第44話
「ダン、来て早々だけど話があるんだ」
「冒険、のことでしょうか?」
「知っていたのか?」
驚いたことにダンは知っていたかのように話した。
もしかして、冒険所までついて来ていたのか?
「冒険者ということは聞いております。何日も空くことがあることは承知しておりましたので」
「そうだったのか」
国王か誰かは分からないが、俺たちが冒険者なのを言ってくれていた。
手間が省かるからありがたい。
「それでだが、依頼を受けたから何日間かは分からないが行ってくる」
「かしこまりました。では私たちはこの家を守っておきます」
「…戦えるのか?」
「ええ、もちろん」
もちろん、なのか?
こっちの執事は戦えるものなのだろうか?
それはさておき、正直ダンは戦えるようには見えない。
綺麗な白髪に整ったひげ。
執事一筋にしか見えない。
「よろしければ私の実力を見ますか?」
「…そうだな、せっかくだし見せてもらおう」
俺たちは外へと出た。
場所は庭だ。
外には大きな庭があり、スペースは十分。
戦うにもちょうどいい。
「軽く組手程度にしよう」
「かしこまりました」
「じゃあどこからでもどうぞ」
俺がそう言うと、ダンはすぐに戦闘態勢に入った。
へぇ、普通の執事かと思ったけど普通に戦えそうだ。
でも形だけだとだめだがな。
そう考えた瞬間、いつの間にかダンは消えていた。
そして俺の背後へと移動していたのだ。
「すごいな……」
「止められては話にならないでしょう」
「そんなことないぞ?」
少なくとも、どこぞの冒険所でいきなり絡んできたやつよりは強い。
攻撃は守ったものの、少しでもダメージを与えるために衝撃が付いていた。
「痺れるな、これ」
「これが私の戦い方なので」
話しながらも戦いは続いた。
一発一発衝撃があるため、受けるよりはかわした方がいい。
それにしても速いな。
「冒険所に入っていたらよかったんじゃないのか?」
「入ってましたよ。ただやめましたが」
「そうだったのか、もったいない」
ここまで強いなら冒険者だったとしても驚きはしない。
その年にもなれば引退をしてもおかしくはないからな。
「よし!もういいだろう」
「よろしいのですか?」
「ああ、十分強いってことは分かったよ」
俺がそう言うと、ダンは腕を下した。
「ふぅ……。やはり年ですね、疲れました」
「今日はもうゆっくり休んでいいぞ」
「ではお言葉に甘えさせてもらいます。代わりのメイドをよこしますので――」
「大丈夫だ。みんな休んでいいぞ」
俺たちは家の中へと戻った。
ダンやメイドたちはいない。
みんな別にある建物に行ったんだろう。
「それでどうだった?」
「あら、分かってたの?」
「気づいているに決まっている」
ファラは俺たちが、ただ戦っているのを見ていたわけではなかった。
「そうね、強さは冒険者でいうAレベルで合ってると思うわ」
「ということは……」
「あれで手を抜いていたんでしょう。まあ本当に年もあるだろうけど」
ファラはダンのレベルを見ていた。
こうして見たほうが分かりやすいと思い、調べる魔法でも作ろうとしていたみたいだ。
「メルはどう思った?」
「そうだねぇ、昔戦った戦闘バカに似ているね!」
「それはもっと強かっただろ……」
メルの言っている戦闘バカは世界大会2位の人間だ。
メルが1位になったときの決勝戦の相手。
もちろんだが、速さも力もその戦闘バカのほうが高い。
バカバカ言っているだけあって俺たちは知り合いだ。
あいつ、今頃どこで何をしているのかなあ。
「これなら家を守ってもらうには十分だな」
「そうね。十分ぐらいだと思うわ」
「僕もいいと思うよ!」
2人も賛成してくれた。
それに、もしものことがあれば俺たちが飛んでくればいい話だ。
「じゃあ今日は明日に備えて早く寝るか!」
「「あっ……」」
俺は眠かったから速足で自分の部屋へと向かった。
何故か後ろでファラとメルが悲しそうにしていたけど。
何かあったのかな?
明日の移動中にでも聞いてみよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます