第13話

「じゃあ頑張ってね」

「僕たちは上で見ているよー!」


 ファラとメルは上の観客席へ。

 この場には俺とマスターことサリーさんだけ。

 審判の人は危険ということで専用の席で待機。

 専用席の場所は観客席の少し下にあるでっぱりだ。


初心者歓迎ビギナーズボーナス、最初は譲るよ」

「そりゃありがとさん」


 だいぶ余裕だな。

 あの冒険所で襲ってきたランドは隙だらけではあったものの、常に警戒を劣らなかった。

 でもこの人、全然警戒をしていない。

 相当余裕みたいだな。


「じゃあ遠慮なく、麻痺の手パラライシス・ハンド!」


 戦闘不能にするのにはこれが一番だ。

 麻痺で動けなくして止めを刺す。

 ゲームだとこれをよく使っていた。

 今は止めは刺さないけど。


「よっと」

「さすがに避けるよな」


 全力は出していないが手はさほど抜いていない。

 最近戦ったギルドの面子なら確実に当たっただろう。

 そんなやつらもレベルカンストをしている。

 この人、本当に強いぞ。


「じゃあ次はこっちから行くよ!樹海構築メイキング・ツリー!!」


 ボコボコと地面が浮き出てきた。

 穴が空く瞬間、勢いよく木が伸びてきた。

 俺は後ろに引きながら避けつつも、逃げ先を予測して攻撃を仕掛けてきた。


「よく避けるね。Sレベルを受けるだけあるよ」

「そりゃあどうも!」


 生えた木を思いっきり蹴った。

 破片がサリーさん目掛けて飛んでいく。


念動力テレキネシス、残念だったわね」


 破片はサリーさんには当たらず、目の前で止まった。

 二つ魔法を見ただけだが、ある程度の強さが分かった。


「そうだな、世界ランキング10位ってところか」


 今まで戦ったやつから見るにそれぐらい。

 実際に戦ったから何となくだが分かる。


「世界ランキング?なにそれ?」

「こっちの話、まあ言い変えれば俺の敵ではないってこと」

「……言ってくれるね」


 よし、これで向こうもやる気になっただろう。

 ここからがスタートだ。


妖精の金鱗粉フェアリー・スケアルス!」

「羽を出したか。それに初めて見る魔法だ」


 妖精の羽からたくさんの金色の鱗粉が見える。

 何か痛みでもあるのかと思ったけど肌にひたひたとくっつくだけ。

 うげえ、気持ちが悪い。

 水で洗い流したいな。


妖精の傀儡人形フェアリーズ・パペット!」

「うお!?」


 体が、動かない。

 複数の魔法を使う感じなのか。

 興味本位で受けるもんじゃないな。


「はい、これで動けないでしょ?降参するならここでやめてあげるよ?」

「いや、遠慮しておくよ。完全回復パーフェクトヒール

「なっ!?」


 完全回復パーフェクトヒール、言葉通り完全に回復する魔法。

 ただ、魔法Lv.は100のカンスト魔法でクエストの時のみ使える魔法だった。

 PvPに使えない理由は少ない魔力で使える上に、15時間も試合が続いたのが原因だ。

 実際にPvPに使えた時間はおよそ30時間、実装当初は荒れていたなあ。


「そんな……その魔法を使えるなんて人間じゃないわ!神にでもなったの!?」

「えっ、まあ一応神と言われたことがあるけど」

「こんなの勝てるわけないわ!降参!降参よ!馬鹿らしくなってきたわ」


 えー!そんなので終わるの!?

 たしかにPvPに使えないほどの魔法は使ったけど。


「審判!」

「あ、はい!勝者、挑戦者のディラ!」


 あまり納得のいかない俺の勝利で終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る