4章

第25話 闇会議

 俺は緊急会議と言って上層幹部を集めた。上層幹部の強ばった顔が揃っていた。

 人工知能省からの一件以降初となる会議だ。大きく会社全体のプランを変更する事に彼らはどう反応するだろうか。

「業務を遮って申し訳ない。だが、急を要するに案件なために急遽集まってもらった」

「例の、人工知能省の件ですか?」

 西本がすかさず食らいついてきた。西本の望む通りになるのは少し悔しいが、これから話すことに西本は内心喜ぶだろう。

「そうだ。――俺は先日、人工知能省の河本大臣にお会いしてきた。勿論内容は例の政策の件でだ」

 幹部たちはますます険しい顔でこちらを見てきた。

「単刀直入に言う。──今回の政策に我が社は協力する。俺の会社以外の強豪二社も同意見だ」

 室内が一気にざわついた。西本は黙ってその場の様子を伺っていた。元原は俺の顔を見て、怒りを露わにしているように見えた。

「何故、そのような判断をされたのですか」

 元原は静かに訊いた。途端に周囲のざわつきも消え、視線は再び俺の方に向けられた。

「そうだね」

 何と話そうか。人工知能省からは、例のAIのに関しては社内に漏らさないように口止めされている。会社内外での混乱を避けるための苦渋の決断であろう。

「人工知能省としては、アンドロイドの接し方を模索している。今まで通りにアンドロイドを極端に人間の生活と区別するのは避けたいという意向が河本大臣からは伝えられた」

「それが正しいご判断だと私は思いますね」

 口を開いたのは西本だった。

「私はアンドロイドがもっと近くにいる環境の方がより生活は豊かになる。そう思いますけどね。今の時代、人間だけが人間のような生き方が出来るなんて考え方、古いと思うんですよ」

 元原は悔しそうな顔をしている。俺がこのプロジェクトを通すと言った以上、誰も反論することが出来ない。まして、人工知能省が絡んでいるとなると、ここで反対意見を述べる事など、無意味に等しい。

「明日、俺と他大手二社で緊急の記者会見を行う。それまでに人工知能省とは細かい所まで話を詰める予定だ。──忘れるな、我が社の目的はあくまで人々の生活を豊かにする事だ。本件はそれがいつもより大きな一歩だった。──それだけだ」

 これ以上話を掘り下げられてしまえば、俺も流石に誤魔化しきれなくなる。俺は早々に緊急会議を切り上げたのだった。

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