第85話 行方不明

「──つまり、AKANEを放ったのは三鷹社長だという事なのか」

 河本が嘆いている。江口を含め、野村、木元は日本知能工業株式会社に手当たり次第に電話をかけているが繋がらない。繋がったとしても、三鷹社長の行方を知っている人間は誰一人としていなかった。

「盲点でしたね。ここにきて三鷹が反撃で出るなんて、考えもしていなかった」

 木元が言った。江口も河本も目が泳ぎパニック状態に陥っている事は容易に想像がついた。

「最も、三鷹がアンドロイド・ディベロップメント社を恨む理由はいくらでもある。最初にアンドロイドを製造したのは三鷹の会社なのに、今ではすっかりアンドロイド・ディベロップメントの独占事業だ。しかも三鷹が開発したOSが元になっているときたら、三鷹としても反撃のタイミングを狙っていたのかもしれない。我々と同じようにバグを把握していて、ここぞという時にアクセス権を乗っ取るつもりなのかもしれない」

 野村は顎に手を添えて言った。確かに、その可能性は十二分にある。このタイミングで三鷹の行方が分からなくなるのは、いくらなんでもタイミングが合い過ぎる。ただ、まだ三鷹がAKANEを操作しているという確証がない。このままでは、AKANEにMISAKOを潰される可能性が高い。

 その時だった。江口の携帯端末が鳴った。

「もしもし、江口だが」

『江口社長! やっと繋がった……。すいません、常務の森田です。回線が非常に混雑しているみたいで、ご連絡が遅くなり申し訳ございません。大変です、中央処理サーバーに大規模な攻撃が始まっておりまして、このままだとリセットJが正常に終われないどころか、管理権を奪われてしまいそうです。どうか、会社にお戻りください。コードネームAKANEという正体不明のアンドロイドが複数のアンドロイドを乗っ取り攻撃を開始しているようなのです』

「何だと! 分かった。すぐ戻る」

 江口の顔色が一気に変わった。事態の深刻さは想像以上だったのか。

「大変だ。AKANEが中央処理サーバーへの大規模攻撃を開始したようだ。既に何体かのアンドロイドが乗っ取られ始めているらしい。至急戻らねば、大惨事になるぞ」

「それはまずいな。MISAKOが来る前に本丸サーバーが陥落したら計画は全て水の泡。そして、アンドロイドの管理権を奪われが始まるぞ。旧人体機構研究所の過ちが繰り返されるのだけは避けろ!」

 野村は上着を急いで来た。それを見た他の連中も外出の準備をする。一体何が起ころうとしている。我々の未来を託したアンドロイドMISAKOよ、決して潰れるな。

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