大学

 それから高校を卒業するまで、僕と優斗は二人で楽曲作りに励んだ。優斗の家に毎日のように通い二人で受験勉強をしながら、あれこれ試行錯誤した。

「他にバンドメンバーは?」

 僕は何度も聞いた質問をした。

「なんとなく俺達二人が今はいい。メンバーは大学に入ってから決めよう」

 優斗はパソコンの前でそう言った。

 玲奈はどうしてか僕に話しかけなくなった。それで僕は優斗が暇な時を見計らっては声をかけ、二人で話をした。

 卒業式の日、僕は玲奈のことを見ていた。でも彼女が僕に話しかけに来ることはカラオケに行って以来なかった。

 玲奈は高校卒業と同時に音楽事務所の養成所に行き、僕ら二人は同じ地元の大学に通った。

 大学では最初、二人で講義を受けていたが、いつの間にかグループになった。その頃には僕の人見知りも直っていた。

 音楽活動は、僕が作詞し、優斗が作曲した。僕は毎日のようにパソコンに優斗の作った曲に詩を書き綴った。

 僕ら二人は大学の軽音楽部に入り、僕がボーカル、優斗がギター、他に二人のメンバーがベースとドラムを担当した。

「なあ、新曲作ったから、歌詞つけてくれ」

 僕はそう言われて、作詞に励む日々だった。

 僕らの作ったバンドは活動を行ったが、なかなか客は集まらなかった。コンテストに出場しても落選してしまう。

そんな日々が三年続き、就職活動の時期にバンドは解散した。

 

 僕は小さな出版社に内定をもらい、優斗は銀行員になった。僕はこのまま、会社員として一生を終えるんだろうなと思っていた。

 大学四年の時、たまたま動画サイトで彼女がかっこいい衣装を着て踊って歌っているのを目にした。僕は心の底から何か揺さぶられるものを感じた。僕はただその光景を眺めて、そして憧れの作家になろうと決意した。

「君、辞退するの?」

「はい」

 僕は理由も言わずに内定を断った。そして僕は実家に帰り、夜に飲食店でアルバイトをしながら小説を書いた。



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