第43話 命令J
咲子を呼び出した俺は窓をカーテンを全て閉じ、室内に設置されているネットワーク中継器を全て遮断した。今この部屋はオフライン状態となり、咲子と俺だけが部屋の中に存在している状況になった。
「咲子、頼みがあるんだ」
「何でしょうか。江口社長」
「お前に、命令を下す」
「どのようなご命令で。私が可能な範囲内でのご命令をお願いします」
咲子は無表情に俺の顔を見た。咲子は私が昔から使っているアンドロイドだ。彼女の顔を今まで幾度となく見てきたが、今俺が言い放った言葉に反応してか人間味を失った表情をしている。
「お前に──”命令”Jを下す」
途端に咲子が俺の右肩を掴み俺の目をじっと睨むように、だがその奥の瞳は極めて冷酷な表情を見せながら、口を開いた。
「命令Jを受理するにあたって幾つか私の所有者である江口基弘に守って頂く事がございます。一つ、命令Jは”殺人”を伴います。”殺人”は法律で禁じられてる行為ですが、これを理解していますでしょうか」
「分かっている」
「分かりました。それでは命令Jを受理します。早速ですが何処へ向かえば」
「隣町の飲み屋街があるだろう。そこに違法ドラッグやら、違法営業をしている店が連なっている場所がある。そこへ行ってきてまずは手慣らしをしてくるんだ。きっとそこに西本に関連している人物が少なからずいるはずだ」
今まで積み重ねた地道なリサーチがやっとここで使える。咲子は俺にとっての都合の良いツールだ。秘匿シリアルナンバーで管理しておいて本当に良かった。警察から追跡されるリスクも低くなるからだ。
待ってろ西本。必ず黒幕を暴いてやるからな。お前たちに世界の主導権を握らせる訳にはいかないんだよ。
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