第46話

「まずは行方が分からないスロウっていうやつを探すか」

「わかったわ」

「りょーかい!」


 先に生存確認の方だ。

 こっちの方が大切だからな。


 と言ってもこの広い荒野を探すなんて……。

 花を探すのとさほど変わらないぞ。


「効率よく別れて探しましょう」

「そうだな」


 3人別れてスロウを探すことにした。

 俺は真っすぐ進んで捜索。

 集合場所を決め、早速飛んで探すことにした。


「にしてもなあ……。ここで探すなんて大変だぞ」


 下手したら何キロも同じような風景が続くんじゃないのか?

 考えるだけでしんどい。


 嫌なことに予想的中。

 何キロ先も荒野は続いていた。

 何キロか進んだ時だった。


「ん?何かいるな」


 遠いが、進む先に何か砂ぼこりが舞っている。

 自然現象とは思えないほど大きな砂ぼこり、竜巻が起きている。


「少し見てみるか。もしかしたらいるかもしれない」


 俺は速度を上げ、竜巻の中に入った。

 中には2匹の生き物がいた。

 それも相当デカい。


「あれは恐竜か?」


 なんと2匹の恐竜が戦っていた。


 縄張り争いとかなのか?

 大きいだけあって迫力がある。

 上から少し見ていよう。

 誰かがいたらどっちかに勝つか賭けれるのになあ。


「さて、どっちが勝つかなー」


 両方ともティラノサウルスに似ている恐竜だ。

 色や模様が違うが、同じ種類なのか?

 そうだとどっちが勝ってもおかしくはないだろう。


 俺が2匹の恐竜がたたかっているのを見ていた時だ。

 遠くから何か大きな気配がした。


 一体誰がこっちに向かっているんだ?

 この気配はファラでもメルでもない。

 初めて感じる気配だ。


「随分とピリピリとした、威圧的な奴だな」


 大体予想はつく。

 この強い感じ、恐らくスロウってやつだ。


 やがて姿が見えると、2匹の恐竜の間に突っ込んでいった。


「僕の庭で遊んでいるのは君たちかい?」

「「ガアアアッ!!」」


 恐竜は気配から分かったのか、2匹とも戦いを一旦やめてスロウを警戒し始めた。

 そして2匹は同じタイミングで動いた。


 だが2匹ともすぐに止まってしまった。


「ったく。好き勝手暴れやがって」

「すげえな……」


 一瞬で2匹の恐竜は崩れ落ちた。

 腰にあった剣はいつの間にか抜かれていた。


 いや、あれは剣ではなく刀だな。

 服も着物に似た服を着ているし。


「君は敵、なのかい?」

「いや違う。君を探し回っていたんだ、スロウ」

「僕を知っているのか。となると……冒険者なのかな?」

「正解だ」


 俺は地面に降りて冒険者カードを見せるために渡した。


「おお!やっぱり同じSレベルなのか!」

「やっぱり?」

「あはは、そんな恐ろしい気配をしていたら誰でもわかるよ。敵だったらチビっていたかも」

「そんなことないだろう……」


 いや、普通の人は気配なんてわからないだろうけどさ。

 俺も分かっていたからあまりどうこうは言えないけど。


「それでどうしたの?もしかして僕は解雇されちゃったとか?」

「違う違う、俺も一緒に依頼を受けたんだ。それと生存確認をして欲しいって言われたもんでな」

「あぁ、そういうことね。そう言えば何年も帰っていなかったなあ」


 えっ、まさか気づかなかったの?

 どれだけ大変なんだよ、この依頼は。


「協力をしてくれるんだよね?」

「ああ、構わないけどそれなら一旦集まろうか」

「? 仲間も来ているのかい?」

「来ているよ。集合場所を決めているから移動していいか?」

「分かった。いこうか」


 俺たちはファラとメルと合流した。

 まだ探し始めてすぐだったが、すぐに集合した。

 もしかして2人ともサボっていた?


「やあ、僕はスロウっていう者だよ」

「私はファラよ」

「メルだよ!よろしくねー」


 無事合流出来てよかった。

 正直1日目でここまで順調にできるとは思わなかった。


「それで依頼について聞いてもいい?」

「いいよ。まずはサンについてだけど、この荒野のどこかにある」

「「「それは知っている」」」


 それは依頼書にも書いてある。

 そんなことを聞きたいわけではない。


「冗談冗談、と言っても僕もよく知らないんだ」

「何年もいるのにか?」

「そうだよ。ただあるということだけは分かったんだ。ほれ」


 そう言うと一枚に葉っぱを渡してきた。

 大切そうに本の間に仕舞われている。


「これがその奇跡の花というやつか?」

「そうだよ。葉っぱしか手に入らなかったけど」


 それでもこうしてあるなら本当にあるんだろう。

 普通の花との違いが全然分からないけど。


「僕が着いたときには既に花の部分がなかったんだ。あと少しのところでね」

「他にも狙っているやつ、か。有名だけあって誰でも欲しがるもんだよな」

「いや、人間は取りに来ないよ」

「じゃあ一体誰が?」

「さっきの恐竜たちだよ。恐竜たちの大好物で滅多に生えない花。あっちも死に物狂いで取りに来ているんだ」


 恐竜があんな小さな花を?

 だから戦っていたのか。


「少しでも入手できる確率を上げるために、こうして恐竜を倒しているんだ」

「それ以外にやることは?」

「ひたすら探す!まあ大体無くなっているけどね」


 もしかしてこの依頼、思っていた以上に時間がかかるのでは?

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