第16話

「まずはピース!」

「はい!地面操作グラウンド・オペレーション!!」


 大地は揺れ、ガガドラと同じ大きさの尖った岩が地面から現れた。

 岩はそのまま木に衝突し、見事に風穴があいて崩れていった。


「よし、次!」

「おうよ!地面操作グラウンド・オペレーション!!」


 大地はまた揺れ始め、先ほどと同じ大きさの尖った岩が今度は5本現れた。

 木を何本か貫通していき岩は停止、そしてそのまま木はドミノのように崩れていった。


「二人とも成功だな。次行くぞ!」


 ガガドラは足にケガをした牛を二頭連れてきた。


「よし、やってみろ」

「「回復ヒール!」」


 少しずつ少しずつ牛の足は治り始めていった。

 先にアキヒサが終わり、続くようにピースも無事に治し終わった。


「二人ともお疲れ様。よくできていたぞ」

「パパに勝てなかったー!!」

「俺に勝とうなんざ、百年早いぞ!!」

「大人気ないぞ、アキヒサ」

「いでっ!」


 冗談のつもりだったが、ガガドラは俺に一発いれた。

 ピースも笑ってくれたし、まあ良しとしよう。


 あれからというもの、二週間ぐらいほぼ毎日修行をしていた。

 時には手伝いをするために休憩もとっていたが、どこかしらで必ず練習をしていた。

 ピースも俺と一緒にガガドラが見ていないところでも練習をしていた。


 それにしても随分とかかったもんだ。

 勇者の魔法でも、二週間あったら3、4つぐらいは覚えられたぐらいだぞ。

 こっちの魔法だと効率が悪いようにしか感じない。


「だけどまあ、その分覚え甲斐があったな」

「このまま他の魔法も使えるように頑張ることだな」

「ああ、頑張ってみるよ」


 一応今まで何個どころではなく、たくさんの魔法を見てきた。

 その中に覚えている魔法から、使えそうな魔法をピックアップしていく。

 こうしてしっかり勇者以外の魔法も使えたことだし、また努力をすればできるだろう。

 その分時間がかかってしまうが。


「パパー!」

「どうした、ピース?」

「これ!グラドリアさんから!」


 珍しくグラドリアからか。

 酒の飲み過ぎに注意しろよー、とかそんな感じのことが書かれていそうだな。


「ん?それは数日前に出回った記事だな」

「そうみたいだな。今から3日前だ」


 俺とピースは修行に集中しっぱなしで、ガガドラは俺たちの面倒とみんなの手伝いをしていた。

 だからガガドラも最近のニュースを知らない。

 そのことを知っていたのか、わざわざ渡すようにピースに頼んだんだろう。

 それよりも、一体いつの間にピースはグラドリアのところに行っていたんだ?


「何を考えているんだ?どんな内容なんだ?」

「ごめんごめん、別のことを考えていたよ」


 それよりもまずは記事の内容だな。

 記事の内容はこうだ。


 先日、獣人歓迎制度撤廃をしたソルル王国がとある集団によって潰された。

 集団の名前は光の戦士たちライト・ウォーリアーズ


「『集団を率いるのは、悲劇の姫と呼ばれたアナスタシア・アーク・シュリンピア』…だと……?」


 まさかあのアナスタシアが?

 国を壊してしまうほど変わってしまったと言うのか?


「ソルル王国か……。あの国なら仕方がないだろう」

「ガガドラまで。そんなにひどい国だったのか?」

「ひどいなんてものじゃない。獣人差別はもちろん、人間も差別されていた。奴隷売買、薬を使って国のお偉いさん達だけが儲かるシステムをつくっていたんだ。国民からしたら、潰されたのは嬉しかったんだろう」


 国民が国を潰されて喜ぶ、かあ。

 そこまで言われているなら確かに潰されてもおかしくはない。


「ということは、アナスタシアはしっかりと活動しているというわけか」

「そうなるな。まさかアキヒサの仲間が光の戦士たちライト・ウォーリアーズのリーダーだとはな。さすが、といったところだろう」

「有名なのか?その光の戦士たちライト・ウォーリアーズって」

「昨年から差別撤廃を目標に活動している集団だ。基本は交渉だが、戦闘になると圧倒的に光の戦士たちライト・ウォーリアーズのほうが有利だ。例え国が相手でもな」


 アナスタシア以外の面子がどうかは知らないが、アナスタシアがいるということだけで結構脅威になる。

 俺と一緒に冒険したときもそうだが、何回助けられたことやら。


「それにしてもなぜ知らなかったんだ?情報はよく読んでいただろう」

「読んでいたけど、ここ最近活動がなかったから忘れていたよ」

「恐らく誰かの力によって止められていたんだろう。だがこうして大きなことになってようやく顔を出せたみたいだな」


 活動はしていたものの、どこかの国にとっては厄介だったのだろう。

 そのため、増員をさせないために情報を遮断させた。

 そうなると、その時点で権力がそれほどあるやつに限られるが…まあ今はいいだろう。


 記事にはまだ続きがあった。


「『ソルル王国は壊滅し、新しくミスティック王国が誕生。平和を目標に、住人の種族は関係なく受け入れるとのこと。皆平等で生きていこう』、だってさ」

「すごい奴だな。こう大大的に言うやつは初めてだ」

「それほど勇気があって、決断力があるお姫様ってことだよ」


 こういう事に関しては決断力と行動力がすごいんだよな。

 敵に回したら怖い女だよ……。


「種族を選ばない国というのは初めてだな」

「確かにそうだな。今までは大きくても町だったし」


 村や町は一からつくろうと思えばつくれるため、今はあちこちに点在している。

 だが、アナスタシアがつくったように国単位での大きさは初めてだ。

 小さな村や近くの町は吸収されていくだろうな。


「ほかに何か書かれていないのか?」

「まだあるな。『準備があるため少し遅くなるが、1月後に建国祭を開催する』、だとさ」


 まだ少し先だけど、また祭りが始まるのか。

 前回とは2月ぐらい離れているのか?

 それだったらちょうどいいタイミングかもしれないな。


「どうする?行ってみるか?」

「行くよ。というより行かないといけない」


 アナスタシアとは話したいことがたくさんある。

 今は王国を動かすほどまで登りあがって面会が難しいだろうが、会えることならぜひ会いたい。


「またお祭りにいけるの!?」

「ああ。だけどもう少しだけ先だぞ」

「わーい!また何か食べたい!!」


 まだ少し先になるが、次の目標が決まった。

 アナスタシアと話しをすること、だ。

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