第51話
そう言えば忘れていたことがあった。
「明日まで待つというなら、今日はどこで寝泊まりするんだ?」
明日の雨まで待つとなると、もちろん食事や寝るところが必要となる。
だけどここはただ広い荒野で、あるとしても恐竜ぐらいだ。
しかもこの恐竜を食べようにも、部分的に剥いだら剥いだで再生するし、核を壊したら体は消えてしまう。
野宿するにも食事も睡眠も何もできないのだ。
「スロウは今までどうしていたんだ?」
「僕?僕は適当な割れ目を探してそこで寝ていたよ」
「割れ目、と言うと洞窟で寝るようなものか?」
「そういうことだね」
また洞窟かよ!
雪山でも洞窟だったのに、ここ荒野でも洞窟。
たしかに地上で寝るよりはマシだろうから、文句はこれ以上言わないでおこう。
「寝るところは割れ目だとして、食事は?」
「それに関しては荒野を抜けないとないね」
「それなら荒野の外で寝たらよかったじゃん……」
「そうもいかないんだよ。急に雨が降ってきたら距離があるからね。仕方ないことだよ」
今は見つける方法が分かったが、今まではただ歩き回って探していたみたいだからな。
それなら仕方ないだろうけど、今は荒野の真ん中付近だ。
移動距離がありすぎて面倒くさい。
「荒野に食べ物が合ったらよかったのになあ」
「あってもあの花しかないからね」
「そんなものを食べたらまた探す羽目になるぞ」
「それは嫌だわ」
「同じく」
ファラとメルも嫌がってるけど、俺も嫌だからな。
討伐系ならまだしも、採取系クエストは1、2回しかやらなかった俺たちだぞ。
もしそんなことが起きたら依頼を諦める可能性もあるほどだ。
「さっき言っていた割れ目には何かいないのか?」
「いるにはいるよ。恐竜と違って核もないから消えることが無いやつが」
「なんだ、それならそれを食えば――」
「でもそれは大きな蜘蛛だよ?僕たちならまだしも……」
「「無理!!!」」
「だろう?それに僕もあまり気が乗らない」
俺も嫌だからな?
そもそも美味しそうにも見えないし。
「そんなことをしなくてもアイテムボックスにあるでしょう!」
「そうだよ!ディラのボックスにないなら僕のところから取ってもいいから!」
「あっ、アイテムボックスの存在を忘れていた」
そう言えばあったね、アイテムボックス。
こっちに来てから全然使わないせいで存在を忘れていた。
「じゃあ割れ目に向かおうか」
「待って、寝れる場所は私が用意するわ」
「用意する必要もないだろう。すぐそこにあるんだし」
「蜘蛛が出るなら嫌だわ!」
そういうことですかい。
女の子なら仕方ないことですね、はい。
俺なんか部屋に蜘蛛が歩いていても放置するレベルで気にしないが。
「でもどうするんだ?アイテムで家をつくるのもないし、家をつくる魔法もないんだぞ」
ゲームの中で家ができるアイテムや魔法があってもいい、とは思ったことがある。
だけど、ゲームでは昼も夜も現実とは違ってそこまで長いわけではない。
必要がないため、実装することが無かったのだ。
「ちょっと実験としてやってみたいの。少し離れていて」
俺たちが少し離れたことを確認すると、ファラは魔法を唱え始めた。
「
地面から1パーツ1パーツずつ出てきて、家をつくり始めた。
時間がかかったものの、そこには固められた頑丈な家が出来たのだ。
「これでどうかしら?」
「よく考えたなぁ……」
例えば土を使うとしたら、地面から土の棒が出てきてそれが自在に伸び縮みして攻撃をする。
攻撃というほど強くはない初級魔法なんだけどね。
だけどそれすら使いこなすというのは流石ファラだな。
「出来ればなんだが、もう一個つくってくれないかな?」
「これぐらい大きかったら別に要らないんじゃないのか?」
「いや、流石に僕が一緒というのは僕のほうが耐えられないよ」
スロウの目線は俺たちの指輪にいっていた。
なるほど、察してくれているってことか。
「そういう事ならわかったわ。
再度同じように家をつくった。
今度は1人用とだけあって少し小さめの家だ。
その後、俺たちはここを拠点としてまた恐竜を倒して時間を潰した。
そして夜になった今、ごはんの時間としてはちょうどいい時間になっている。
「どんなご飯がでてくるのかな?」
スロウは楽しそうに待っている。
ならばその期待に応えてあげよう!
「今日の飯はこれ、巨大豚の極上部位だ!」
「おおぉ!!」
「これはまた……」
「随分と見栄を張ったねー」
うん、結構見栄を張ったよ。
だってこれ、ドロップ率1%ぐらいの食材だもん。
「いっただっきまーす!」
「じゃあ俺たちも食べるか」
「「いただきます」」
極上部位でも巨大豚だから大きさは十分にある。
3人で食べると少し足りないと思うが、それは味で我慢してくれ。
味に関しては絶対と言えるほど美味しいはずだからな!
「…うまい、うますぎる。今まで食べたお肉とはまた違うジャンルでつくってもいいぐらいだ」
「いや、これも肉だからな」
そこまで美味しく食べてくれたなら俺も嬉しいよ。
だけどこれはもう残りがほんの数個しかないからもう出さないと思うけど。
夕食後、スロウはもう一つの別の家へと戻っていった。
明日に備えて俺たちは早く寝た。
そして翌日、俺たちは早く寝たおかげでみんな早く起きることが出来た。
まだ雨は降っていない。
本当の勝負はこの後だ。
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