第12話

 部屋に入ると書類の詰まれた机が部屋のまん中にあった。

 そこにマスターと言われている人が腰かけた。


「そっちの方に座ってくれ。少し話をしよっか」

「……はい」


 ああ、怒られる未来しか見えない。

 俺たちは悪くないんだ。

 これで冒険者になれませんとかやめてくれよ。


「私はサリー・ランダ・ウェルム、サリーでいいよ。それよりよくランドくんを倒したね」

「あ、そういうえばBレベルってなんですか?」

「あれ?まだ話されていない?」

「すみません、渡してから説明をするのですが」

「そっか!じゃあ今話すよ」


 冒険者には位があった。

 Eレベルから始まり、Aレベル。

 そしてSレベルとなる。

 位はそのまま強さがわかるようになっていた。


「君たちはEレベルから始めさせるつもりだったけど、Aレベルから始めてもいいかもね」

「そんなすぐ上がれるんですか?」

「試験に合格すればだれでも上がれるよ。なに?AじゃなくてSがいいの?」

「出来ればそうしたいです」

「あはははっ!正直だねー!!」


 ぶっちゃけ、めんどくさい。

 レベル上げも後半はけっこう辛かったからな。

 アイテムを使えば楽なんだけど、それがまた課金アイテムだったから使いたくなかった。

 だから上げれるチャンスがあるなら上げておきたい。


「Sランクに上がるためにはある者と戦わないといけないんだ」

「誰ですか?まさかさっきのランドっていう人?」

「ランドくんはBレベルだよ?全然違うよー。正解は私!冒険所のマスターの私に勝てばSランクになれるよ!」


 Bのランドという人がだめなら冒険所のマスター。

 Sレベルになるためには冒険所のマスターを倒さないといけない。

 ということはこの人Sレベルなのか!


「あれ?特Sレベルってのがあると思うんだけど」

「それは依頼の内容。Sレベルは特Sレベル、上位Sレベル、下位Sレベルと分けているんだ。特Sレベルと下位Sレベルは、EレベルとAレベルの差以上に差があるよ」


 俺たちはそんな特Sレベルの素材をたくさん持っている。

 そうなると特Sレベルは俺たちが普段やっている難易度だ。


「じゃあSレベルの試験とやらをお願いします」

「史上初だろうね、冒険者になって初日に受けるのは」

「無理なんですか?」

「大丈夫だよ!じゃあ移動しようか」


 いったん外へ。

 向かった先は冒険所近くの大きな建物。

 コロッセオのような戦うための場所だ。


「それにしても人が多いね」

「いきなりランドくんを倒して、しかもSレベルの試験を受けるからそりゃあみんな見に来るよ!」

「そんなにSレベルが珍しいの?」

「私を含めて7人。そうそう簡単になれると思わないでね!」


 たった7人!?

 少なすぎるだろ。

 ゲームでレベルカンストは全ユーザーの1%はいた。

 1億人もやっていたゲームだから100万人はいる。

 Sレベルの門狭すぎね?


「ルールを説明します。ルールは死傷なしの戦闘です。違反した場合は無条件で試験は不合格、そして冒険所から除名が下されます。勝利条件は相手を倒すか降参と言うまでです」

「簡単な模擬戦みたいなものか」

「正解!でもそっちは3人。一人一人の試験だから順番でお願いね」

「誰からにしようか……」


 もちろん俺は最初にやりたい。

 何せ強い妖精、ゲームの中だとレア中のレアだ。


「めんどくさいから私が決めるわよ。じゃあまず君から」

「俺か?」


 願ったりかなったりだ。

 さて、この人はどんなものか。

 お手並み拝見といこう。

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