第26話 ある日の朝

 私は次の日が土曜日だからという理由で目覚ましを掛けずに寝ていた。世間一般から見れば、大学生など遊びの延長線上にある存在なのだろうが、それなりの苦労もある。

 私は美沙子さんへの告白を成功させる事が出来た。それと同時に肩の荷が降りたような感じがして、ここ数日ぼんやりと過ごしていた。

 ――今日はゆったり寝られるな。

 私は寝返りをのっそりとした。――その時だった。

 突然けたたましい携帯端末の着信音が鳴り響いた。折角の休日が台無しではないか。一体私の睡眠を邪魔したのは誰だ。

「――なんだ森部か」

 また飲みの誘いかと思ったが、まだ午前中だ。流石にないだろう。私は重たい身体を起こして電話をとった。

「折角の土日の睡眠を――」

「直人。テレビつけてみろ。何か面白いことやってんぞ」

「あぁ?」

 そんな事で電話をしてきたのか。私は不快な気持ちを抑えながら、森部から言われたテレビの番組をつけた。

『繰り返しお伝えしておりますが、人工知能省が、緊急の会見を開くと言うことで、一部番組の内容を変更してお伝えしております』

 最近異常に広告を出していた人工知能省が会見とは、何かあったのだろうか。暫く見ていると画面が代わり、人工知能省の河本大臣が出てきた。カメラのフラッシュが強く光り、画面が一瞬白飛びした。

『今回の会見にお集まり頂き、ありがとうございます。早速ですが、会見を始めさせていただきます。現在、人工知能省では共同管理も含め、200台以上のAIを管理しています。今こうしている内にもAIは莫大なデータを更新しております。現在普及しているアンドロイドもまた、そのAI群のデータを使って動いております。――現在のアンドロイドはAIの情報量に比べて稼働範囲をかなり制限されています。その領域を今回、拡張させます。国民の日常領域にアンドロイドを流通させます』

 記者たちのどよめきをマイクが拾った。私もまた、思わず声をあげた。極端な話アンドロイドがその辺りの街を歩いていたりするということだろう。中々想像しにくい所がある。

 記者から次々と質問が飛ぶ。

『具体的にはアンドロイドをどのように拡張するのですか?』

『現在制限されている、アンドロイドの接客業での使用を解禁します。これにより、店員としてアンドロイドを事が可能になります』

『法人利用以外でのアンドロイドの流通はされるのでしょうか?』

『はい。お手伝いとして、一家に一台を目指して、今回解禁致します。詳しい所につきましては、現在AI倫理会と協議中です』

 会場がさらにざわついた。人工知能を管理するトップがな事を言っているのに等しい状態だ。端末に表示していたSNSのコメントも、かなり混乱していた。

 一体これからどうなるのか。

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