第50話

「それにしても暇だなあ」

「それならダメもとでも次の雨に狙ってみるかい?」

「いや、それは遠慮しておくよ」


 出来ないだろうと分かっていたとしてもやるべきだろうが、もう確実と言っていいほどの方法で手に入るんだ。

 それならわざわざ確率が低い方をやらなくてもいいだろう。


「じゃあ恐竜狩りでもしていようか」

「…まあ、それでいいや」


 競争率を下げておくために恐竜の数を減らす。

 今となったらただの雑魚潰しでつまんないけど、ボーっとしているよりはマシか。


「そういえばまだ引っかかっていることがあるんだよなあ」

「引っかかること?」

「ああ、なんで恐竜にあんな核があるのか気になってな」


 スロウも詳しくは知らないと言っていた。

 でもなぜか気になった。


「僕は少しでも花を食べるために復活能力を上げた、と思ったんだけどね」

「俺もそう思ったんだがな。だけど、それならなぜ砂や土を巻き込むんだ?」

「足りないから代用として……」


 そこが引っかかるんだ。

 足りないから砂で埋める、そこまでならいい。

 いや、あまりよさそうではないけど。

 だが、その砂は元の肉体のように変わっていくのだ。


「恐竜の魔法じゃないかしら?」

「…そうなのかなあ」

「なんか納得してなさそうだよー」

「仕方がないわよ。まだ知らない魔法があって納得しにくいこともあるでしょうし」


 まだ引っかかるが、いつまでもこうしてはいられないな。


「まあいっか。とりあえず時間が来るまで潰しておこう」

「そうだねー。あと何回待てばいいの?」

「予想だけど、明日には雨が降ると思うよ」

「うーん……。どうする?先に降らせちゃう?」

「1日ぐらい待とう。せっかくここまで来たんだから荒野を見て回りたい」


 せっかく知らない土地にまで来たんだし、いろいろと歩き回ろう。

 また来た時に困らないようにな。


 そして俺たちは荒野を歩き回った。

 恐竜と出会ったら倒し、また出会ったら倒しの繰り返し。

 進めど進めど、特に変わることがないただ広いだけの荒野だった。


 そんなことを繰り返し、俺たちはいつの間にか何キロか移動していた。


「…なあ」

「なにー?」

「また何か引っかかるの?」

「そのまたなんだが……」


 恐竜を倒していくうちにまた引っかかることが増えてしまった。


「なんか、さっきと比べて恐竜の回復が早くないか?」

「なぜ一発で倒さないのかと思ったけど、そんなことをしていたのね」

「それでどうだと思う?」

「よくは分からなかったわ。個体差ではないかしら?」

「いや、全部の恐竜がそうだったんだよ」


 倒しながら進んでいたため、差があまり分からなかったんだろう。

 徐々に短くなっていたから気づきにくい。


 じゃあなんで俺がそんなことを気づいたかって?

 暇だから実験がてら数えていたんだ。


 大体だが、最初に測ったときと今の差は1秒ほど。

 ほぼ誤差に等しいレベルだ。


「まさか土に回復する要素が?」


 スロウも気になったみたいで、土を手に取った。

 少し土を見ると、がっかりしたように話しだした。


「…いや、そんなことはないな。微量に魔力があることしかわからないよ」

「その濃さってわかるか?」

「分かるけど、それが原因だと?」

「恐らく関係はしていると思う」


 全く何もなく、ただの土なら俺の思い過ごしだっただろう。

 回復能力が上がるのではなく、魔力があったのなら可能性はある。

 そこから魔力を吸い取り、回復を早めたのかもしれないしな。


 もしかして、さっきファラが言っていたことは合っていたのかもしれない。

 恐竜はここから魔力を吸い取って、砂や土を肉体に変えていたのかも。


「向かっている先は花があるほうだし、花が近いほど魔力が高かったりするのかもねー」

「「「あっ!!」」」

「えっ、なになに?正解だった?」


 確かに今向かっている先は、ファラが導き出した出現するかもしれない場所だ。

 メルが何となく言ったことは正解なのかもしれない。


「まさかだが、花の近くは魔力が上がるのか……」

「これでも見つけることが出来たんだろうね」

「ああ。しっかりとヒントは他にもあったんだな。だが――」


 だが、これは探しにくくないか?

 普通地面の魔力、それも土という部分だけなんて見ないぞ。

 見てもせいぜい大地、地脈をみるような大規模なやつだけだし。


「…待って、もしかして恐竜たちは鼻がいいわけではなく」

「魔力で探していた可能性もあるわね」

「君たちが来てから謎はどんどんと消えていく気がするよ……」


 結局、なぜ恐竜に黒い核があるのかは分からなかったが、他にも花を見つける方法が一気に出てきた。

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