第27話 アンドロイドとは。
その日の人工知能省が緊急で発表した内容に、メディアは持ち切りになってしまった。「アンドロイドが遂にSF世界を飛び出してくる!」と題して、専門家たちが色んな持論を展開した。お祭り騒ぎに等しい状態となっていた。
ネットでは賛成派と反対派で激しい議論が交わされていた。人間の価値が下がるだとか、アンドロイドはもっと普及すべきだとか、様々だ。暇を持て余していた森部はこの話にかなり興味を持ったらしく、熱弁したいと言って何故か私の家に来た。今週の休日もどうやらゆっくり出来なさそうだ。
「全く、人工知能省も急に方針変えてくるよな」
「お前、今までアンドロイドに興味あったか?」
「無かったけど。さっきの会見見てて興味わいてきたってやつよ」
「はぁ」
「兎に角だ。この方針の変更は確実に俺たちの生活にも影響出るって事だよな?」
「そうじゃなきゃ、緊急会見なんてしないだろ」
てっきり美沙子さんの事を弄るのかと思ったが、森部はどうやらアンドロイドの事で頭が一杯のようだ。森部は一度スイッチが入ると止まらない人間だ。今回はアンドロイドでそのスイッチが入ったようだった。
「そもそも、今ってアンドロイドってどこに使われてるんだ?」
それは常識問題だろうと突っ込みたくなったが、心の中で抑えた。
「今は会社の事務作業とか、人間には難しい処理を会社でやらせてる。逆に人と会話を交わす事を主にする職業はアンドロイドは出来ないように法律が定められていた」
「なるほど。それが今回解禁されてるってことなんだな」
「そういうこと。今回法人だけ扱えていたアンドロイドが個人でも購入出来るようになったから余計に騒がれてるんだよ」
「じゃぁ俺らも買えるのか」
「まぁ買う権利は生じるってことだ。凄く高いから学生には無理だろうけど」
森部は暫く顎に手をあてて考えていた。彼なりにアンドロイドとどう向き合うかを考えているのだろう。恐らく、この現象が今日本中で起きているのではないだろうか。全く興味の無い人も、突然私たちの生活の一部になる新たなテクノロジーが入ってきて、どうしたらいいか分からない人が多い筈だ。勿論私も同じ状況である。
「なぁ直人」
「何?」
「世界ってAIがコントロールする時代になるのかもな」
「もう大分なってる気がするけどな」
このアパートだって、近くにある会社だって、居酒屋だって今は全てAIが関わっている。それで豊かになると言われているのだから自然な流れだと思っていた。だがその姿が人の形をした瞬間、社会は混乱している。
私は窓から見える巨大な高層ビル群を見た。あそこでアンドロイドは日々開発されている。まるでそのビル群がこちらに迫ってきている様な錯覚が起こった。
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