クラーの町
第10話
このクラーという町は小さい町だった。
町というだけあって、お店はちらほらあるがやはり小さい。
村に比べたらもちろん大きいが。
「ここじゃない?」
「たぶんそうかな」
数ある家の一軒。
普通の家に見えるが、ドアの上にギルドのマークがあった。
こっちだと冒険所のマークとして使われているんだろう。
「とりあえず入ってみましょう」
中には人がちらほら。
人間もいればエルフもいる。
種族がたくさん、というわけでもない。
そりゃあ冒険者なんだからそこまで人がいるわけないよな。
中には話し合うための机に椅子。
依頼を受けるための掲示板。
それに依頼を受理するための受付がある。
本当にゲームみたいだな。
「あの、冒険者になりたいんですが」
「わかりました。ではこちらにお名前をどうぞ」
人数分の紙を渡された。
どうしよう、こっちの文字とかあったりするのかな?
俺、日本語しか書けないぞ。
「これでいいですか?」
「はい、ではカードをつくりますのでお待ちください」
そういうと後ろの部屋へと行ってしまった。
よかった!日本語でもよかったみたい。
「おい、てめえ」
「ん?」
後ろを振り向くと俺たちを見ている男が3人座っていた。
一人はフードを被っている魔法使い。
もう一人は気軽な装備で瞬発力のある
そして真ん中にいるボスであろう屈強な戦士。
「てめえらみたいなのが冒険者だと?家で大人しく掃除でもしていろ」
いかにも「弱い奴はいらない」みたいなことを言っているな。
それにしても怖え……。
身長なんて悪魔と同じく2メートルを超えている。
ちらりと見た腕には無数のキズがある。
「おい!聞いてんのか!」
「それより横の二人を見てみろよ」
「いい女だぜ」
うわあ、横の二人ゲスい。
そんなに見ても渡さねえぞ?
というかそんな目で見るなよ。
「そこの嬢ちゃんたち、そんなもやしみたいなやつほっといて飯でも行かねえか?」
「俺たちならどんだけでも食べても飲んでも払えるぜ?それに宿泊代まで出せる」
「いい加減に――」
「るせえ!!もやしは黙ってろ!」
「「は?」」
もやしもやしって。
俺もカチーンと来たけど、声を出したのはファラとメルだった。
えっ、なんでそんなにキレているの?
「「そのもやしみたいなところがいいんだよ(わ)!!」」
「それは俺にとってうれしくないいいい!!」
フォローになっていないから!
全然うれしくないよ!
アバターをデフォルトからあまり変えなかったからこうなっただけだし!
「こほん、それは置いといて」
「いや、終わってよ」
「ディラをバカにしたのは私たちが許さないわ」
俺のために……。
うれしいよ。このパーティに入ってよかったよ!
「ほら、おいでおいで」
「このガキ、なめたことを!」
「ほっ!」
大きく腕を上げた時、メルは懐に入り蹴りを一発入れた。
「君たち程度、何も使わなくてもよさそうだね」
「そうなの?メルが接近戦を得意としているからじゃなく?」
「やってみればわかるよ」
「何をグダグダと……。死ねえぇ!!」
「本当ね。遅すぎるわ」
ファラも懐に入り、今度はグーで一発。
うん、遅すぎる。
「女相手に何をしているんだ。おい、後ろに隠れているお前」
「俺か?」
「女の背中に隠れるとはどういうこった?まさか腰が抜けて動けねえのか?」
やっすい挑発だなあ。
厄介事はめんどうだから嫌だけど、まあいい。
買ってやるか。
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