第11話

「これでいいか?」


 戦いやすいようにファラとメルの前に立った。


「ふん、やっと前に出たか。男なら最初から――」

「いいからかかって来いよ」


 戦士みたいな男の額には血管が浮き上がっていた。

 要するに怒っている。


「今更後悔するなよ!うらあ!!」


 大きく勢いをつけての殴り。

 尚且つ速い、普通なら吹っ飛ぶぐらいだろう。

 ってか腰に剣があるじゃねえか。

 それを使えよ。


「ん、これでおわりか?」

「なっ!?」


 俺は片手で止めた。

 レベル差はあるものの、ステータスが違いすぎる。

 赤ちゃんのパンチを受け止めているレベルだ。


「来ないならこっちからいくぜ。おらっ!」

「ガハッ!?」


 軽くみぞおちに一発。

 男は壁まで吹っ飛んだ。

 ……全然力入れていないつもりだったんだけど。

 調整が難しいな。


「お待たせしました――って何事ですか!!」

「やべっ!」


 さすがに騒ぎすぎてしまった。

 受付の人も驚いてる。


「ランドさん!?なんでランドさんが壁に?」

「有名なの?」

「Bレベル冒険者ですよ!あなた方の先輩です!!」


 まじかよ!

 何か入学初日に先輩ぶん殴りました!みたいのことしてるじゃん!

 でもケンカを売ったのは向こうだし、俺たちは悪くない。

 きっとそうだよね!


「どうしたのかなかな?」

「マスター!ランドさんが」

「およ?ランドくんが倒れているね。誰がやったの?」

「さっきカードをつくった方々です」


 ……これはまずい雰囲気。

 いきなりマスターと言われている人に目を付けられた。

 出てきたのはさっき受付の人が入った奥の部屋。

 となると、ここで一番偉い人だと思う。


「そうだなー、とりあえず部屋に入って!」

「わ、わかりました」

「珍しいわ。あの子妖精フェアリーよ」

「ほんとう!?NPC専用種族だから羨ましいや」

「また使ったままなのか」

「ええ、もう癖だわ」


 まずは妖精フェアリーについて。

 元居たゲームの中にもいるが、プレイヤーとして操作はできない。

 もちろん、課金アイテムを用いても無理だった。

 何年かすれば来ると思っていたものの、完全に使えないと運営から告知が来たのだ。


 ちなみに容姿は子供。

 このマスターっていう人も子供の身長できれいなロングの黒髪だ。


 つぎにファラが使っている魔法。

 これは幻影耐性イリュージョン・レジスタンスという魔法だ。

 魔法Lv.50で中間点に立つと得られる魔法だ。

 簡単に使えるが、常に使っている人なんてそうそういない。

 使うとしても戦闘時のみ、常時なんて論外だ。


 なぜファラが常時使っているのかというと、味方が使って近寄ろうとしたため。

 普通は戦闘になった時に使うから油断をしていた。

 それからゲームにログイン時に自動で発動するようにしている。


「見えるってことは羽があるのか?」

「ええ。それも結構大きいわよ」

「へえ、となると結構強いな」

「羽の大きさ=妖精の強さなんだっけ?」

「そうだよ。だから一人で行動もしているんだろ」


 妖精の大半はそこまで強くはない。

 団体行動をすると強くなる。

 これがまあ、戦闘になると厄介なんだ。

 あちらこちらから沸くから終わりが見えない。


「おーい!早く来なってー!」

「今行きまーす!」

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