第23話 身体99
「うーん、どうやったらこうなるんだろう?」
午前の勉強時間。
いつも通り早く終わらせた。
今はお昼までの時間を潰していた。
いつもはスキルを確認することが多い。
でも今日は別のことをしている。
それは魔法陣の勉強だ。
勉強をせずにスキルを使ってやってもいい。
でも、こうして勉強して覚えるのもいいかと思った。
ちょうどいい暇つぶしにもなるしね。
「何しているの?」
「うおっ!?」
びっくりした!
後ろにはリリスがいた。
一体いつの間に……。
前もそうだけど、足音を立てずに後ろに立つのはやめてほしい。
「急に入って来ないでよ……」
「一応ノックはしたけど、集中してて気づかなかったみたい」
「あ、それはごめん」
それは僕が悪かったな。
そんなに集中していたとは思わなかった。
「それでどうしたの?」
「最近血を貰ってばかりだからそのお礼を」
最近は家に来たらよく血を飲んでいる。
ほぼ毎日ぐらい。
「そのお礼にりんごをもらったりしているから構わないけど」
「ちゃんとお礼をしたい」
そう言うと部屋を出ていこうとした。
「えっ、どこに行くの?」
「キッチン。ちゃんと許可は貰った」
あぁ、お昼をつくるってことかな。
ちょうどいい時間だし、そうさせてもらおうかな。
キッチンに移動すると、材料はすでに置かれていた。
「一体いつの間に……」
「材料は私が持ってきたから」
材料はわざわざ持ってきたのか。
つくる気満々ってことね。
「それで何をつくるの?」
「ホワイトシチュー」
「…お、おう」
その料理にいい思い出がない。
最後に僕が食べたホワイトシチューは紫色だったからね。
大丈夫かなあ。
「作るところ見ていていい?」
「構わないよ」
見ていたらさすがに大丈夫だろう。
もし危ないものを入れようとしたら止めればいいし。
「嫌いな食べ物ってある?」
「特にないけど、毒はやめてね」
「…私を何だと思っているの?」
仕方ないじゃん!
この前は危ない料理ができたんだから!
「まあいいわ。見てて」
肉を上に投げると、まな板に落ちるときにはいいサイズに切れていた。
すごい、そうとしか言えないことが起きたのだ。
嘘偽りなく料理人を越えている。
できれば食材で遊ばない方がいいと思うけど。
「あとは出来るのを待つだけ。どうだった?」
「すごかった!」
「でしょう?」
率直な感想だけど、本当にすごい。
お姉ちゃんがこうして料理ができていれば……。
あ、でもリリスは長く生きているからそのおかげなのかな。
長い間一人で暮らしていたみたいだし。
シチューが完成すると、先に僕たちだけで食べることにした。
「いただきまーす!」
「召し上がれ」
これは……。
美味しい、本当に美味しいよ。
ちゃんとしたホワイトシチューだよ……。
「涙流すほど!?」
「なぜか出てきちゃったよ」
僕は涙を流していた。
不思議なこともあるね。
美味しいことだけあってすぐになくなってしまった。
「そういえばリリスって普通の食事でいいって言っていたよね?」
「うん、魔力は全然回復しないけど」
「じゃあなんで成長はしないの?」
疑問に思っていたことだ。
ヴァンパイアについてあの後少し調べてみた。
男でも女でも関係なく、人間が成人まで成長するのと同じように成長はする。
それに対してリリスは10歳前後で成長が止まっている。
「たくさん生きているから成長はする」
「えっ、でも身長が」
「ああ、これはわざと」
わざと?
わざと成長しないようにしたのかな?
「ちょっと血を貰っていい?」
「ん?別にいいけど」
いきなりだな。
別に構わないけど。
いつも通り血を飲み始めた。
少しだけ多く飲んだみたいだけど。
「じゃあ行くよ」
そう言うと、リリスの体がどんどん大きくなった。
「元々はこれだけ成長している」
「へぇー!もう大人になっているんだ」
「そりゃあ何千年も生きているからね」
そりゃあそうだよね。
種族によってどう成長するかまでは載っていなかったから知らないけど。
ちなみにだけど、大きくなったと言って裸になっているわけではない。
リリスの服が特別なのかは分からないけど、服も一緒に大きくなっていた。
「アンディは成長しないの?」
「いや、僕まだ生まれて数年しか経っていないんだけど」
何を期待しているのかは分からないけど、こっちで生まれてまだ数年しか経っていない。
それで成人していますって言ったら別の種族だと思うよ。
「アンディが成長したところ見てみたい」
「見てみたいと言われてもなあ」
あ、スキルを使えばいいのか。
でもそんな都合のいいスキルあったっけ?
「ちょっと待ってて。スキルオープン」
大体探せばあるんだろうね。
ほらあった。
成長とは違って身体というのがある。
身長とかを変えるからこっちでいいのかな。
これを99に上げてっと。
「何してたの?」
「成長した僕を見る方法を探していたんだよ」
「そんなことできたら、人間じゃないよ?」
自分で言っておいてそれをいいますか!?
「なんで……」
「冗談のつもりで言ったつもりだった。こうやって大きさを変えられるのは私だけだし」
「ヴァンパイア全員じゃないの?」
「いや、私だけだった」
固有スキルとか何かなのかな?
でもスキル上げちゃったしなあ。
せっかくだし使いたい。
「リリスと似たようなことができる魔法があるんだよ」
苦しい言い訳だけど、大丈夫だろうか。
「へぇー。そんなに若いのにすごい」
「でも秘密だよ?」
「わかった」
信じてくれた……。
それにしてもこのスキルはどう使えばいいのかなあ。
と思ったけど、使いたいと思ったらバーが出てきた。
横にずらすと数字が増えたり減ったりするから、表示された数字の年齢の身体になるのかな?
試しに20でやってみよう。
すると僕の身体は大きくなっていった。
「おぉ……」
「これが20歳の自分なのか」
元々が普通の体系だからそのままで成長した感じになっている。
見た目は結構お父さんに近い。
「……」
「どうしたの?」
「お父さんにそっくりで、あまり面白くない」
「親子だから仕方ないでしょう!?」
なったらなったらおもしろくないって。
結構手厳しい人だな!
「でもいいことが分かった」
「何が?」
「アンディが大きくなっても血はおいしそうだってことが」
この人、一生僕の血を飲み続ける気なのかな?
その後、僕は元の姿に戻った。
みんなも食堂にきて、お昼ご飯を食べた。
食べたのはリリスがつくったホワイトシチュー。
もちろん大好評だった。
そんな中、お姉ちゃんはリリスをライバル視していた。
お姉ちゃん、勝ち目ないよ……。
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