第29話 みんな輪っかになって
気がつけば、私の部屋の中には友人が所狭しと入っていた。片っ端から森部が連絡してしまったせいで、完全に部屋の静寂さは無くなってしまった。どうせ、森部の事だろうから、私に彼女が出来た事をネタにして集めたのだろう。集まった友人達の目がやけに私を気持ち悪いくらい見ているのが何よりの証拠だ。
森部はスーパーで缶のお酒を買ってきたかと思えば、さっさと友人たちに配っていき、わざとらしく咳払いをした。
「えーっとですね、今大変世の中はアンドロイドで騒がれていますが、私たちはもっと騒がないといけない事があります!」
「馬鹿、何を言ってんだ」
私の言葉に耳を傾ける気は無さそうだが、取り合えずダメもとで突っ込んだ。当然、森部はスルーした。
「ここの家の主でもある、直人に──ついに! ついに彼女が! 出来たようなのです!」
森部のどや顔を見たかと思えば、周りの友人はここぞとばかりに拍手をし始めた。どう考えても、この流れはリハーサルしただろう。
「あのな――」
「さぁ直人、乾杯の音頭をしてくれ」
「阿保!」
結局、森部にてきとうな言葉を言わせて乾杯した。お酒を一しきり飲んだ後に、予想通り美沙子さんについて質問攻めにあってしまった。
「直人、どこで知り合ったの?」
「直人、彼女の写真見せてよ」
「直人、ずるいぞ!」
「直人──」
「一斉に話すな! 答えようにも答えられないだろう」
私がどう言っても、この勢いは止まることを知らなかった。全く、こういう時に限って周りに人が集まってくる現象に名前をつけたいくらいだ。
飲み会はまだまだ続きそうだった。そうこうしている内に氷が無くなり、お酒も少なくなってきてしまった。
「よーし、じゃんけんで買い出し決めよう!」
完全にただの大学生の飲み会と化した空間の中で私たちはじゃんけんをした。負けた人二人を選出するルールだった。
「最初はグー──」
みんなで一斉にじゃんけんをしていると、何だか懐かしい気持ちにもなった。こんな大人数でじゃんけんをしたのはいつぶりだろうか。
というか、昔誰かとじゃんけんで負けて、物凄く悔しかった事あったような。──あれは、何の時だっけ。
「はい直人と
ぐるぐると考えを巡らせていたら、気が付けば勝敗がついてしまっていた。どうやら、私は負けてしまったようで、買い出しが決定した。
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