第25話 病気99

「ゴホッ!ゴホッ!」

「身体がけっこう熱いね」


 朝、なかなか起きてこない僕を心配してお母さんがやってきた。

 熱を測ってみるとやはり熱があった。


 なぜ起きてこなかったかと言うと、どうやら風邪を引いていたみたい。

 身体がだるくて動きたいと思わなかった。


「風邪みたいね。今日はゆっくりと休むのよ」

「わかった」

「じゃあおかゆを持ってくるから。お腹がすいたら食べてね」


 そう言うと、お母さんは部屋を出ていった。


 不死身の身体でも、どうやら体調は崩すみたい。

 健康も欲しかったなあ。


 ちなみにだけど、なんで体調を治さないかと言うと理由わけがある。

 別にスキルを使えなかったり、スキルが開けないとかではない。


 ただ単にそれをするのがしんどいだけ。


 スキルを使うにも神経を使うし、スキルを開いて探しているときも疲れる。

 それにこのしんどい体調で探すことになる。

 いっそ休んでいた方が楽なのだ。


「久しぶりにゆっくりできる……」


 毎日エイミーやお姉ちゃん、リリスにドラグノールと一緒にいる。

 たまには休んでもいいよね。


「アンディー。大丈夫ー?」


 休めない。


 部屋に来たのはお姉ちゃんだった。


「どうかしたの?」

「これ、お母さんが持っていってと言ったから」

「そういうことか、ありがとう」


 手に持っていたのはおかゆだった。

 お母さんの代わりに持ってきてくれたみたい。


「ちょっと待ってね」

「……?」


 なぜかベッドの横に座った。

 何か用でもあるのかな?


「はい、あーん」


 そういう事だったのか。

 何かやろうとしてたのはあーんこれだったのね。


 …食べないといけないのかな?

 食べないとずっと手に持っていそうなんだけど。


「食べないの……?」


 分かった!分かったから!

 食べるから悲しそうな顔をしないで!!


「美味しい?」

「美味しいよ」


 お姉ちゃんがつくったわけではなく、しっかりアンドレアがつくってくれていた。


 この体調不良の中、お姉ちゃんの料理を食べたら間違いなく死んでしまう。

 不死身があってもなんか死んでしまいそう。


 というかこれってお嫁さんになるエイミーがやるんじゃないの?

 もしかしてまだ起きていないとか?


「ジー……」

「あっ」


 部屋の入り口にはエイミーがいた。

 ジト目でこっちを見ている。

 しっかりと起きていたんだね。


 それにしてもジーなんて口で言う人っているんだね。


「アンディ、大丈夫?」

「大丈夫だよ。安静にしていれば」


 一応釘は打っておこう。

 何かされてからでは遅いからね。


「ちょっといい?」

「いいよ。はい」


 お姉ちゃんとエイミーが入れ替わった。

 まさかだけど……。


「あーん」


 なるほど、二回目ですか。

 これは予想外だったよ。


「どう?」

「うん、美味しいよ」


 というかお腹が空いたから普通に食べたい。

 器ごと貰おうとしたその時だ。


「……」

「……」


 廊下にいたリリスと目が合った。


 一体どうなっているの?

 なんでこういう時に限ってみんな集合するの?


「風邪って聞いて薬を持ってきた」

「あ、ありがとう」


 そう言いながら部屋に入ってきた。

 そしてそのまま流れるようにエイミーと交換した。


 待って、もしかしてだけど……。

 リリスはおかゆをよそい、そこに薬を入れた。


「こうすれば飲みやすい。あーん」


 二度あることは三度ある。

 まさかリリスまでこうなるとは思わなかった。


 さっき食べた時とは違い、今度は味が違った。


「苦い……」

「そりゃあ薬だからね」


 良薬は口に苦し。

 そう考えればいいだろう。


 ご飯も食べて薬も飲んだ。

 後はゆっくり休めばいいだけ。


「お腹いっぱい食べたし、薬も飲んだからそろそろ休むよ」

「「「えーー」」」

「えーじゃないよ……」


 何を期待しているんだ。


 まさかだけど、そんなに早く治ると思ったの?

 無理すればスキルでどうにかなるけど、一日ぐらい休ませて。


「しょうがない。みんな戻ろう!」

「アンディー、何かあったら言ってね!」

「バイバイ」


 よし、みんな部屋から出ていった。

 後は寝るだけだ。


 満腹感と薬のおかげで目を閉じたらすぐに寝れた。


*


 何時間か寝た時だ。

 誰かがドアを開けた音が聞こえた。


 一体誰だろう?

 僕は目を開けて、ドアのほうを見た。


「あれ?誰もいない?」


 でもドアは空いている。

 もしかして、幽霊?


「ワンッ!」

「なんだ、ドラグノールだったのか」


 身体を起こさずに見たため、下の方までは見えなかった。


「どうしたの?」

「ワンッ!」


 返事か話そうとしているのかは分からないが吠えた。

 すると角が光りだした。


 待って、もしかしてこの前のように竜巻を?

 と思ったが、僕に魔法をかけた。

 何の魔法なんだろう?


「あ、あれ?」


 身体のだるさが嘘のように消えていった。


「まさかだけど、ドラグノールの魔法?」

「ワンッ!」


 まさか回復魔法まで使えるようになっているとは。

 驚きどころではない……。

 フェンリルって魔法が得意なのかな。


 せっかく治してもらったんだし、みんなのところへ行こう。

 まだご飯まで時間があるし。


「それにしても何か違和感があるなあ」


 何だろう?

 さっきから頭に違和感がある。


 長く寝ていたせいで寝ぐせでもついたとか?

 後で洗面所に行っておこう。


 僕はみんなに会いにみんなのところへ向かった。


「おはよー」

「アンディ!?」

「もう治ったの!?」

「うん、治ったよ」


 みんなは同じ部屋にいた。

 僕がいなかったからエイミーはお姉ちゃんとリリスと遊んでもらっていた。


「それにしても早い…ね……」

「そうだ…ねぇー……」

「ん?」


 さっきからみんなの目線が僕と合っていない。

 ずっと僕の頭のほうを見ていた。

 そんなにヤバイ寝ぐせだったのかな?


 さすがに気になり、頭を触ってみた。


 そこには普通ない耳があった。


「…なにこれ?」

「「こっちが聞きたいよ!!」」

「詳しく」

「僕にも分からな――」


 部屋にあった鏡を見てみると、耳は犬と同じだった。

 もっと言うと、ドラグノールと一緒。


 もしかしてドラグノールの魔法の後遺症?

 どう考えてもそうとしか思えない。


「私が持ってきた薬のせい、ではないと思うけど」

「そういえばあの薬ってなんの薬だったの?」

「あれは時間が必要だけど、病気を完治させる特効薬。ちょうどさっき治ったと思う」


 時間が…必要……。


 待って、もしかして僕は勘違いしていた?

 治ったのはリリスのおかげで、この犬耳はドラグノールのせい?


 もしかしてだけど、ドラグノールが使った魔法は犬耳を生やす魔法……?

 僕は実験体だったとか……?


「「その耳可愛いー!!」」

「うん、可愛い」

「ドラグノールー!!!」


 今日病人だったとは思えない声が出た。


 ちなみに犬耳だが、翌日になったら嘘かのように無くなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る