良裕さんと誕生日デート
プレゼントは帰って来てから渡すことにして、実家へのお土産を持って二人で買い物へ出かけた。義姉しかいなかったけどそれらを全部渡し、出かけるからとお茶の誘いを断ってスーパーへ。
足りない食材を買って自宅に戻り、バスの時間に合わせてちょっと休憩してから家を出た。
普段は車で移動することが多いせいか、バスでのお出かけも久しぶりで、なんだか新鮮だ。
駅に着いて、新しくできたお店の店内を見たり、家電量販店で家電製品を見たり。特に必要なものはなかったからそのまま映画館へ。でも、特に観たいというのがなくてその場をあとにする。
駅ビルで服や靴を見て、買いたいものは買って。駅ビルに入っているゲーセンで時間を潰したあと、イタリアンのお店でご飯。
注文したのはドリンクバー付きのピザ。あとはサラダくらい。
「ワインは頼まないの? バスで来たから、飲むんだと思ってた」
「ワインは昨日さんざん飲んだからいらない」
「じゃあ、ビールは?」
「ビールもいいかな。そっちもバスん中で飲んだし。てか、昨日たくさん飲んだから、今日は肝休日」
「そ、そうですか」
そんな会話をしつつもピザを堪能して、店を出た。帰りのバスの中で次はパスタもいいよね、別の店もいいかも、なんて次の約束や食べた感想を言いながら帰宅。
さて、私はこれから良裕さんにプレゼントを渡さなきゃならない。喜んでくれるといいな……と内心ドキドキしつつ、プレゼントを手渡した。
***
「あ、ちょっと待ってて」
帰宅してすぐにテレビをつけ、風呂の準備をしてからまったりしていたら、雀がコーヒーを淹れてくれた。それを啜っていたら何か思い出したのか、立ち上がるとキッチンカウンターの下にある扉を開けて何かを取りだし、それをうしろに隠しながら戻って来る。
何でそんなところに隠してるんだよ。
なんだろうと内心首を傾げていたら、雀は俺の隣に座るとそれを差し出した。
見た目は長さ五十センチほどの細長い箱で、紺色の包装紙に金色のリボンがかかっている。
「良裕さん、誕生日おめでとう! 何も思い付かなくて、ありきたりのものになっちゃった」
「ありがとう。……開けていいか?」
「ど、どうぞ」
上目遣いで俺を見上げる雀を可愛く思いつつも包装を解いていくと、中から白い箱が出て来た。その蓋を開けてみると、中には二種類のネクタイピンと、ネクタイが六本入っている。
ずいぶん多いな、おい。
ネクタイの柄はレジメンタルとピンドット、チェックの三種類。
レジメンタルは黄色の布地に紺とそれよりも細い白が等間隔で交互に入っているもの、エンジの布地に白の二本。
ピンドットは紺の布地に白と、薄いピンクの布地に焦げ茶の二本。
チェックは水色の布地にレジメンタルが紺でリバースが布地よりも薄い水色と、ベージュの布地にバーバリーチェックの二本。
ネクタイピンは鰐口のものとクリップタイプの二種類で、色はどっちもシルバーだ。素材はプラチナで、ネクタイに至っては全てシルク。
「またずいぶんと……。探すの大変だっただろ?」
「う……それなりに。でも、クールビズ期間はともかく、それ以外は仕事柄ネクタイは必要でしょ? だから頑張ってみた」
えへへ、と照れたようにはにかむ雀に、愛しさが込み上げる。
ネクタイの色は定番といえるものから、俺自身は選ばない色もある。だが、俺の首にネクタイをサッと合わせ、「よかった、思ってたよりも似合ってて」と呟く雀に、俺のために一生懸命選んでくれたんだと思うと嬉しくなる。
「雀……ありがとな」
「ううん。よかったら使ってね」
「ああ」
抱きついてきた雀を抱きしめ返す。今日は雀のほうから甘えてくることが多い。
ただ、そんなことをされると、禁止されているとわかっていても、俺も我慢の限界ってものがあるわけで……。どうしてくれようか、なんて考えていたら、雀に言われた言葉に耳を疑った。
「……なんだって?」
「だから、良裕さんは、ご、ご、ご奉仕されることをどう思うって聞いたの!」
「ご奉仕って……。雀、どっからそんな言葉を覚えてくるんだよ!」
「えっと……ネット? 良裕さんの誕生日だし、どうしたら喜んでくれるかなって思っていろいろ調べてたら、そんな言葉が出て来て……」
真っ赤になって俯いた雀に唖然とする。気持ちは嬉しいが、俺としては、してもらうよりも雀を啼かせまくるほうがいい。
「俺は、ご奉仕されるよりも雀を啼かせるほうがいい」
「うぇっ!?」
「だから、いつもみたいなパターンがいいってこと!」
夜はたっぷりしたいって言ったじゃないかと言えば、雀はさらに顔を赤くして固まった。
「よ、よ、良裕さんっ!」
「ほれ、さっさと風呂に入ろう。どうしてもご奉仕したいっていうなら、湯船ん中で……な」
「ーーーっ!!」
声にならない声をあげた雀を促し、一緒にバスルームへと向かう。雀は「あー」とか「うー」とか言って唸っているが、拒否してるわけじゃなさそうだった。
『ご奉仕』なんて言葉を使うくせに、セックスのこととなると途端に恥ずかしがる雀。そんな雀を可愛がりたくて仕方がない。
(惚れた弱みかね……)
そんなことを考えて苦笑し、雀を促してからさっさと服を脱ぐと中へ入る。全身を洗い流して先に湯槽に浸かると、雀が洗い終わるのを待つ。
「おいで」
「……うん」
相変わらず、一緒に入る時は照れる雀に苦笑しつつも俺によっかかるように言えば、素直にそれを実行する。ほぅ、と息をはいて俺の肩に頭を乗せた雀は、「んー」といいながら腕を前に伸ばした。
それをいいことに雀にいたずらをしかける。
今までにないほど、いい誕生日のお祝いになったのは言うまでもない。
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