第86話 騒然

 無人タクシーを降りてアンドロイド・ディベロップメント本社に着いた時、辺りは騒然としていた。私も野村も江口の後ろを歩いたが、一般市民が群がり怒号が飛び交っていた。

「一体どうなっているんだ! アンドロイドの稼働再開の目途は!」

「ペースメーカーの管理を司るアンドロイドが機能停止してんだぞ! 手動じゃ限界がある! 早く稼働を再開させろ!」

「業務に支障が出ている! 一体いくらの経済的損失を出させる気だ!」

 江口と私たち一行は見つからないように影を潜めながら入り口へと向かっていく。特に江口に関しては、面が割れているが故に、民衆に見つかれば足止めされてしまう。

「ですから落ち着いて下さい! 私たちも全力でメンテナンスを進めています。このメンテナンスは皆さまの安全を守るために行っているんです! どうかご理解下さい!」

 常務の森田が懸命に頭を下げていた。アンドロイド・ディベロップメント本社に群がる民衆はまだ遊園地爆破の犯人を真相を知っているようではなかった。

 知っているならば、こんな暴動は起きないはずだ。

 何とか本社内に入る事が出来た私たちはエレベータの方へと向かった。と同時に白衣を着た社員たちがこちらに走って来る。

「社長! 大変です。中央処理サーバー管理室にすぐ来てください。AKANEが社長との対話を要求しています!」

「分かった。すぐ向かう。野村、近藤、河本大臣。そして木元。一緒に来てほしい」

 江口は少し複雑な表情をした。無理もない。お互いを何十年も敵対視してきた仲が一つの敵に向かって協力しようとしている姿は滑稽だからだ。

 親の敵を討ちにきた木元、家族を失った私と野村、偽りの秩序を保とうと必死な河本、そして私利私欲に塗れた江口。本望ではないが、このメンバーが再び力を合わせる事になったのは、偶然ではないのかもしれない。

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