第3話ヴィランの生活は大変だ!

僕は凄い夢を見ていた。

大好きなキャラクターに首を絞められ

大好きなキャラクターの胸に抱きつけたのだ

僕という存在はジャックとは解釈違いなので

喜んではいけないものだし

僕はあの世界のモブで

良かったはずなんだけど

やっぱり嬉しいものは嬉しい。



「…ス…」


声が聞こえる。


「ボスちゃん♡朝ですよ♡」

目がさめると視界は真っ暗だった

大きなベッドでクイーンバレルちゃんが

大きな2つの丸いもっちもちの、そりゃあすごいもっちもちが僕の顔を挟んでいたのだ

そりゃ暗い筈だ!


「現実…だったのか」

「?」

「いや…」

「お食事の準備出来てますよ」

「ああ、腹ペコだ」

「私を食べてからでもいいんですよ?」

「興味ねー」

とにかくクイーンバレルちゃんは

側にいて欲しい存在なので

今はうまくジャックを演じつつ

現実世界に帰れる方法は探しておきたい。

来て帰れたら最高だもんねー。


というかジャックじゃなきゃ

絶対いただいてたんだけど

キャラクター崩壊なんて地雷すぎるし

クイーンバレルちゃんはジャックだけを

愛して欲しい。ああ矛盾…。





「ボスちゃん あーん♡」

とクイーンバレルちゃんがスプーンで

シチューをすくって食べさせてくれる。

だがジャックは嫌々そうに口を開くため

僕も嫌々そうに口を開く。


ぱく。

「美味しい?ね、ね、この前拉致ったコックに作らせたんですよ?美味しい?」


「飯なんて腹に入れば良いんだよ

俺はもっと美味しい美味しいデザートが

食べたい…犯罪という名のな」


自分で言うとなんか恥ずかしいな…

そう思いつつクイーンバレルちゃんの

唇を撫でる。


「ボスちゃん♡」

彼女はメロメロだ。

大丈夫なのかこんな男にハマって!とツッコミを入れそうになるがそういうとこが可愛いのだ。



だけど、どうして

この世界のジャックは殺されていたのだろう

漫画では一度も死んだとこなんて見たことがないのに…。


今日こっそり

またあの場所に見に行こう

というか、バレたらまずい

この世界にジャックが二人いることになる。

オーガマンにバレるのはいいが

ヴィラン側にバレると厄介だ

色んなヴィランがいるからね…。


クイーンバレルちゃんは連れていけない。

なので僕の頭のジャックセリフ集を引き出して彼女の顎を掴んで耳元で囁く。


「お前は今から俺の犬だ、3時間

目を瞑って待ってな」


「ボスちゃっ…♡♡♡!!」


クイーンバレルちゃんの目が見開き

震えるように歓び目を閉じる。

お姉さんのような身体つきで

目を閉じるものだから

高校生には刺激がキツイ…!

よくこんなキス待ち顔を我慢出来たな

ジャック…!


服を着替え誰かわからない様に変装をして

帽子を深く被り僕は街に出た。



この街はだいたい現代のイギリスと同じなのだが、まったくもって違うところがある。

それは…



「店の金を返せ!電光石火のライトニング!」と店から出て店主が叫ぶ。


突然高速で何かが通り過ぎるような

突風が吹きあれる。帽子が飛ばないよう

しっかりと抑えながら

ライトニングという言葉に胸が高鳴る

電気を使い光速で走れたりするヴィランだ!うわ!見のがした!悔しぃ…!


でもライトニングが出たってことは…!


僕の影が大きくなり 振り向くと

沢山の石が肉体を覆う巨漢の男が現れ

店主に金を返し腕には

のびたライトニングを抱えていた


「ストーンシールドだ!!」と

つい叫んでしまい口を抑える。



この街は現実とは違う。

異能力を持ったヒーローやヴィランが

沢山いる。

この街はアンダーシティは

ヒーローとヴィランの街なのだ。



路地裏に入り小道に向かうが

この街はそこそこ治安が悪いので

1人で入るときは気をつけないといけない。

誰かに見つかるときは

殺されても文句が言えないのだ。


周りを気にしながら

小道に入る。だがそこで違和感を感じた。


血が拭き取られてる。

しかも綺麗に。


掃除の人なんてここには来ない

現に近くにはゴミが捨てられまくっている。


恐る恐るゴミ箱を開けると

違和感は的中した。






死体がない。




ゴミ箱のゴミは残っている。

だがあの死体だけが、まるで最初から無かったかのように消えている。


誰かが本物のジャックを消したのだ。

何のために?



ただ消すことが望みの可能性もある。

だとしたら僕の存在がバレれば…


カランカランと床をパイプを引きずる音が

聞こえる。

1つ、2つ、3つ、4つ、


気づけば4人の少年少女に

取り囲まれてしまった。


「路地裏は俺らの住処だから通行料渡さないといけないの知らないのぉ?」

「通行料は身ぐるみ全部でーす☆きゃはは!」


まずいまずい!

武器は小さいナイフがあるけど

4人は無理だ!というか

まず1人も刺したことなんてないし!!


でもジャックなら切り裂きジャックと

言われただけある持ち前の技術で

紙一枚で全員殺せるんだよな…

と解釈違いを起こしてしまう。


「なに黙ってんだよ、つか帽子取れよ

サングラスもマスクもよ」

「エルが怖いからビビってんのよ!きゃはは!」

と どんどんあちらさんが怒りはじめている。

早く手を打たねばならない。


「…」

考えた末結論を出す。

それは…


「ほ〜〜ッ??本当に取って良いのかい?

イキリまくってた君達は知ることになるんだぞ?相手が…」


帽子とマスクを取りウィッグも外す


「切り裂きジャックってことをなぁ…?」


考えた対抗策

それはハッタリ。


「ひ、っ…!?切り裂きジャック…!?

どうして、ここに…!?!?」


効いてる!よぉっっし!!


4人の少年少女は震えて1人は漏らしたりも

している。よほど怖いのだろう、そりゃそうだ。僕も最初にジャックを見たときは怖かった。


更に追い込むためにナイフを出す

そして太陽の光にキラキラと反射させ

見せつける。


「ひ、ヒィッ…」


少年少女が声をあげるたび楽しくなってきた。お化け屋敷の店員になったようだ。

最後の一押しとして

ナイフについたバターを舐めるような

ポーズをしながら彼らを見つめ腰を振りながら呟く


「今日は気分が良いんだよ…逃げたお前らをひとりひとり、ヤッて切り裂いた腹の中にまたひとり詰めて切り裂いて、詰めて切り裂いて詰めて切り裂いてぇ気分なんだ…3秒待ってやるから逃げなぁ…遊ぼうぜ

はい3ー」

「うぁあぁああああっ!!」

少年少女全力ダッシュ!!

すぐに視界から消えてしまった。


「よ…よかったっ…とにかく帰ろう…」

子供だから効いただろうし

正直いつか限界はくるだろうが

今はなんとか凌いだ…と

胸をなでおろしウィッグを被りなおして


家でキス顔で待機しているクイーンバレルちゃんのところに戻るのであった。




誰かが彼を見ている事に気付かずに。








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