第45話

 翌朝。

 俺は早めに起きてしまった。

 なんだかんだでこっちに来てからは早寝早起きをしている。


 みんなと合流するために俺はリビングへと向かった。


「おはようございます」

「おはよう、早いな」

「執事ですので」


 と、答えながら朝ごはんの準備をするように指示をしていた。

 こんなに朝早くから仕事なんて。

 朝から仕事って大変だよな。


「おはよう」

「おっはよー!」


 ファラとメルも起きてリビングにやってきた。

 早起きしている俺もそうだけど、二人の生活習慣はしっかりしているな。


「二人ともおはよう」

「あれ?ここで食べるの?」


 実はこの家にはしっかり食堂がある。


「だって食堂遠いじゃん」

「そうだけどさぁ……」


 言いたいことは分かる。

 でも朝から移動するのは面倒くさいんだもん。


「朝だけはこっちにさせて!」

「むぅ……」

「しょうがないわね。朝だけよ」

「よし!」


 なんか我儘を言っている子供のような扱いだけど。


 朝から1階に行ったり2階に行ったり移動するのは面倒くさいからなあ。

 こうまでしてお願いするほどでもある。


「それでは今後、そうするようにメイドたちに言っておきます」

「朝だけだけど、頼むよ」

「かしこまりました」


 こうして俺たちはリビングで朝食を食べた。

 量は…絶対3人だけではない。

 てっきりダンやメイドたちの分まであるのかと思ったけど、それも違う。


 なんで俺たち3人のためにバイキングをつくっているんだよ!

 絶対余るし、金の無駄だし食材がもったいない。


 と思ったけど、余ったらお昼のメイドたちのごはんになるみたい。

 人気の食べ物はお肉。


 …朝から入らないからそんなに食べないって。

 『残して!』みたいな目で見ないでくれ!


 朝食後、身支度も済んでいるため後は移動するだけだ。


「それでどちらまで行かれるんですか?」

「あー……」


 そういえば正確な場所までは見ていなかった。

 ここから歩いて10日ぐらいしか知らない。


 もう1度、依頼書をよく読んでみよう。

 表には絵で、裏に詳細が書かれていた。


「えっと、東の荒野ロールだってさ」


 ん?俺たち花を探しに行くんだよな?

 それなのに荒野って……。

 本当にあるのか?


「その依頼は聞いたことがあります。たしかスロウ様が受けていたはずでは……」

「スロウ、ってのは有名なのか?」

「ええ、大変有名な方ですので」


 Sレベルなんだから有名なのか?

 俺たちが冒険所に行ったときもみんな知っていたようだし。

 でも受けた依頼まで知っているってやばいな。


 ダンは依頼を聞くと、何か考え始めた。


「そうですね、旅はおよそ1年ぐらいでしょうか?」

「いやいや、そんなに長く空けないから!」


 そんなに長くなると思っていたのか!?

 俺だったら嫌だよ、一つのクエストにそんなに時間を使うなんて。


「そうだな、長く見積もって1ヵ月ぐらいかな」

「そんなに早くですか……?」

「ああ、それ以上時間がかかりそうなら一旦戻ってくるよ」


 生存確認の方もあるし。

 そこまで長く滞在するつもりはない。


 その後、俺たちは出かけるために道の確認をすることにした。


「ロールに行くのでしたら飛んでいくと楽ですね」

「ダンは飛行魔法を使えるのか?」

「いえ、スロウ様が飛んで行かれたので」


 自分じゃないのかい!

 でもまあ、元々飛ぶつもりだったけど。


 道の確認も終わり、俺たちは外に出た。


「それじゃあちょっと行ってくるわ」

「いってらっしゃいませ」


 俺たちは飛行魔法を使い、東に向かい飛び始めた。


「どれぐらいで着くかなあ……」


 歩いて十日だと結構遠いよな?

 早めに着くよう、俺たちは速度を徐々に上げていった。


 風景は山、森、草原を繰り返していた。

 歩いて十日、遠いだけはある。


 ようやく茶色いものが見え始めたのは5時間も飛んだ後だった。


「ここが…ロール……?」


 荒野は果てしなく続いていた。


 こんな広いところから一つの花を探すなんて馬鹿なのか?

 雪山と言い荒野と言い、こっちの依頼は面倒くさいのばっかりだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る