第15話ヴィランの流儀、僕の流儀とロシアンルーレット

「今、動画をオールジャスティスで

解析してもらって

配信されたパソコンの場所の

特定は出来た。だけど映像は秀逸だ

どこかわからないように

痕跡になるものは全て消去されてる。


唯一の手がかりは暗殺者クロコダイルズだ

だけど奴らはああ見えて仕事でしか

殺しをしない、依頼者がいるはずだ…

ってそれはこっちが調べることだよね…」


ダニエルは僕に説明するが

僕の中で殆ど目星はついていた。



スカーフェイス

そして謎の医者



どちらかがクロコダイルズに依頼し

クイーンバレルを誘拐して

動画で僕をおびき寄せようとしている。



動画の中身がわからなければ

動画を撮ったやつに話を聞けばいい。


どんな手を使ってでも

クイーンバレルを助け出す。



その為には足が必要だ。

「まあ君はここで待っててよ、

必ずお姉さんは僕らが助け出すから」


そう言ってダニエルは出て行く。

僕が一般人なら ここで2人の帰りを

待つべきなんだろう。


だけど僕はバッグを背負って

学校から出て行った。





アンダーシティヴィラン御用達裏カジノ

「ワンダーデストロイ」



スカーフェイスマフィアが経営する

このカジノで今日もまた1人のヴィランが

全財産を持っていかれた。


「ぁぁぁぁぁダァォァァァァァァなんれええええっ!?なんれなのお!?

たまにはヴィラン救ってくださいよ

神様あアッ!!」


ライトニングは絶叫しながら破産宣告する。



「ライトニング

スカーフェイスがお待ちだ。」


「ひいいいいいいいいい!!!

それだけは!それだけはやめてくだざいーッ!!」


ライトニングは黒服に引っ張られ

奥のエレベーターに連れていかれる。

能力を使う前に

また首輪をつけられている為

逃げれないようだ。


「あーあ、アイツ終わったわww

スカーフェイスは変態だからな」


「異能力者コレクションにされちまうぜ」


周りにいる人達はみんなヴィランなので

ライトニングが連れて行かれるのを見て

ひとしきり笑ったあと博打に戻る。


エレベーターに乗る前に

彼らの足元にナイフが落ちる。


「てめえ!なにしやがる!!」

黒服達は一斉に振り向く



「おっとまちな、そいつは俺の奴隷だ

欲しけりゃ俺に金払いな」



「その声はっ…!!」

ライトニングは顔を絶望させて

ナイフを投げられた方角に顔を向ける。



「ジャック…!!」


そうです、僕です、ジャックです!


ナイフ投げ上手くなったでしょ!?


この一カ月ダニエルと仲良くする為に

朝毎回しめられたり組手したり

裏でナイフ投げも遊び感覚で

鍛えてました!!!


僕偉いよ!?ジャックになろうと

頑張ってたんだよ!?

クイーンバレルに褒めてほしい!!



「まあ、丁度いい

俺ぁスカーフェイスに用があんだ

そこにいるライトニングと

一緒にエスコートしてくれよ♡」


久々のジャックの演技に身が入って

ハートマークもつけちゃう。


黒服は恐怖で汗だらけだ。

周りのヴィランにいたっては

一人漏らしてる。


ハートデバフおそるべし。


「いいだろう、ナイフは捨てろ」

「ああ、そうだな」

僕はポケットからナイフを落とす

一本二本三本…

大事に一本ずつ落とすのがポイントだ

まだあんの?という不安と恐怖を

味わってもらう。


ズボンや服を脱いで見せ

そこからもナイフを落とす。


「パンツも脱ごうか?」

「いい!そんなもんみたくない!」


僕は服を着て通してもらい

ほかのヴィランはナイフだらけの

床をただ見ていた。






「ぁがッ…たすげで、ごめんなざ、

げめ、、」


大きな水槽の中で一人の男が溺れている。

いや、沈められている。

その男の服にはピンマイクがつけられていた。



「もっとキャワイイ声で鳴かんか!!

抜けねーだろが!!!」


スーツを着た

グラマラスで筋肉質な女性は椅子に腰掛けて

タバコをふかしながらビデオを撮っていた

その顔には大きな傷が入っている。


「オイ」

「ハッ」


水槽の中に鮫が投入される。

「がぼッ、が、あ、っぼぼぼっ!!」


男は溺死寸前で溺れながらも

鮫に襲われる恐怖に悶え苦しむ。


「あ゛ー…クソッ」


水槽が血の海で広がる。


「私が抜けねーもんで

顧客が満足できるわけねえよなあ…」


「まあ、大丈夫ではないでしょうか

スカーフェイス」


秘書は仏頂面の筋肉質で大柄な男で彼にも顔に傷がついている。


「アンタがいうならそうかもなあ…」

「では、掃除の方を」


秘書は指示を送り

部下達は掃除を始める。


それをみていたライトニングは

漏らしていた。


今日漏らす人多いね。


「よーライトニング来たか!」

「うぇいっす……」


ライトニングはあまりの恐怖に

変なノリになっている。


「それに…ジャック…か」

スカーフェイスは嫌そうな顔で僕をみる


「お前の喘ぎ声なんて撮ったら

それだけで凶器になりそうだ

何の用だ?」


失礼だな!ん?褒め言葉?


「オイオイ、あれだけのプレゼントしてくれちゃって 何の用かはねえだろ?」


「プレゼント?…ああ、ヴィラン同盟

大規模銀行強盗大会にブッチした件か

悪いな、あの日は丁度上物が破産してな

緊急撮影会だったわけだ

私はクオリティ重視でな…

一週間かかったよ…

おかげでアレで毎日抜いてる」


「ところでライトニング」

「ピエッ!!」


過去の撮影会を思い出しスカーフェイスは

恍惚する。その度青ざめるライトニング。

一体どんなビデオを撮れば

そんなに時間がかかるんだ…


でも…本当に知らないのか?

知らないふりをしてるだけかもしれない。


「暗殺者クロコダイルズ」

その単語を出すと

スカーフェイスは


「あ?クロコダイルズう?」

と顔を歪めた。


「その名前を口にするな反吐がでる。

アイツらのバラシは汚すぎる!!

エロさの欠片もない!!侮辱!!

命への侮辱だ!!!」


地雷だったようです。


「私はなジャック!!よくグロいのすきなんですね??って言われるが違う!!!!

グロいのが好きなんじゃない!!!

その人間の生きてきた灯火が一番輝き!

そして消えるその瞬間が好きなんだ!!!!

虚しく、寂しく、愛しい、だがもう戻ってこないそれが人生、はい!!賢者タイム!!!

わかるか!?キャハハぶちぶち!ぷしゃー!グログロ好きのクロコダイルズと!!!

私を!!!一緒に!!するな!!!!」



地雷だったようです。



「自分の欲望に素直なスカーフェイス…

君は美しい…」


秘書は荒れ狂うスカーフェイスに

フッ…とまるでお花畑を走る少女を

眺めるように愛しく見つめる。



「どっちも一緒じゃねぇ…?」

「聞こえてるぞライトニング!!」

「ピエッ!!」


ライトニングは僕の後ろに隠れる。


だがあまりにも嘘をついてるとは思えない。


スカーフェイスがクロコダイルズを

雇うはずがない。



つまり、医者の言葉は嘘だったのだ。



「ジャック

お前が私をどう思ってるかは

知らないがヴィランと犯罪者は違う。


ヴィランは

ただ人殺しをする免罪符じゃない。

犯罪をする免罪符じゃない。

そもそも免罪符なんてない。


私は無関係な一般人を拉致ったりはしない

虐殺したりはしない。


狙うのは私の理想の邪魔するやつと!

美人な悪い奴と美しいヒーローを!

私のコレクションに加えたいやつだけ!

それ以外は殺さない、それを安全な場所ではなく、ヒーロー達が住むこの街でする

これが私の流儀だ」


ヴィラン スカーフェイスの言葉に

僕はしっくりくるものがあった。


あの日アパートでみた

なんの関係もない人達を無意味に殺した

クロコダイルズに対する許せない怒りは

きっと僕の流儀に反していたのだ。


だからあのカフェで

僕はジャックなのに人を殺せなかったのだ。


窃盗は楽しめても

自分へ殺意を向ける人以外への人殺しは

許せないと感じる。


窃盗だって人殺しだって充分な犯罪なのに。


これが僕の流儀なのだろうか。



ジャックにも流儀があった。

彼が犯罪をする時は必ず派手な衣装の時で

彼が犯罪者をする理由は…



なんだ?



あれだけ読んできたのにわからない。

ヒーロー視点だったからだろうか、


キャラ説明もオーガマンの宿敵ジャック

でしかない。


ただ人殺しをしたいなら

派手な衣装なんて必要ない。

ヒーローに捕まる要因にしかならないから。



じゃあジャックは何のために

ヴィランになったのだろう?







「用はそれだけかジャック?

お前の博打運はイかれてるから

出禁にしただろう?さっさと帰れ」


しっしっと手を振るスカーフェイスに

僕は素直に帰るか悩む。

12時までまだ時間はあるとはいえ

次のあてがない。


「よーし!ライトニング!お前専用に前から

考えてたんだ!聞いてくれないか?」

「俺のこと前からそんな目でみてたんです!?」

「ヒーロー含め全員分考えてるに

決まってるだろう?

まずは…」


スカーフェイスは指パッチンして

部屋が暗くなり水槽の前にモニターが現れ

パワポが現れる。


【ライトニング解体新書】


「いやあああああああああああ!!

もうタイトルからいやあああああ!」


「ライトニングは異能力者だから

最終的には異能力の臓器オークションで

高く売る事になる。

すごいぞライトニング借金返せるな?」


「あの世にお金持っていけます?」

「持っていけるわけないだろう、

あほなのか?」

「じゃあ無駄じゃん!無駄死にじゃん!?」

だんだんライトニングのツッコミが

子供っぽくなってきた。


「まずは電力を徴収する為

このプラグを全身の穴という穴に挿す」

「お尻もですか」

「そんなの当たり前だろう、尿道もだ」


ライトニングは前屈みになる。

なんだか僕もヒヤヒヤしてきた。


「そして能力を枯渇するほど吸い取れば

次はようやく解体の時間だ

ライトニングお前は声はいいが顔がうるさいからな、自己紹介だけしたら後は目隠しをする。そこからまずはシンプルに化粧を施そう」

「け、化粧っすか?」

「ああ、爪の間に針を通してつくるマニキュアとその血で口紅を…」


ライトニングは気絶した。


「おいまだ序盤だぞ」


日頃のツケが溜まったんだよ…

と思いながらも

彼の力がなければ

クイーンバレル発見は難しい。


「実に楽しそうな話なんだが…

コイツはもう俺の奴隷でね

あんたの商品じゃあ無いんだ

返してもらうぜ」


「奴隷ならこうやってちゃんと

首輪つけときな、コイツが逃げ足速いのは

知ってんだろう?」


「おーそうだな、んで、

コイツのあんたへの借金は?」

「200万ルドだ」


またそんな借りて!

前回の借金全部合わせて500万か

みんな彼をバラバラにすれば

もと取れるからって金を貸さないで!


でも僕はそこがチャンスだと思った。


「俺の身体、いくらになる?」

「あ?」

「えっ?ま、まさか、俺なんかのために

身体売るんすかジャックさん!!」


「お前のスクラップビデオなんて

私は抜けねえが…欲しがる奴は死ぬほどいるだろうな、犯罪者から一般人、ヒーローにも売れるだろう」


スカーフェイスは電卓を叩き始める


「売上経費コミコミで…色々差し引いたら

10億だな」

「じゅうおく!?!?ジャックさん!

バラバラにされちゃいましょうよ!

大丈夫!お金は俺が地獄に送るんで!!

アダッ!」


人の身体だと容赦なく売り渡す

ライトニングさんのそういうクズなところ

嫌いじゃないよ。と尻を蹴っておく。


「じゃあそれを元手に

博打打てるかい?一発逆転の大博打だとなおいい、なにぶん急いでるんでなあ」


「10億の博打なんてないが」


きた!


「金なんていらねえさ、ただ情報を提供してほしい」

「情報だと?」

「俺もクロコダイルズには因縁があってね

挨拶しておきたいんだ、それとこんな感じの医者をさがしてるんだが、この2人の情報がほしい。」


僕は特徴がなさすぎる医者を思い出しながら

ペンを走らせる。同人誌を描いていたおかげでギリギリの特徴を掴める。

同人力は全てを解決する。



「…コイツの正体はよーくわかるぜ」

「本当か?」

「ああ一回私もやられたからなぁ」

「?」

「まあ、いい…ジャック

お前ほどのヴィランなら

そこらのスロットじゃ機械がイカれちまう。」


そう言ってスカーフェイスは

リボルバー拳銃を取り出して

六発分バラバラと弾を抜く。


もしや…


「それにたかがそんな情報に

命張ってんだ、こっちもそれくらいしないと

失礼だろ?」


そして液体が入った弾を取り出して

装填し、さながらルーレットのように

シリンダーを回転させて

スカーフェイスは

自らのこめかみに向けて引き金を引く。


カチンッ


「安心しな、麻酔弾だ

すぐ殺しはしない価値が下がるからな

6回の中に1発入って

当たった方が生きたままスクラップされる

ワクワクするだろ?」


「スカーフェイス!貴女がそこまで」

「邪魔するな」

秘書は止めるが

スカーフェイスは言う事を聞かない。


「考えてみろよ、

今迄散々他人をバラバラにしてきた

私が最高の形でバラバラにされるなんてよ

濡れてくんだろが…!」


まさかの性癖でした。


スカーフェイスは僕に向けて銃を渡す。

まさかの展開だが

自然と僕は落ち着いていた。


カフェで人を無差別に殺すより

ずっといい。


ショットガンを他人に向けた時より怖くない


これが僕という

ヴィランの価値観なんだろうか?

これをまともかどうか判断してくれる人は

どこにもいない。



カチン


僕は引き金を驚くほど簡単に引いた。



「よし、次は私の…」


カチンッ


「…は?」


スカーフェイスは目を見開く、

当たり前だ

僕は2回連続引き金を引いたから。


残り3発、1発引けば

確率は2分の1神頼みだ。


理屈なんてない

ただなんとなく感じるのだ


神はヴィランを救いはしないと。


カチンッ


僕は残り2発で

スカーフェイスに銃を渡す。

スカーフェイスの手は震えていた。


歓喜のあまりに。


「イイな…お前、凄くイイ

ここで2発にするのが粋だ。

絶望だけなんてくだらない、

希望と絶望を見せるのが最高だ。」


スカーフェイスは興奮しながら

自らの口の中に銃を突っ込む。


「スカーフェイス!そこは危険です!

リタイアを!」

「黙れよ」

秘書が制止するがいう事を聞かない。


スカーフェイスは引き金を引き




バンッ!!




弾はスカーフェイスの口内ではなく

壁に向かって放たれていた。


秘書がスカーフェイスの手を無理やり

引いたのだ。

「お前…わかってんだろうなあ…?」

「スカーフェイス、今貴女に死なれると

困ります、愛の折檻なら今夜いくらでも」



変な言葉が聞こえたが

聞かなかった事にする。

世の中知らない事が良いこともあるのだ。


「くそッ萎えた…悪いなジャック

この借りはまた返すわ」

「別にお前の変態ビデオなんて見たくねえよ

それより情報よこせ」


スカーフェイスは頭をがしがしかいたあと

タバコを再度吸い始めて

話し始める。


「あの医者はクロコダイルズの変装だ

昔それと同じ見た目でやられた」



簡単に繋がった。

謎の医者とクロコダイルズは同一人物。


僕を引きずり出したのも

奴らだ。


「クロコダイルズの居場所はわかるか?」

「知らんな…だけど奴らは暗殺者だ

誰かに金で雇われてるのは間違いない」


「その雇い主はわかるか?

いっそ雇い直すことは出来るか?」


「それはわからん、奴ら仕事は汚ねえが

口だけは固いみたいでな

だけど雇い方はわかる。

奴らの師匠が認めた人間にしか

仕事をやらせないからな


ハッ!クロコダイルズの奴

自立したくせに

親離れが出来ないらしい」



「師匠?誰なんだそれは!?」


ようやく見えた解決の糸口に

僕はつい怒鳴ってしまう。



見えない誰かがいる。

そしてそいつは僕を殺すために

暗殺者を雇っている。


きっとそいつはジャックを殺した人間

なんだろう。

どうしてこんな回りくどいことをするのかは

わからない。


だけど犯人はその師匠が認めた

人間の中にいる。


スカーフェイスはその師匠の名を口にした。








「怪熊ストロングベアーだ」





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