第10話 保存99
「今日の遊びはアンディが考えて!」
「えぇ……」
エイミーが遊ぼうと言ってくるから、大体何かして遊びたいと思って来ているはず。
でも今回は僕が考えるということに。
まあそれはそれで構わないけど。
いい点としては無茶なことを選ばなくて済む。
いきなり二階から飛ぼうとしたりされるのは怖いからね。
それならゆっくりできることがあればいいんだけどなぁ……。
「あっ、エイミーって魔法が得意なんだよね?」
「そうだよ?」
「じゃあ見せてもらっていいかな?今後の参考にしたいからさ」
「分かった!」
「ここだと危ないから外に行こうか」
一応僕も魔法を使おうと思えば使える。
スキルを上げればどれでも行けるんじゃないかな。
けど他の人の魔法を見てみたい。
それから優先的に上げるものを選んでいこう。
僕たちは魔法を使えるよう、外へと向かった。
場所は中庭、ここなら大丈夫だろう。
「二人とも何しているんですか?」
「ルーシュじゃん。えっと、エイミーがどんな魔法を使えるのか見せてもらおうかなあって」
「あぁ、そういうことですか」
ルーシュは中庭で掃除をしていた。
そういえばルーシュって魔法を使えるのかな?
「ルーシュって魔法を使えるの?」
「使えますよ!ただそこまで得意ではないですが……」
「見せてもらうってことは?」
「構いませんよ」
そう言うと、両手を前に出した。
何の魔法を使うんだろう?
「アイスフェアリー!」
「おお!」
「可愛い!」
召喚魔法みたいで、氷を纏った可愛い妖精が現れた。
大きさは両手ぐらいの大きさ。
ちょうどルーシュの両手に乗るぐらいだ。
「この子は?」
「氷の妖精です。この子は氷の魔法を使うのが上手なので、氷の魔法を使いたいときはこの子にお願いします」
自分が直接使うのではなく、こうやって誰かに魔法を使ってもらう方法もあるのか。
ふむふむ、そういう事なら召喚魔法もいいな。
「ちょっとだけ頼めるかな?」
ルーシュが頼むと、氷の妖精は頷いた。
口はあるんだけど、しゃべらないのかな?
妖精はふうっと息を吹くと、氷の結晶が出てきた。
結晶は段々と固まっていき、花の形になった。
「これはこの子が得意な氷の花です。綺麗でしょう?」
「すごーい……」
驚きのあまり、声があまり出なかった。
花の造形は氷でできているから、透き通って向こう側が見える。
その上、花の大きさが妖精のサイズだから小さくてかわいらしい。
その小さな氷の花を僕に渡してきた。
「くれるの?」
妖精はコクリと頷いた。
手に取って近くで見ると、やっぱりきれいだ。
でもこれ、氷でできているならそのうち溶けちゃうよね。
それに小さいから壊しちゃいそうだし。
でも取って置きたいなあ。
「何考えているの?」
「これをどうやって取って置こうかなあって」
「そうですね、たしかに氷なので溶けちゃうので……」
そんな時はやっぱりスキルの出番。
早くしないと溶けちゃう。
「スキルオープン」
何かいいものはないかな。
単純に保存があったらいいんだけど……あったわ。
でもこれ、保存を上げた瞬間目の前にあるのが保存されるのかな?
そうだとしたら全然想像がつかない。
とりあえず上げてみたら、移動魔法の時と同様、頭の中に文字が浮かび上がった。
魔法系はこういう事が多いんだろう。
その中にあった、これなんてよさそうだな。
「
一度だけバラを透明な筒に入れてプレゼントするのをテレビ見たことがある。
形は違うけど、飾るならこっちのほうが置きやすそうだった。
おまけに透明で中の花も見やすい。
それをみた妖精は驚いていた。
「これはこの花を取って置くための箱だよ。そのままにしたら溶けちゃうからね」
妖精は興味津々に箱に手を当てて見ている。
「相変わらず坊ちゃまはすごい魔法を使いますねぇ……」
「一応だけど、今回は僕じゃなくてエイミーの魔法を見るためにここに来たんだけどね」
何時の間にか、エイミーも妖精と一緒に箱を見ていた。
二人とも嬉しそうに見ている。
後で僕の部屋に飾って置こう。
「それでエイミーの魔法だけど」
「そうだった!この子ほどじゃないかもしれないけど、綺麗な魔法があるよ!」
「へぇ!どういうの?」
「見てて!
上に手を伸ばすと、火の球が空へと飛んでいった。
ちょうどいい高い場所まで行くと、いろんな色へと爆発。
それはきれいな花火だった。
魔法でこんなにも簡単に花火をできるなんて。
僕も覚えたいなあ。
「綺麗な花火だね」
「うん!攻撃で使うの魔法より、こういう見る魔法のほうが好きだから頑張っているの!」
何ていい子なんだ……。
段々エイミーに心が引かれていくよ。
僕もエイミーみたいに見る魔法を覚えてみようかな。
「他にもあったりする?」
「あるよ!でもちょっとだけアンディのお手伝いが必要だけど……」
「僕が?全然かまわないよ」
一体何をするんだろう?
一緒にやらないといけないってことは、大掛かりなものなのかな?
「お手伝いは簡単!私がどうぞって言った後、はいって返事してね」
「? 分かった」
「あっ、目は閉じていてね」
どういう魔法なんだろう?
返事っていうことは召喚系とか?
でも目を閉じたら何も見えないじゃないか。
「私は誓います。あなたと一緒にいることを。そして――」
何かが始まった。
契約なのかは分からないけど、似たような言葉を繰り返し言っている。
似たような言葉のせいで、段々言葉が頭に入って来なくなってきた。
「――あなたは誓いますか? どうぞ」
たしかどうぞって言ったあと、はいって言えばいいんだよね。
「はい」
「……にひひ」
えっ?何で笑っているの?
僕は何が起きたか確認するために目を開けると、エイミーは堪えるように笑っていた。
ルーシュは驚いていて、氷の妖精は笑顔で喜んでいる。
それと、氷の妖精と一緒に花の頭をした妖精もいた。
一体いつの間にいたんだ……。
「な、何が起きたの?」
「見せてあげて!」
花の妖精は一枚の紙を取り出した。
自分より大きいのに持ちにくそうだね。
「えっとなになに。エイミーとアンディの婚約の成立について――ってえぇ!?」
「大・成・功!」
くっそー!騙された!
まさかこんなことを考えていたとは!
「この妖精が勝手に書いたってことは?」
「ないよ!花の妖精は正式な結婚式に呼ばれるから!」
ということはこの紙は本当の結婚式で書かれるものってこと?
何ていう妖精をこんなところに呼んだんだよ。
「でもよかったー。アンディはしっかり私のこと好きだったんだね!」
「えっ……?」
ちょっと待って、確かに好きだよ。
男の子だったら大体の人が一目惚れする可愛さなんだし。
それに、こんなにも可愛い子に言い寄られて好きじゃないほうがおかしい。
元々はまだ将来のことを決めたくはなかったんだけど、心のどこかでは結婚したいとは思っていた。
でも、それなら自分から言いたいと考えていた。
だからエイミーには悪いけど、もう少し年を取るまで言う気はなかった。
「でもなんでわかったの?」
「花の妖精は二人の心を読むことができるんです。ですので好きではないもの同士ではこうやって書いてはくれません。
それに、花の妖精の話は全員の妖精に話が行きます。ですのでもう妖精の間では、この話が飛び交っているかと」
「妖精全員ならまだ……」
「私のように召喚する人はたくさんいますよ」
「……」
ということは、僕はエイミーのことが好きですってことをばらされちゃったってこと?
しかも妖精全員に?
それって、お父さんやお母さんが妖精を呼べたとしたら速攻でばれるじゃん。
やばい、段々と恥ずかしくなってきた。
「えへへ、これからもよろしくね!」
こうして、僕とエイミーの結婚は正式に決まった。
エイミーは喜んで紙を僕のお父さんに見せたが、すぐに結婚は出来ないと言われた。
そりゃあまだ6歳なんだからね。
だけど結婚はまだしないが、許嫁は正式に決まった。
元々国王からの申請だったため、承諾の権利はこちらにあった。
この話は国王へすぐにわたり、国王は嬉しそうにオリヴィアさんと話したみたいだ。
だが、問題はここからだった。
その話がなんとダディス王国に行き渡っていたということだ。
王女の結婚話だから公に広まったらしい。
妖精の間だけではなく、人間の間でも行き渡ってしまったみたいだ。
なんで自分の結婚がこんなにもみんなに知られるのか。
正直、恥ずかしかった。
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