第28話 街中
森部はスナック菓子を買いたいと言い出して、私もついていくことにした。外に出ればいつもの街の喧騒があった。
車道の上には電車の吊革広告のように連続したホログラム広告がネオンの様に光っている。私が住んでいる街は、かつては田舎だったらしい。アンドロイドの会社が乱立しだしてこの辺りは一気に都市化が進んだという。
「今日はやけに物騒だな」
森部が大通りの一角を指しながら呟く。そこは、アンドロイド・ディベロップメントの本社建物の入口だった。
入口には、赤い目を光らせ警備員の姿をした大きなアンドロイドが二体立っていた。
近くのビルの入口にあった大きなデジタルサイネージでニュースが放送されていた。
『本日発表がありました、人工知能省の方針の影響により、アンドロイドの本社が集まる三苫前原市では、一時騒然となりました』
そこに映し出されたのは、アンドロイド・ディベロップメント本社前での暴動だった。
『警察の発表によりますと、今回のアンドロイドの規制緩和によって、アンドロイドの反対運動を行っていた団体が、一部暴徒化したということです。この暴動で10人が逮捕されたということです』
なるほど、それで厳重警備になっていたのか。昔から何が大きく変わる時、反対する人間は少なからずいるが、今回もそのケースなのだろう。
「あ、そうだ直人。美沙子さんの話、たっぷり後で聞くからな」
「何だ覚えてたのか」
「今日のメインはそっちだからな。この前告白して付き合ったていう話、まだ詳しく聞いてないぞ」
やはり覚えていたか。そんなに人の恋愛事情を知ってなんになると思ったが、森部はそういう人間だ。気になって仕方がないのであろう。
「どうせなら、他にも直人の家に呼んで宅飲みでもしようか」
「はぁ?」
森部という人間は、自由気まますぎる。
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