第5話 集中力99
お姉ちゃんのパープルシチューを食べた後、僕は一旦自分の部屋へ戻ってきた。
「はぁ、やれやれ」
「おかえりー」
「……なんでいるの?」
部屋にはエイミーがいた。
「なんでって昨日の夜ずっと待っていたのよ?ずっと来るのを待っていたのに!」
「いや、早すぎるよ……」
「早すぎる?私はまだ遊んでいたかっただけなのに!」
これは、僕が墓穴を掘ってしまったな。
そうだよね、こんな小さな子がそんなこと考えるわけないよね。
「じゃあ午後から遊ぼうか」
「午後から?朝ごはん食べ終わったらすぐ遊ぼうよ!」
「ダメだよ。勉強があるんだから」
「うぐっ!ここでもあったんだ……」
この反応、お姉ちゃんと同じで嫌いだな?
残念だがこの家に来たからには受けてもらうよ。
「それはともかく、朝ご飯食べに行こうか」
「うん!」
パープルシチューをたくさん食べたからお腹がいっぱいかと思ったけど、なぜか空腹のまま。
あのシチューってそんな効果があったのか?
どっちにしろ、食べても食べても満腹にならないならいいところがないな。
部屋にはお父さんとお母さん、お姉ちゃんがすでに座っていた。
今日の朝ごはんはパンと特性ジャム、それに採れたての野菜だ。
「「「いただきまーす!」」」
「「いただきます」」
「えいっ、えいっ!」
横でエイミーが何かしている。
何しているんだろうなあってのぞいてみると、ミニトマトを避けていた。
「エイミー、ミニトマト食べなよ」
「これ美味しくないから嫌だ!」
「好き嫌いしちゃだめだよ」
「むぅ。じゃあ食べさせて!あーん」
いや、自分で食べれるようにならないと。
なんでこんなことに……。
でもこれで食べてくれるならマシかな。
「ほら」
「んー!!やっぱりダメ!」
とかいいつつ、結局全部食べてくれた。
まさかだけど、ミニトマトが出たら毎回これをしないといけないのか?
「そうだアンディ。今日の勉強だが、これだ」
「はーい」
「エイミーちゃんにも国王様から渡されている。今日はこれだけだ。アンディと一緒でも構わない」
「うげぇ……」
うげぇ、じゃないよ!
僕の半分もないじゃないか!
「カラリアはこれだ。分からなかったらアンディに聞いてもいいぞ」
「わかった!それならやる気出てきたぞー!」
やる気出るのはいいけど、弟に聞くのはどうかな?
「じゃあしっかりやるように」
ということで今日はみんなでお勉強会。
主に僕が教える立場で。
「とりあえず僕が終わるまでは各自で頑張ってやってね」
「「えー!!」」
「えー、じゃないよ。これで僕だけが終わらなかったら僕だけが怒られるじゃん」
それに、僕は今まで一度も遅れて見せたことはない。
この記録をここで止めてたまるか!
「うーん……。0.2×0.1はー……0.2!!」
しっかりしてくれよ、お姉ちゃん。
一桁ずれているぞ。
「見てみて!ネコちゃん!」
「落書きしてないで問題を解きなよ!」
なんでエイミーは集中力が1秒も続かないの!?
って、そっちの方に引っ張られた僕も続いていないな。
何かいい魔法はないかな?
「スキルオープン」
何かいいものないかなあ。
たまにこのランダムな中で見つけるのが楽しくなる時がある。
でもそう思ったときに限ってすぐ見つかる。
これだこれ、集中力。
これを99にして。
「よし!さっさと終わらせるぞ!」
僕はそのまま勉強に集中した。
流石カンストしてあるだけあって、周りの声が全然届かない。
これならすぐに終わりそうだ!
*
「終わったー!……ん?」
二人の姿が見えない。
まさか逃げたとか?
「ん~……」
「アンディー……」
「なんだ、こんなところにいたんだ」
下を見てみると、僕の膝の上で仲良く二人とも寝ていた。
流石集中力カンスト。
こんなことが起きても全然気づかなかった。
「って、ここまで気づかなかったらダメだよなあ」
逆に集中しすぎ。
これじゃあ、いざ何かがあった時、何もできない。
使うのはこんだけにしておこう。
二人はまだぐっすりと眠っている。
進み具合ではこのまま寝かせといてあげよう。
「さて、二人の勉強はどこまで進んだかなあ」
まずはお姉ちゃんから。
ふむふむ、進んでいるには進んでいる。
けど正解率は10%に届くか届かないかだ。
次にエイミーだ。
ふむふむ、1ページも進んでいない。
落書きだらけだ。
「二人とも起きなさい」
「「いたいっ!」」
本で軽く一発。
このままでは絶対に今日中に終わらない。
二人ともまだ寝ぼけている。
「ほら早く起きて。起きないと午後から遊べないぞー」
「それはやだ!!」
よし、1人は釣れた。
もう1人はどう釣ろうか。
「お姉ちゃーん」
「はーい!!」
何もなくてもお姉ちゃんという言葉で起きた。
どんだけこの言葉好きなんだよ……。
「二人とも。しっかり勉強しないと午後の遊べる時間が無くなっちゃうよ?」
「「それはやだ!!」」
「じゃあ頑張らないといけないよね」
「アンディは終わったの?」
「終わったよ。ほら」
「「おー!!」」
僕は二人が寝ている間に終わらせたからね。
これで記録は保てられた。
「って、僕のはいいから早く終わらせるよ」
「「はーい……」」
終わったのは初めてから3時間後。
お昼になるときだった。
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