃ雲泥の差で、多分倍以上違うと思ってる。今度の給料分から私の給料は全額貯金することを、二人で話し合って決めている。
尚且つ良裕さんの給料からも多少貯金ができるって……一体どんだけ稼いでるんだろうね。ドヤ顔で言うんだから相当稼いでるってことなんだろうけど……。
生活面で安定しているって、イイコトダヨネ。ちくせう。
「週一か週二の外食はともかく、今日に関しては良裕さんが外食したいなら任せるよ」
「お、マジ? じゃあそうしよう。実は行きたいとこがあるんだよな」
差し出されたスマホの画面を見れば、なんか見たことのある店名が。
「あれ? これって……」
「奥のルートにあるイタリアン。駅ビルの中だし、ピザを石窯で焼いてるんだと」
「おー、石窯で焼いたピザ?! 美味しそう!」
「だろ? 他にもいろいろあるみたいだし、ここに行こうか」
「うん!」
さっきまでの不機嫌はどこへやら。午前中にスーパーで買い物をして、実家に昨日のお土産を届けてから出かけることになった。
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