第14話
俺たちは練習がしやすいように場所を移動した。
「それで何の魔法を覚えるんだ?」
「そもそも俺が使える魔法も限りがある。その中で2つの魔法を教えることにした」
「おっ、いいねえ。でも大丈夫か?一気2つもやっちゃって」
「ピースにはしっかりピースの早さでやってもらう。だが、アキヒサには容赦しないからな」
「えっ、なんで俺だけ……」
無理なお願いをしておいてなんだが、それは理不尽ではないか?
いや、無理なお願いをしたからこうなってしまったのかな。
「まあいいや。こんなん俺でも厳しい修行に耐えてきた男だからな!」
「おー!私も私もー!!」
「いや、ピースは女の子だから」
乗ってくれるのはうれしいかったけどね。
「まずは主に覚えるのは土の魔法だ。俺が得意な魔法が土の魔法だからこれにした」
「土の魔法、か」
ダングリアが使っていた魔法も土の魔法だったな。
遺志を継ぐような感じがする。
「次に覚えるのは回復魔法だ。これは自分と自分以外にも使えるようにしておいてもらう」
「1日でよくそこまで考えられたな」
「大雑把だがな。だがいきなり相手を回復することはだめだ。土の魔法を覚える際にケガをした場合、回復魔法の練習として自分で回復をしてもらう。それができてから相手を回復する練習をするように」
「わかった」
「はーい!」
土の魔法で回復の魔法、そしてまた土の魔法で回復の魔法というサイクルで無駄なくやっていく。
問題と思われそうな魔力がなくなってしまうことだが、ここは魔力が少し多い。
自然の魔力を取り込んでいけばなくなることはないだろう。
他にあるとしたら集中力が切れるときだ。
そうなってしまったら休憩をするのが一番回復するだろう。
これについてはガガドラも知っているはず。
「もちろん続けてやると集中力が切れて危なくなってしまう」
「ピース、疲れた時はしっかり言うんだぞ」
「だがアキヒサには不要だろう。なにせ厳しい修行を受けてきたんだからな」
「なぜ俺だけ!?」
しかもそれは5年以上前の話だ!
これからはもう堕落というか体力は落ちていく一方なんだぞ。
「さっそく土の魔法をやってみようと思うんだが、そもそもピースは魔力というのは知っているのか?」
「知らない!」
「アキヒサ、今まで何も教えなかったのか?」
「危ないことは積極的に排除していたからな」
「…そうか、そう言えば過保護だったな」
魔法が絡むとそこには大体争いごとができる。
危険だと思い、ピースには魔法は非現実的な幻想なものと思わせておいた。
そのせいで今はこうして興味津々に聞いているんだけど、最初に思いついたのが芋関係だったから心配だなあ。
「まずは魔力というのは――」
簡単にだが、ガガドラはピースに優しく教えている。
けっこう教えるのが上手だったけど、今まで教えたことあったんじゃないのか?
「とまあ魔力というものを知らないと魔法が使えないんだ」
「じゃあ私は魔力を扱えるようにならなければだめってこと?」
「完璧とまではいかなくていいが、多少使えないと魔法が使えないからな」
「分かった!頑張ってみる!」
気合いを込めて、マジシャンのようなポーズで手から魔力を出そうとしていた。
残念だが、例え出ても目で見ることはできない。
見るためにはそれを魔法にしないと見えないからな。
「全然分からない!」
「まあ、そうだろうな」
「なんでー!!」
とりあえず、ピースがこの段階をクリアしないと俺はまだ教えてもらうことができない。
ガガリアも流石に二人バラバラに教えることはできないみたいだし。
後はピースに頑張ってもらわないと。
「どうすればできるの?」
「そもそも魔力って目で見えないんだ」
「じゃあ扱えるのか分からないじゃん!」
「そうだな……。例えばこの葉っぱを見ていてくれ」
ガガリアは地面に落ちている葉っぱを手に取り、そのまま手のひらの上に置いた。
「ふんっ!」
「おおぉ!!」
手に力を込めると、手のひらの上にあった葉っぱが浮かび始めた。
「こうすれば魔力を使っているかわかるだろう?」
「それなら土の魔法をやりながらでいいんじゃないのか?」
「そういうわけにはいかない。普通の魔法は筋肉と一緒で、軽いものを動かせなければ重いものを動かすことはできないんだ」
そうなると、土の魔法を使える人は魔力に関してマッチョなのか。
待てよ、サミナもアナスタシアも土の魔法を使えていたな。
あんな華奢の二人が、魔法においてはマッチョって……。
何かそれはそれで面白いな。
「? 何をぼさっとしている。アキヒサもやるんだぞ」
「俺もか?さすがに俺でもそれぐらい――」
「ならやってみろ。ただし自分の魔力ではなく自然の魔力を使ってな」
「…えっ?」
手のひらの葉っぱを浮かせるだけあって、見た通り普通は自分の中にある魔力で浮かせる。
俺も過去に何回かやったことがあるが、それも自分の魔力で浮かばせた。
「なんでわざわざ?」
「お前…自分で言っておいて忘れたのか?」
「新しい魔法を覚える、という事だろう?」
「お前が使うと大体スキルを経由して魔法となるんだ。そうなると自然の魔力を使わないと新しい魔法を覚えるということにならないぞ」
「あー、たしかにそうだな」
うん、確かに自分の魔力を使うとスキル経由で勇者が使うまた別の魔法に変換される。
面倒くさいようだが、大体は上位互換の魔法に変換されるから困ることはまずない。
でも自然の魔力もまず自分の中に入って、それを自分の魔力にするようなものだ。
それなら意味が……。
「もしかして、その場で魔法に変えろと?」
「そういうことだ。せいぜい頑張ることだな」
「軽く言うなよー!!!」
このやり方はまず誰もやらないやり方。
自分の魔力を使うこと以上に神経が必要だからだ。
例を挙げるなら、金魚すくいのポイに糸を通すのを自分の魔力で魔法を使うとしよう。
その場で変換する場合は、しっかりと縫い針に糸を通すぐらい神経を使うのに差がある。
最終的に無意識でも使えるようにする魔法なんだから、どれだけ苦労するかは考えたくない。
「どれぐらい大変なのー?」
「ピースが今やっているのは葉っぱを浮かせることだろう?」
「うん」
「俺がやれって言われているのは、髪の毛並みに細い大きさの物を上げろと言っていることなんだ。しかもそれ以外は上げてはいけない」
「…よくわからないや」
まあわからないでしょうね。
俺もあまり実感ないし。
さて新しい魔法を覚えるための授業。
最初から躓きそうで今後が不安だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます